第一話「まずは、チュートリアルってみよう!」③
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第一話「まずは、チュートリアルってみよう!」③
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モンド「あ、噂をすればなんとやら…赤マフさん、やっと来たっぽいね。」
フレンドリストの赤マフさんの表示がログインに変わったのを見やりつつ、皆にそう告げる。
赤マフ「ごめん! 皆、待たせたかな…やっと来れたよっ! すっかり遅れちゃったぜい!」
短髪顎髭サングラスに赤いアフガンマフラー、迷彩カーゴパンツ、タンクトップに防弾ベストのみと言う潔いスタイルに、ロシア製の対物狙撃銃KSVK片手に装備した大男のキャラがロビーに表示される。
相変わらず…むせる感じの濃いキャラだった。
ちなみに、この人の兵種はキリングスナイパーと言うスカウト系の最上級職。
1000m超えのショットを平気で決めるような技量の持ち主で、その実力はダントツチームトップ。
…それどころか、サーバートップクラスのキルスコアを誇るエース中のエーススナイパーだったりする。
ただ、ネカマならぬネナベ…要はリアル女性疑惑のある人だったりもする。
なんか、暑苦しい見た目のアバターを使ってるんだけど、VRモードでのその仕草や口調がなんと言うか…どうも野郎っぽくない。
正直、僕らチームメイトの間ではリアル女性確定って感じの認識。
ただ本人は隠してるつもりなので、空気を読んで合わせてるんだけど…たまにいじりたくなる。
キサラギ「赤マフ先生、おそーいっ! 置いてくとこだったぞ! あとちゃんとトイレ済ませた? 赤マフ、トイレ落ち長いんだもん。」
赤マフ「キサラギ嬢ちゃん、待たせたちまったようだね! まぁ、その辺はばっちり、それと見てみ、このKSVK! 今回のイベント用にガチャ回しまくってやっと手にはいったんだぜwww あ、モンドくんには日頃の感謝って事でプレゼントをあげるよ。」
なんか、コルト・パイソンなんかが、トレード申請で送られてきた…こんなもんどうしろと?
じゃあ、こっちはお返しに…これでも送ろう。
モンド「あちゃー。赤マフ先生やっちまいましたなぁ…。と言うかコルト・パイソンなんて、微妙なもんを寄越して…僕はゴミ箱じゃないよ?」
赤マフ「うん、ダブリなんだそれ…君、火力しょぼいから、ちょっとシティーハンターでも気取ってみるとかどうよ? ちょっ! なにこれ、「メイドスナイパー鈴アバター」って…え? こんなん押し付けて、どないせいと?」
モンド「いやぁ…僕もガチャ回してたら、それ当たっちゃってさ…スナイパー系専用アバターなんだってさ。」
ちなみに、元ネタは「メイドスナイパー鈴」とか言うメイドさんのかっこしたスナイパーが悪人退治するとか言うアニメの主人公らしい。
毎週水曜深夜27時から30分間、絶賛放映中!
…この時点で色々お察しください。
モンド「うちスナイパーって赤マフさんだけだし、どうしても一度でいいから、VRで動いてるとこ見たくてさ! それあげますから、お願いしますっ! 一発ネタだと思ってさ! 多数決取りますっ! 噂のメイドスナ! 見たい人は挙手!」
こじろう「ノ それ万単位突っ込んでも出ねぇって、ガンフロのスレで話題になってた。」
キサラギ「ノ 物凄く見たい! 私、自分で着るより、側でじっくり見たい派っ!」
伝之助「ノノノノ ボクも…興味あるかな…えへへ。お、おじさんだからって、別に可愛い女の子キャラに興味ないとかそんな事ないんだからねっ!
ゴメン、元ネタの「メイスナ」毎週しっかり録画して見てるんだっ! なので、ボクからも是非、お願いします!」
伝之助さん、食いつきすぎ…と言うか、チェックしてたのね…メイドスナイパー鈴。
「メイスナ」って略称なんだ。
伝之助さんはわりと年季の入ったアニオタおじさんでもあるので、年が離れてるにも関わらず結構話があったりする…まぁ、皆似たようなもんなんだけど。
遡るといわゆるヤマト世代の方なので、たまに古のアニメのネタの解説とかしてくれる。
初代ガンダムとか僕はまともに見てないのだけど、ネタだけは知ってたりするので、そう言う昔の話を聞いたりするのは結構面白い。
かと言って、最近のアニメや漫画もちゃんとチェックしてるのでしっかり話はあう。
こんな40代の人と僕ら10代の若造とで、普通にアニメやゲームの話題で一緒に盛り上がれるって、面白い話だよね…ジェネレーションギャップって言葉は少なくとも僕らの間では存在しない感じ。
…よし、とにかく、これで全員一致だ。
モンド「という訳で、満場一致って事で…ここはひとつ赤マフさん…遅刻の埋め合わせだと思って!」
赤マフ「それ言われると言い返せないし…うん、気分転換…そうだねっ! 一発ネタって事で! 解った…じゃあ…アバ変してくるから、ちょっと待ってて…言っとくけど、笑ったりすんなよッ!」
赤マフさんがログアウト。
皆で、wktkしつつ待つ事しばし、赤マフさんが戻ってくる。
赤マフ「もどりーっ! どうだぁっ! なっかなか可愛いっしょ? ブイっ!」
…いつもの暑苦しい野郎アバターと全然違って、可愛らしい女の子アバターが表示される。
赤と黒を基調としたメイド服、黒髪ロングでいつものアフガンマフラーを首元に巻いているのだけど、妙に似合っている。
おまけに、彼女のアバター…目の横でブイサインをキメるキラッなポーズまでしっかり取ってる。
モンド「なんだかんだで…赤マフさん、ノリノリじゃあないですかっ!」
赤マフ「ええっ! だって、この娘、可愛くね? コス変とかって、やった事なかったんだけど…これはこれでちょっと楽しい…かも?」
なにやら、調子に乗ったらしく…キャラがくるくると回ったり、ぴょんぴょん飛び跳ねるもんだから、なんかチラチラ見えるんですけどっ!
キサラギ「ちょっwww 赤マフ先生、可愛い白のおパンツが見えまくりなんだけどさ! 自重っ! 自重っ!」
こじろう「本当にっ! ありがとうございましたっ!」
伝之助「うん、これはけしからん、誠にけしからんね!
けど、これはある意味、原作を忠実に再現してるんだね…けしからんね。」
…伝之助さん、自重しましょう。
と言うか、どんなアニメなんだか…興味出てきた。
モンド「あ…その、なんだ…気をつけましょうね。」
赤マフさんのキャラがピタッと止まると、座り込んで…正座。
赤マフ「…うぁ、なんか超恥ずいんですけど…。」
このナチュラルな女の子っぽい反応は…やっぱ、そういう事なんだろうね…。
赤メイド服ももっと嫌がるかと思ったのに、むしろ、喜々としてって感じだったし…。
キサラギとかも、たまにネタアバターにしてきて、サービスしまくり状態だったりするけど、指摘しても草生やすだけで終わる。
実際、僕もネタで女の子アバター使った事あったけど、見せまくり状態でもあまり気にしなかった。
まぁ…このゲームの女の子アバターのスカートってなんか、パンチラさせるように出来てるとしか思えない仕様なんだけどね。
…要するに、やたらめくれる。
実際、妹と別VRMMOやった時に聞いたら、普通の女子はそう言うのやっぱ気にするらしく、ネカマ見分けの基準の一つだなんて言われた。
赤マフさんの場合、確かに普段はむせる感じの男キャラなんだけど。
それで別に誰かに迷惑かけてるわけでもないし、きっとネットナンパで嫌な思いしたとか、その辺が理由なんじゃないかって気がする。
それにサーバートップクラスにもなるとそれなりに有名人だから、その上高レアリティなリアル女子だなんてバレたら、絶対面倒くさい事になる…粘着ネットストーカーとかに狙われたら可哀想だっての。
実際、VR系MMOって、その手の話良く聞くんだよなぁ…変にリアルだから、ちょっと仲良くなるとリアル直結って勘違いしちゃう奴が多いんだそうな。
僕なんか男なのに、リアルでストーカー被害あったからその辺の怖さは良く解る。
あれはホント、怖い…と言うかヤンデレとか言ってる場合じゃないよ…あれって。
とにかく、チームメイトにも、その辺はよく言い聞かせてあるし、僕以外の3人は皆社会人だから、その辺は理解があって話は早かった。
たまに掲示板とかで、疑惑追求のスレとか立ったりすると、せっせと火消しに回ったりする…。
はっきり言って面倒くさいのだけど、戦友を守るのが僕の仕事だ。
それに僕はこの「ウォーキーガンナーズ」の名目上のリーダーでもあるからね…それくらいやって然るべきだろう。
赤マフ「謀ったね…皆。」
相変わらず、スカートを押さえてチョコンと座り込んだ可愛らしいカッコのままで、赤マフさんが、ネタっぽいセリフを吐く。
全員「「「「坊やだからさっ!」」」」
ほぼ同じタイミングで、一斉にネタ返し!
赤マフさんも含めて、画面に草が生えまくる。
ちなみに草ってのは…。
「wwwwww」←これのこと。
ネタの解るチームメイト…実にいい仲間達だった。
そして、そのままの勢いでイベント戦へ出撃っ!
赤マフさんには、ネタなんだし、イベント戦で他のプレイヤーもいないから、ここはひとつ、はっちゃけようぜって事で、もう赤メイドのままで強制参戦という事になった。
ヒロイン登場!
ただし、この後、容姿も名前も変わっちゃいます。
名前が適当な感じなのも、ちゃんと理由あります。
こう言うのってネトゲならではですよね。
むせる感じのおっさんタンク、中の人女の子…。
私、リアルにネトゲでこのパターンに遭遇した事ありまして、その話が元ネタになってます。
次回はこの後すぐ…本日1:00 二話同時アップの予定です。
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