第十一話「Boot Camp」②
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第十一話「Boot Camp」②
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「お兄っ! 荷物持ちありがとっ! お疲れ様!」
「お兄さん、私の買い物まで持ってもらっちゃってすみませんでした!」
買い物から帰るなり、玄関先で二人に抱きつかれる。
美奈ちゃんとか、解ってやってるのか、単に気付いてないのか…。
その小学生らしからぬ巨乳を押し付けてきたりするので、なんとも複雑。
そして…いよいよ二人のガンフロデビュー。
クライアント端末は二人共自分用のタブレットPCを持参済み。
僕はいつも通り、自分用のPCを使う。
キャラメイクは自分のリアルの姿を元にしたアバターをカスタマイズしてある程度、容姿を変えてみたり、服装とか初期設定するだけ。
兵種なんかは、Eランク昇格後に決めるから、最初はあまり考えなくても良い。
装備類は人によって、適性なんかがあるから、色々試して決めればいい。
雛乃も美奈ちゃんもそれぞれ、アバター設定が終わったらしい。
準備できたっぽいので、二人共ベッドに横になってもらいVRヘッドセットを着けてもらう。
二人共VRゲームは初めてでもないので、手慣れた様子だった。
最初の行き先はタウンマップを指定。
ログインロビーから、仲間内へタウンマップに二人を連れて行く旨伝える。
柿崎くんにも声かけとこう。
加奈子さんとミウラさんが射爆場の一角を占拠して、色々準備しながら待ってくれてるらしい。
今日は急な仕事とかでキサラギはお休み…。
二人はなんだか、リアル女子の会でも結成したらしく、なんかすっかり仲良し。
雛乃達はもう、向こうに行ったらしく。
お昼寝でもしてるような感じになってる。
VRダイブ中は、全感覚が向こう側に行っているので、揺すられても解らないような状態になるのだけど。
ホームセキュリティが異変を感知したり、緊急地震速報など、非常時には強制ログアウトがかかるようになっている。
それに、外部からの緊急ログアウトも可能で、VRヘッドセット側で体調モニターもしているので、体調の急変などの際には119番へ自動通報してくれたりする。
これら以外にも幾重もの安全措置が取られており、VR技術の安全性は極めて高いとの評判だった。
米国などでは、このVR技術の完成度はまだまだ低く事故なども起こっているらしいし、日本製ほどリアルじゃないので、軍事用途ではもっぱら日本製が使われているらしい。
さて、それはさておき…続いて僕もVRダイブイン!
一瞬の浮遊感のあと、タウンマップに到着。
泉の広場を見渡すと、二人をあっさり発見。
雛乃はタイガーストライプのモノトーンの上下。
オリジナルのは、ベトナム戦争時代に誰ともなく使い始めたと言う出自の良く解らない柄。
けど、その洒落た模様は迷彩効果も高く、結構人気ある。
雛乃って派手好きのように見えて、意外とモノトーンとかもよく着てる。
なるほど、それに目をつけるとはお目が高い。
髪型もリアルと一緒のショートツインテールなんだけど、髪の色が薄桃色…何と言うか違和感すごい。
美奈ちゃんは…スウェーデン国防軍type M-90の上下なんて変わったのを選んでた。
割と鮮やかなんだけど、北欧特有の濃い緑の植生にはよく溶け込むらしい。
こっちの髪の色は、深緑色。
どっちも女の子仕様のミニスカバージョンで兵隊さんというよりもコスプレっぽい感じ。
ゲーム開始して、最初に来ることになるのが大抵ここなので、他にも似たような感じの初心者風のがボケっと突っ立ってたりする。
初回のVRダイブって、結構リアルとVR体の感覚の違いに戸惑うんだよね。
とりあえず、手を上げながら近寄ると二人が駆け寄ってくる。
この二人は他のVRゲームもやってたから、VR体の感覚には慣れてるようで初心者にありがちな動きのぎこちなさは全然ない。
キャラ名は、雛乃が「ひな」で美奈ちゃんが「ミーナ」となってる。
まぁ、安直だけど可愛い名前だよね。
「やっぱ、お兄だった! 顔で解っちゃった!」
「ですよね! お兄さん! こっちじゃメガネ掛けてないんですね! 絶対そっちの方がいいですっ!」
あれ? 雛乃はともかく、美奈ちゃん…なんか雰囲気違わない?
メガネもないし、背も高いし…3サイズもボリュームアップしてない?
「えっと、美奈ちゃん…なんか、いつもより大人っぽくなってない? 背も僕と一緒くらいじゃない?」
「あ、なんか年齢設定って項目あったんで、16歳って設定にしました!
どうです? これなら、お兄さんと釣り合い取れますよね!
それと、ミーナって呼び捨てでいいですよ! わたしもモンドさんって呼びますから!」
そう言って、腕を組んでくる美奈ちゃん。
ボリュームアップされた胸の感触がポヨヨンと生々しい…。
な、何してんの? この娘…。
「あ、ずっるーい! ヒナもやるっ!」
そう言って纏わり付いて来る雛乃。
なんか周りの視線がすごく痛い…ものすごーくざわざわしてる。
やれ「リ、リアルロリっ子連れ?」とか「リ、リア充爆発しろ…。」とかなんとか。
逃げるように二人を連れて、射爆場にダッシュ。
射爆場に着くと、加奈子さんとキサラギともう一人…。
リアルツリー迷彩と言う木の幹のような模様の迷彩服に身を包んだ、ウェーブの掛かったプラチナブロンドの長身の女性がいる。
「三人共いらっしゃいー! って、モンドくん…どうしたの? なんか驚いてるけど。
そう言えば、アルデバランコス無しで、顔合わせるのって始めてだったっけ?
そっちの二人が例の妹ちゃん? 私、ミウラって言うのよろしくねー!」
いささか長身で眼がややつり目とか違いはあるんだけど…。
メガネとか髪型とか、雰囲気が物凄ーく学校でおなじみの三浦先生なんだけど…。
名前といいアルデバランファン…リアル先生。
なんかもう、共通点が多すぎるんだけど…。
「あ、あの…ミウラ先生…ちょっといいですか?」
そう言って、少し離れたところへミウラ先生を連れて行って、スチャッと眼鏡をかける。
リアルじゃド近眼な僕でもガンフロでは眼鏡なんて要らないんだけど…たまに気分でかける事もあるので、アクセサリーとして持ち歩いてる。
さすがに、気付いたらしくミウラ先生が血相を変える。
「うぇっ! 君、中室君…だよねっ?! なんでここにっ!
えーっ? モンドくんって…そう言うことだったの! うそー! 全然気づかなかった!
確かになんか似てるなーって思ったし、モンドくんにお説教した翌日に中室君が来るとか、タイミング良すぎとか思ってたけど!」
確かにあのアルデバランスタイルじゃ、こっちは気付きようもなかったけど…。
今の姿だとちゃんと三浦先生の面影があった。
「あの…そう言う先生は…三浦先生…ですよね?」
「ですよーっ! ええっ! ガンフロで教え子とばったりとか! どんな偶然?
ううっ…リアル教え子にデザートイーグルで.50AEブチ込むとか、どんな先生って話よ…。
ざ、罪悪感が半端じゃないわ…ほんっとうにゴメンねぇ…。」
そう言いながら、リアル同様必殺おっぱいハグを敢行する三浦先生。
ああ、そういやそんな事あったね。
まさか、あのボスキャラが三浦先生だったなんて…。
「いやいや…あれは気にしてませんから。
と、とりあえず…リアルともどもよろしくって事で…。
それと学校はもう極力サボりませんからっ!」
「そ、そんなの当たり前です! あとリアルな私の事をベラベラ喋らない事!
じゃ、じゃあ、気を取り直して…ブートキャンプ! 始めましょっか!」
三浦先生が引きつったような笑顔で取り直す。
まぁ…確かにリアルでの知り合いと偶然出会うとか物凄い確率だよね…。
けど…友達の子守の手伝いね…あながち間違っちゃいなかった。
この話の主人公はモンドくんなんですからねっ!
…カーヤ様達が濃すぎるのが悪い。
小学生ズのガンフロデビュー&ミウラ先生身バレ。
まさか、ブレブレ一号がこうも化けるとは…。




