第二話「僕の相棒が女の子になっちゃった件」②
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第二話「僕の相棒が女の子になっちゃった件」②
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戦闘開始ッ!
マップは市街戦マップ。
ビルとビルが迷路のように並んでいて、その間の細い路地は入り組んでいる上に視界も狭い。
広いメインストリートもあるけど、真正面に装甲車が陣取ってて、ジリジリ迫ってくるから、正面突撃は自殺行為。
必然的に脇道を分撃進行する。
キサラギを先頭にこじろうと伝之助さんは大通り右側の路地を進む。
僕と赤マフさんは左側から進行。
まだまだ自軍陣地エリア内…当然、敵はまだ進出してない。
200mほど進み自陣エリアを出て、しばらくすると、轟くようなエンジン音が聞こえてくる。
ストライカーのお出ましだ!
立ち止まるとどんどん、エンジン音が近くなる! そろそろ会敵! …赤マフさんと共にメインストリートへ繋がる路地へ向かう。
遮蔽物やらもそこそこある、いい感じの路地。
ここから、ストライカーが通りががって横腹をみせた所を撃つ…そう言う手はずだ。
「モンドくん、周辺警戒よろっ! これより、ストライカーにサイドアタック仕掛けるッ! 距離は直接見てないから解らないけど、エンジン音からして、あと60秒ってとこかな? キサラギ! そっちの配置は?」
「こっちは光学迷彩起動して正面向いのビルの壁に貼り付いてる…バレてない…いつでも、オーケー! そっちのいる路地もこっちからは見えてるから初撃任せたね! 会敵時間の予想はドンピシャ! 相変わらず、いい勘してるっ! 狙撃タイミング、こっちから指示だそっか?」
「ん、大丈夫…初撃でタイヤ狙うから、タイミングはこっちで取る! ありがとっ!」
赤マフさんが遮蔽物の脇に伏せ、伏射姿勢を取る。
背後には十字路があって、ビルの角があるのだけど、なんか嫌な予感…角から顔を出すと、案の定撃たれた!
通称ダンゴと呼ばれる50cmくらいの球体の左右にホイールとサブマシンガンが付いた地上型のドローンが三台。
あとは、5mくらいの高さに滞空している飛行型マルチコプタータイプが一体。
あとはその10mくらい後方にウォーカードッグと呼ばれる四つ足の2mほどの大型ドローンがいる。
こちらを発見したらしく、ぞろぞろと向かってくる!
「赤マフさん、角向こうから敵! ダンゴが三つ! マルコがひとつ! あとウォーカードッグも一匹いる!」
「了解っ! ストライカーの動きを止めるまで、足止めよろしくっ!」
僕の役目は大体決まってる…赤マフさんは狙撃の名手で火力に優れてるけど、防御が薄くてCQCもあんまり強くないらしい。
おまけに狙撃中はどうしても周辺警戒が甘くなる上に、接近されたら大体終わるので、そのあたりは仲間が補ってあげる必要があった。
所謂スポッターと言う狙撃手のサポート役が僕の役目だった。
(まぁ、今回は殆ど目の前だから、この場でやることは敵の足止めかな。)
ビルの角から顔を出して、ステアーTMPで弾幕を張る。
ダンゴにもガンガン当たってるんだけど、効いてる感じがしない…。
ステアーTMPの弾種は、9x19mmパラベラム弾…通称9パラ。
100年以上前から使われている歴史と伝統ある弾種なんだけど…。
ちょっとした装甲にあっさり止められてしまうので、正直あんまり強くない…。
慌てて顔を引っ込めると、三倍返しの弾幕で顔も出せなくなる。
角からステアーTMPの銃口だけ出して、適当に弾幕を張る。
ドバスンッ!
重厚なKSVKの発砲音。
続いて、グワッシャンと言った感じの破壊音。
「よし、車軸ブチ抜きっ! タイヤ逝った! 足は潰したよっ! 後は二、三発撃ち込んで、銃撃こっちに引きつけるから、仕上げはキサラギ任せたっ!」
言いながら、一歩すっと引いたところへストライカーの機銃掃射のお釣りが来てる!
あぶなっ! って言うか、今の…避けたのかっ!
この人レベルになると、なんか敵の弾が勝手に避けてく感じに見えるんだよな…。
けど、最小限の自然な動きでさらっと避けるからそう見えるだけで、実際はきっちり避けてるのだ…さり気なく凄い!
赤マフさんがちらりとこっちを見て、苦戦を察したようで、敵の方を向いたまま手榴弾を投げ渡される。
続いてビルの壁をコンコンと叩くと、KSVKの銃口を押し当てる…壁越しの抜き打ちショットやるのか!
ダンゴのモーター音が近い…今は邪魔させる訳にはいかない!
受け取った手榴弾のピンを抜くとそのまま角から投げ込む。
ドンッ! 角向こうで爆炎が吹き荒れる。
背後ではKSVKの射撃音。
メキャバキとか言う音がして、ストライカーからの射撃が止む。
「おおっ! すっげぇ! 銃座がガンナーの上半身ごと吹っ飛んだ! 壁抜きで当てるとか、赤マフさんやっぱ、凄ぇな!」
こじろうがなんだかエグい描写をする。
と言うか、壁抜きって事はほとんど目をつぶって、当てたようなもの…KSVKの威力もおかしい。
「こちらキサラギ! ストライカーに取り付いたよ! ガッツリC-4仕掛けたんで、こっちは離脱するっ! 援護よろっ!」
「ボクが弾幕張るから、その隙に離脱っ! 急いでっ! こじろうくんも援護射撃!」
「おうともっ!」
どうやら、向こうも上手くやったらしい。
「赤マフさん、こっちもクリア!」
角から顔を出して、ドローンが全部吹き飛んだことを確認…ウォーカードッグは頑丈なんで生き延びたみたいだけど、足が一本もげて横倒しになってジタバタしてるだけ。
…元々、弾薬運搬とか先頭きっての被害担当みたいな運用だから、無闇に頑丈なんだけど、こうなればもうほっといていい。
振り返ると、赤マフさんが顔を向けずにサムズアップ。
よくやったって感じか。
いつものアバターと違って、可愛らしい女の子アバターでやられると、そんな仕草ひとつも可愛いくて、なんか嬉しい。
続いて、ドカンと言う盛大な爆発音。
「ストライカー沈黙を確認! おっけ! 皆、第一関門クリアってとこね。」
自分で開けたビルの壁の穴越しに、ストライカーの様子を見ていた赤マフさんがクリアコール。
女の子ボイス…やっぱ違和感ないし、どうもさっきから自然に女言葉になってるように思える。
もういっそこのままで、いいんじゃないかなって思うんだけど…。
それにいつに無く活き活きとしてる感じが伝わって来る…なんか、凄く楽しそうだった。
それにしても、今の無言の連携は良かったな。
お互いやり取りしてる暇なんてなかったけど、もう以心伝心って感じで…。
結構長いこと、このチーム組んでるせいか、皆、この辺自然にできるようになったんだよなぁ。
次はD3高層ビルの攻略だ…忙しい!
なんて思ってると、またKSVKの射撃音。
ほぼ真上への銃撃をしたようだった。
「上にいたマルコ落としたよ! でも、こっちも見られたね…当然、敵がわんさか来る…モンドくん、そっちクリアなら先行って!
あとダンゴ、9パラじゃまず正面装甲抜けないから、このステージ…ステアーTMPじゃ無理じゃね? いっそパイソンで.357マグナム弾でも撃ってれば?
マグナムなら、ダンゴの装甲くらいブチ抜けるっしょ! せっかくあげたんだから使ってみて…ちなみに、わたしはパイソン結構好き! パイソンって言えばリョウ様よねっ! やっぱ、拳銃はリボルバーに限るって!」
シティーハンターだっけ? またふっるいネタ出してきたな…リョウ様ってだれよ?
「了解…試してみるよ。」
言いながら、先ほどもらったコルト・パイソンをアイテムボックスから転送する。
武器については、特に所持制限が無いのだけど、持ちすぎるとやっぱり動きが鈍る。
特に僕なんかは、弾薬バックや医療キットとか色々非戦闘用アイテムをたくさん持ってるので、武器の重量を抑えめにする必要があった。
もっとも、持ち込んだ分しか使えない…何てこともなく。
こんな風に所持アイテムをアイテムボックスから転送して、装備することも出来る…ちょっと転送の時間がかかるのが難点だけど。
こんな戦場のど真ん中で拳銃一丁構えて…なんて、いまいち頼りないのだけど、確かに.357マグナム弾を使えば、火力の数値だけはステアーTMPよりはましになった。
パイソンを両手持ちにして、ビルの谷間の通路を走る…壁際を走りながら、僅かな遮蔽物から遮蔽物へ移りながらの移動。
地雷やワイヤートラップくらいはありそうなので、慎重に駆け抜ける。
赤マフさんは、僕が走って安全を確認できた道を追ってくる。
これなら、トラップでやられるのは僕だけ。
アサルトメディックは不遇職と言われてるけど、その分、キルポイントが安いので意外と狙われないし、落されてもあまり痛くない。
そんな訳で、尖兵役や露払い役となる事も多々ある…やっぱり、不遇だって? ほっとけ。
T字路、左側の壁に張り付いて、慎重に顔を出す。
案の定、銃撃っ! まったく、我ながら勘が良くなってきたなぁ…敵が居るんじゃないかって思ったら、やっぱりだった。
今度は設置型のセントリーガンキャリア…まったく、こんなのまであるなんて、面倒くさいな。
壁に貼り付いて、反対側も警戒…向こうは問題ない。
「ライトサイドクリア、レフトにセントリー…距離10mってとこ、設置型だから避けないし、動かない。」
「おっけ、壁からの距離、あと制御ユニットの高さは?」
「壁から2m、高さは1mってとこだったかな。」
「諸元おっけ! ちょっち耳塞いで、姿勢下げて…この壁薄いみたいだから、さっきみたいに壁抜きでやる。」
そう言って、赤マフさんは壁にKSVKを向けるとファイア!
「クリア! モンドくん、お先どうぞ…相変わらず、いい目してるねぇ…諸元バッチリだったよ。
アサルトメディックなんて止めて、スカウトレンジャーにでも転向すれば? あれ隠蔽スキル付きで光学迷彩も装備できるから、アンブッシュスナイパーって感じで運用出来るから、結構強いってさ。」
「うんにゃ、僕はアサルトメディックでいい…落された時のデスペナタイムとか、キルポイントとか優遇されてるからね。 それに今んとこ、唯一の回復持ちだからね…保険程度にはなるし、僕は誰かのお手伝い役ってのが性に合ってるみたいなんだ。」
実際、僕は他のネトゲなんかでも、大抵支援職ばかりやっている…このゲームじゃ正直、不遇なんだけど…。
「そう言う考え方もありか…確かにモンドくんってば、バックアッパーとしては優秀だよね。
目も耳も良いし、思い切りも良い…相棒としては、この上なしって感じ…モンドくんみたいな人って珍しいから、色々助かってるよ! けど、考えてみれば、結構付き合い長いよねぇ…モンドくんともさ。」
「そうだね…あのレイド戦の時以来だから半年くらい? ほぼ毎日良くやるよね…赤マフさんも。」
「あはは…わたし、基本的に暇人だからね…元々ソロ専だったんだけど…たまたまあのレイド戦に巻き込まれたのが運の尽きだったねぇ。」
「何言ってんだよ…ネトゲでソロ専とかネトゲの意味ないじゃん。」
「そう言うもんだよね…皆のお陰で仲間と戦う醍醐味ってのを知ったかも。
それにモンドくんにはしょっちゅう助けられてるからね…このゲーム、高ランクプレイヤー虐待が酷すぎる…。
ちょーっと頑張りすぎちゃって、気が付いたらSランクとか行っちゃってさ…ソロだとホント、辛くなっててね…引退も考えてたんだけど…。モンドくん達に拾ってもらって感謝してるよ。」
「いやいや、こちらこそお世話になりっぱなし…皆、うちに来てくれて感謝してるよ…皆だってそうだろ?」
「うぁ、いきなりこっち振る? せっかく、赤マフたんの萌ボイスを堪能してたのに…。」
こら…キサラギ…お前ってやつは…。
「あ、赤マフたん? 萌ボイスって…あ、そっか…女の子アバターだと声もそうなるのか…。」
ウソだろ! 今まで…気付いてなかったのか!
「うひひひ、超かわいい声っすよ…赤マフたん、あとでゆっくり聞かせてねぇ…。」
「マジすか! わたし、いつも通り普通に喋ってるつもりだったんだけど…。そいや、ボイスデフォ設定のまんまだっけ…これって、変えらんないのかな?」
全然いつも通りじゃないと思うんですけど…。
リアルでいつも通りって事なのかな…良く解かんないけど。
「戦闘中は無理だっての…あきらめれ…それに、そのカッコでいつものおっさんボイスはさすがにちょっとね。」
言いながら振り返ろうとすると、赤マフさんが手を伸ばして体全体でぶつかってきて、そのまま押し倒された。
とりあえず、本日はここまで!
どれくらいの反響あるでしょうかねぇ…。
文章レイアウトとか、「くろがね~」よりも改善してるつもりです。
あっちも第一部完まで行ったら、改善しようかな。
改めて見るとひどいねありゃ。
続きは10/15 07:00 にタイマーセットしときました。