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第二話「僕の相棒が女の子になっちゃった件」③

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第二話「僕の相棒が女の子になっちゃった件」③

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 パララララッっと、9パラの連射音…ヒュンヒュンと言う擦過音が頭上を通り過ぎていった。

 顔をあげると路地の正面左の路地からダンゴが3台出てくるところだった。

 

 しまった、待ち伏せ! 会話に気を取られて警戒を怠ってた…間抜けだなぁ…。


「まだっ! 頭上げないっ! 前方ダンゴ! みっつ!」


 赤マフさんと折り重なるような体勢。

 とりあえず、片手に持ってたパイソンを持ち上げると、赤マフさんにひったくられる。


 パンパンパンと三連射っ!


 前方のダンゴが沈黙した。


「すっげー! パイソンで全弾ど真ん中ぶち抜きかよっ!」


 顔を上げて見えた光景に思わず、感嘆の声を上げる。

 ダンゴはどれも正面のカメラユニットに直撃を受けて、機能停止していた。


 ついでに、頭に当たるホニョホニョと柔らかい感触…なんだこれ?


 と考えて、そのモノの正体に心当たる…女の子アバター特有の胸部パーツ…。

 そういやこのゲームの運営って、こう言うのに無駄にこだわってるんだっけ…。


 でも、僕は悪くないぞ! 事故でしょ…こんなの。


「ふえあひゃっ!」


 赤マフさんが変な声を出して、飛び退く…今頃どういう状態だったか気づいたっぽい。


 なんか…「わたしのより立派じゃん」とかなんとか、自分のモノを触りながら、ブツクサ言ってるんだけど…一応聞かなかったし、見なかったことにしよう。

 

 と言うか…こんな調子で…なんでバレてないとか思ってるんだろ…普通に女の子だよね…この人。

 

「と、とりあえず…何やってるかは敢えて聞かないけど、無事ってことでいいかな?」


 伝之助さん…たぶん、何があったかはなんとなく筒抜けのような…。


「一応、クリア…と言うか…そっち静かだけど、割りと大変だったりする?」


「いや、ボクらはなんとなく、二人の会話ダダ漏れだったんで、どう反応しようかなぁって思ってただけで…なんていうか若いねぇ。

 あ、一応こっちはもうD3のビル入口に取り付いた! …ふたりとも早くこないと敵に囲まれるよ!

 ドロコマ相手だとやっぱり、戦力比がおかしい上に雑魚兵なんかもいるみたいだ。こじろうを出迎えにやったから、メインストリートを強行突破して一気にこっちに抜けて来て!」


 伝之助さんの返事に、またもや真っ赤になる赤マフさん。

 

 とりあえず…あまり気にしないでほしいぞっ。


 メインストリートの横断…遮蔽物は中央分離帯のガードレールの残骸とかそんな程度。

 たぶん、ここが難関…。

 

 赤マフさんに、先行っての合図を送る。

 頷いて、姿勢を低くして一気に駆け出すので、僕も追い掛ける。


 チリっとした違和感を感じて振り返ると、ダンゴが後ろの路地から出て来たところだった…振り向き様にステアーTMPで牽制射!

 赤マフさんが振り返って、立ち止まろうとしたので、構わず進めの合図。


 ここは止まらずに強行突破していただく…僕は最悪、ここで落される覚悟で殿を努める!


 見ると、そこかしこの路地から、ダンゴやら、マルコが湧いてきている…マップ上でも敵がすごい勢いで集まって来てるのが解る!


 バックステップで下がりつつ、弾倉交換しつつ弾幕を張る。

 とりあえず、行程の半分…中央分離帯まで来れた。

 

 相変わらず、ステアーの9パラは効きゃしないけど、足は止められるし、マルコなら落とせる。

 

 この手の武器は、撃破よりも足止めの為の兵器だからこれでいい。


 でもやっぱり、こりゃダメだなぁ…ベタだけどMP7やM4カービン辺りに装備変更しないと…。

 9パラ系はちょっと硬い敵には手も足も出ないな…。


 メインストリートの反対側の路地からこじろうが顔を出して、89式で援護射撃を開始!


「遅くなって、すまねぇ! 出迎えに来たぜ! 早くこっちゃ来いっ!」


 メインストリートを横断中だった赤マフさんはそれを見ると、振り返って、AK47に持ち替えて、膝射姿勢で弾幕を張る。

 

 こっち来て先にいけの合図。

 赤マフさんにも銃弾が飛んでるようだけど、小首を傾げるような動作で軽く避けてる…。

 

 赤マフさんに殿を譲って、こじろうの待つ路地へと走り込む、そして息つく間もなく、こじろうの後方を警戒する。

 

 赤マフさんの援護はこじろうに任せる。


「進路クリア! 伝之助さん、こじろうと合流。そっちはどう?」


「とりあえず、ビル入り口はまだ確保してる。 キサラギにビル内みてもらってるけど、ビル内に敵はいないみたいだ。」


「こじろうとモンドくんは先に行って! 殿は私がやるっ! ここは任せて!」


赤マフさんが路地に飛び込んで来るとこじろうも下がる。


「相変わらず、赤マフさん…勇ましいねぇ! …見た目、可愛らしいのにやってる事は男前っ!」


「うるへー! ほっときなさい!」


 言ってる矢先から、AKが弾切れ! すかさず、マルチコの掃射が来る!


「あぶなっ!」


 次の瞬間、赤マフさんは後ろに倒れ込みながら、弾丸を回避しつつ、AK47の弾倉交換! 

 そして、そのまま地面に片手をついて、逆立ちの姿勢で身体を90度捻ってフルオートで一斉掃射!!


 路地から飛び出してきたダンゴが側面に銃撃を浴び次々爆発! マルチコも撃墜!


 そのままバク転を決めると、軽くスカートを押さえながら、綺麗にシュタッと着地! 


「ちょっ! 今、俺…すんげぇの見た! 赤マフさん、今のなんすか!」


 うん、なんか…すんげぇ、器用な事やった。


「単なるバク転回避っ! そのついでに弾倉交換とバースト射撃もやっただけっ!

 いいからどんどん下がるっ! まだまだ来るよっ! こじろう、サポート! 二人で正面、弾幕張るよっ!

 言っとくけど、揃って弾切れってマヌケなのだけは勘弁っ!」

 

「あいよっ! 左舷弾幕薄いよっ! なにやってんの!」


「あははっ! そう来たかーっ!

 じゃあ、こっちは…ザクとは違うのだよ! ザクとはーっ!!」


 こじろうと赤マフさんが並んで、そんな事を言い合いながら、弾幕を張りつつ後退。


 ひとまず僕は先行…やがて、大きな高層ビルの入り口と、入り口に貼り付いて大通り側へMINIMIで弾幕を張る伝之助さんの姿が見えてくる。


「伝之助さん、大通り側は僕が引き受けるから、二人を援護っ!」


「うん、任せた! …ふたりともこれから、君らの頭越しにグレネード撃つから、その隙に一気にこっちへ!」


 伝之助さんがHK69…グレネードランチャーを二丁両手に構えるとすかさず腰だめにして二連射!

 パウパウなんて、軽い発射音がして、続いて二回爆発音。


 こちらは、大通り右手角から頭を出そうとした敵兵へステアーで牽制射。

 更に左手角からも顔を出した敵兵へ左手でパイソンを抜くと2連射! ヘッドショットが決まり、敵兵が崩れ落ちる。


 無人兵器だけじゃなく、NPCの一般兵も混ざってきたのか…こりゃ、噂通りなかなか厳しい!


『Caution! Enemy reinforcements detected. Vigilance around and get ready』


 敵の増援を示すシステムコール。

 赤文字の英文テロップが視界を流れていく。

 

 意味としては、敵の増援が来たぞー周辺の警戒を怠るなとか、そんな感じ。


「こちら、キサラギ! ビル内はオールクリア! 屋上にも敵影なし! 上がるならさっさと来てっ! こっちは今から、外壁伝いにワイヤー降下して敵陣へ潜入…向こうのドロコマを探す。」


 キサラギのブレイドブレイズ…一見、前衛職なんだけど、彼女は光学迷彩ユニットなんてオプション付けてるので、攻撃しない限りその姿を消すことが出来る。


 さらに、壁に張り付くイモリグローブとか、ワイヤーガンとか…そんな感じの装備でどっちかと言うと頑丈で身軽な偵察兵…みたいな感じ。

 

 実際、前に出ないとどうしょうもない職種なので、実はそんな運用が一般的だったりする。

 ただまぁ…プレイヤー間の評価はキワモノ職扱い…同じブレイド系でも銃撃戦も可能なガンブレイズの方が主流…ブレイズブレイドはさすがに扱いづらいってのがもっぱらの評判。

 

 キサラギはいわゆる浪漫主義者なのだ。

 

 不遇職扱いなので、落されても安かったり、型にはまると滅法強いから、それなりに見るべきところはあるんだけどね。


 こじろうと赤マフさんがノンストップでビル内へ飛び込むのを確認すると、伝之助さんが肩を叩いて、先に行けの合図。

 僕も二人を追いかける。


 殿になって、MINIMIで弾幕を張りながら、伝之助さんも非常階段の入り口に後退してくる。


「キサラギ! こっちは皆、ビル内非常階段に入った! これから、わたしは屋上に向かう! キサラギも無理だけはしないように…キサラギが落されると、敵情が解らなくなっちゃうから…一気に厳しくなる。

 こじろうと伝之助さん! 殿、頼んだ! モンドくんはわたしと一緒についてきて!」


「応っ! 伝之助さんよ…この非常階段入り口…俺達で死守って事でいいのかい?」


「そうだね…この先、守りやすそうなとこは屋上のドア周りになっちゃうから、敵を食い止めるならここだね。 そんな訳で、赤マフさん、後は頼んだよ! モンドくんは最後の守り手役、よろしく! 女の子の盾になって散るとか男前な役どころだねぇ。」


「伝之助の旦那、俺達も十分カッコいいと思いますぜ! そんな訳だから、二人共先にいけ! この場は俺らが食い止める! 靖国で会おうぜっ! グッドラック!」


 …二人共、要するにこの場で玉砕覚悟で防衛線を張るという事だった。


 まぁ、どうせ死んでも次がある…だから、こう言う捨て石戦術も常套手段。


 ちなみに、相手に与えるキルポイントは職種やプレイヤーランクによって、結構変動する。


 僕はCランクでアサルトメディックだからキルポイント半減補正が入って100P程度…まぁ、雑魚?

 伝之助さんはBランクで300P。

 こじろうは、僕と同じくCランクで補正なしで200P。

 

 キサラギの場合、ブレイズブレイドはアサルトメディック同様、不遇職補正が入ってるので、Bランクだけど150Pの価値しかない。

 このへんもキサラギ特攻死の理由のひとつ…落ちても安いんだから、ガンガン逝けって。


 赤マフさんは、Sランクで、おまけに上級兵種かつ強職のキリングスナイパーだからX1.5の補正が入り、更にエース補正で2倍のボーナスが加算されるので、一回落されると…なんと1500Pも持っていかれる。


 まぁ、これは兵種の偏りと上級プレイヤーの一人勝ちを防ぐためのシステムなんだけど、強豪プレイヤー程、優先的に狙われるという仕組みになっている。


 ただ、赤マフさんみたいなSランクの強豪プレイヤーは、どいつもこいつもぶっ飛んでるんで、さっきみたいに、撃たれてから弾を避けるとか言うようなのは、もはや当たり前。

 

 超人的な神回避スキルと鬼のような高精度射撃スキル…この二つはSランクなら、ほぼ全員が標準装備なのだから凄い。


 僕なんかが赤マフさんを仕留めようなんて考えたら、きっと10回死んでも勝てない。

 キャラのスキルレベルやランク補正なんかで、ステータス自体も相当高いみたいなんだけど、そもそも高ランクプレイヤーはそのプレイヤースキルに頼む部分が大きい。

 

 と言うか、このゲーム…ステータスが他のゲームほどモノを言わない。

 どんなに能力値が高くても、当たれば大抵死ぬ…これはSランクでも一緒。

 けど、Sランクの人は何故か弾に当たらない。

 

 何かが決定的に違う…予知能力とかそんなのを持ってるんじゃないかって思うことがある。

 だって、現代銃の弾速なんて、900m/sとかそんななんだよ?

 1秒後には1km近い距離の目標に当たる。

 それでも、まるで当たりゃしない…そのくせ、こっちは遮蔽物越しに撃ち抜かれたりする。

 

 要するに、本人達が素でスゴいのだ…リアルで戦場に向かわせても、恐らく平然と帰ってくるであろう…そんな風に言われているし、実際、赤マフさんはそんな感じになりそうだった。


 Sランク同士の激突とか、リプレイ動画の再生数があっという間に万単位行くくらいには、超絶な凌ぎ合いになるのが常…。

 

 と言うか、Sクラスって、赤マフさんもそうだけど、なんかもう別格…地形の使い方とかあらゆるものを活用して、一手一手チェスや将棋のように相手を追い込んでいって、確実に仕留めるような感じ。


 動画なんかを見ると、序盤戦の仕込みや弾の使い方が勝負を決めるとかそんな調子で、もう訳が解らない世界。


 まぁ、それはさておき…。

 

 うちの場合、赤マフさん一人と他の全員分のキルポイントがイーブンどころか、僕らが二回全滅してやっと等価なのだ。

 

 必然的に赤マフさんを主軸にして、全員討ち死にしてでも赤マフさんをアシストするってのが、基本戦術になってる。

 なにせ、僕が15回死んでも、赤マフさんを守りきればイーブンなのだ…要は命の値段が違うのだ。


…僕ら命の値段が安いやつは率先して死に華を咲かせるのがその役目、まぁ…そう言うのも慣れるとなかなか悪くない。


 ちなみに、ドロコマは単独で10人くらいに匹敵する戦力なんで、一人1000-2000P位とキルポイントの数値がおかしい。

 

 今回のイベントだと運が良ければ一人…少なくとも二人落とせれば、こっちが一回全滅しても黒字になる計算。


 だからこそ、ここは二人を捨て駒にしてでも、赤マフさんがドロコマを落とせば、勝利の可能性が見えてくる。


 エースに勝利を託す…その為なら、皆、率先して犠牲となる。


 それが僕達のやり方だった。


恋愛モノとか言っときながら、いきなりバトってます。

ガンフロントラインは、戦場バトルネトゲです。


そんな日常だからこそ、深い絆ってもんが自然に出来ます。


一応、本日中に2話終了までアップします。

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