外伝②「篠崎さんと杜若さんの休日」②
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外伝②「篠崎さんと杜若さんの休日」②
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ここに至るまでの経緯について…語る必要があるだろう。
杜若葵は、唐突にガンフロデビューする事になった。
元々は、彼女の後輩の篠崎伽倻ちゃんと京八の高山ラーメンでお昼一緒に食べて、特大パフェを二人で食べようって話だったのだけど。
せっかくの日曜日…女二人で食べるもの食べて、解散ってのもなんだからって話になって…お互い洋服をプレゼントし合って、可愛いだの素敵だのと褒め合って、腕組んで歩いたりと…。
まるで、バカップルの休日デートみたいな様子になってしまった。
なんで、こんなに仲良しになってしまったのか、正直言って二人共良く解ってない。
元々伽倻ちゃんぼっち属性ってのは、葵も薄々解っていたのだけど、実はやっぱりその通りで…。
数々の荒ぶり伝説で、クラスメイトもドン引き状態…真面目な優等生ではあるのだけど、進んで関わろうと思うような物好きはあんまりおらず、腫れ物扱い…まさにそんな感じだったのだ。
だから、女の子の友達とこんな風に街を歩いて一緒に遊ぶとか、伽耶ちゃん的にはもの凄ーく斬新な体験だった。
おかげで葵は…伽耶ちゃんに、すっかり懐かれてしまったという…。
葵の方は…どちらかと言うと男勝りな中性系美少女と言った感じで、むしろ女の子連中からはモテモテだったりするので、こう言うのもあんまり抵抗無かった。
おまけに、ぶっちゃけてしまうと…葵は女の子も男の子もどっちも好きな両刀使いとかバイ・セクシャルとか言われる人種だった…本人は全く自覚はないのだけど。
男の子については、もう10年以上前から空也一筋で報われない日々を過ごして来たのだけど…女の子と一緒にいるのだって、全然オッケーで背景に百合の花が咲いちゃうくらいの仲良し娘は二桁位いるという…。
…葵的には、空也君に絶対内緒なんだけど…彼女のファーストキスの相手は女の子だったりする。
それに…伽耶ちゃんの猛アタックで空也が登校拒否気味になってたのも葵は知っていた。
これまでは、お互い暗黙の了解の上で、近づきたいなら拳で決着とかやってたのだけど。
このところ、引き分け続きな上に、どちらもお互いとの戦いが毎日の楽しみとなっていたような有様で…。
実はこの二人、ある意味お互いを知り尽くした「強敵」と書いて「とも」と読む的な関係になりつつあったのだった。
その上、葵も伽耶ちゃんと仲良くなって、彼女の興味が自分に向かえば、誰にとっても丸く収まるのでは…何てことも考えてたりしたので、これはこれでいいのかなーと思ったりもする。
と言うか…葵的にも…伽耶ちゃんは見た目も可愛いし、普通にしてると性格も悪くない…なんか妙にボディタッチとかスキンシップ的なのが大好きみたいなんだけど…むしろ、葵さんの女子ストライクゾーンにバッチリ…だったりする。
ちなみに、葵のコーディネートは伽倻ちゃんセレクト。
レザーブーツにフェイクレザーのタイトスカート。
フリフリのピンクのフリルネックのブラウスにレザージャケットと言う、女子大生とか二十代位のお姉様スタイル。
結構なお値段なのだけど、伽倻ちゃん問答無用で払ってくれた。
実は伽耶ちゃんの家、旧家の上にかなりのお金持ちで、伽耶ちゃんもモノホンのお嬢様だったりする。
伽倻ちゃんは、黒のゴシック風ジャンパースカートに白のセーターと清楚っぽい雰囲気。
ただ巨乳で、ジャンパースカートなんて着たら当然、胸が強調されてエライことになってしまうのだけど。
「伽倻ちゃん、スタイルいいんだから、強調してもいい」とか言って、葵はそんなのを選んだ。
いわゆる「童貞を殺す服風」って感じ…葵ちゃん、実にいい趣味してた。
と言うか…伽耶ちゃん…やっぱり、無茶苦茶可愛い娘だったと葵ちゃんも思わずギュッと抱き締めちゃって、その後はもうベッタベタ。
それでも、伽耶ちゃん別に嫌がったりとかしない。
むしろ、可愛らしく笑ってくれたくらいなので、お互い何の問題なかった。
そして…伽倻ちゃんの案内で葵は、とあるネトカフェに連れてこられていた。
最初はこんな予定なかったのだけど。
道すがらの話の流れでポロッと空也がガンフロやってると言う話を漏らした瞬間、伽倻ちゃんの目の色が変わった。
「先輩…試しにガンフロやってみます? 運が良ければ、空也先輩にも会えるかも…。
けど、それ以前に…葵先輩ならきっとあの世界…気に入ってくれると思います。」
そんな事を言い出されたのでは、葵も黙ってられなかった。
葵は…格闘ゲームなんかは少しはやるんだけど、VRゲームとか全然詳しくない…けど、空也の熱中ぶりから楽しそうだなぁとは思ってた。
それに…伽耶ちゃんとすっかり仲良くなっちゃったもんで、お互い本気で遠慮なく戦う…と行かなくなってしまったのが実情で…正直、それが不満といえば不満だったのだ。
けど、VR世界なら怪我なんかの心配もなく、手加減無用だろうが大丈夫…伽耶ちゃんから、そんな話を聞いてすっかり、乗り気になってしまった!
まずはお試しという事で、篠崎さん御用達のネトカフェに二人で行き、言われるがままに、まずはキャラメイク。
VRって、基本的に個人利用には審査などがあって、かなり厳しいのだけど。
このネトカフェは、政府認可されており、さらにごく一部の特別会員については、VRヘッドギアの又貸し形式での利用が許可されていた。
伽耶ちゃんはこのネトカフェの経営者だった叔父から、経営権を譲り受けた…言わばオーナーでもあり、葵も即日で特別会員にしてくれたのだった。
キャラクターも外観と服装だけ決めれば十分なのだけと、ゲームとかアニメのキャラのコスプレみたいな事も出来るって言うんで、葵は紅いチャイナ服の対戦格闘ゲームのキャラ…「紅麗」の姿にしてみた。
伽耶ちゃんも「すごくアリです! グッドですわっ!」なんて言ってものすごーく前のめり。
彼女も葵と同類、男女問わずのケがあるようで…色んな意味で、この二人似た者同士だった。
ちなみに…このキャラ、髪型や顔立ちが葵にそっくりで、彼女はオタク系の友達にコミケに連れてかれて、コスプレさせられた事があった。
会場で「リアル紅麗」がいるとか大騒ぎされてしまった上に、写真とかめっちゃ撮られ、調子に乗って軽く空手の演舞を披露して、大好評!
そりゃあ…格闘技素人のコスプレオタクの見よう見まねとは訳が違う!
そんな訳で、葵ちゃんの黒歴史…と本人は思ってないのだけど、そんな過去もあり、葵的にはなんら抵抗はなかった。
そんなこんなで、葵ちゃんもガンフロへダイブインッ!
彼女にとっては、始めての本格的なVRゲーム。
軽い酩酊感と光の洪水のあと、タウンマップの泉の広場に、葵は突っ立っていた。
風の匂いがあって、埃っぽい風と土の匂い…噴水から、跳ねた水が頬に当たり、その冷たさに葵も驚きを隠せない…周囲の喧騒が物凄くリアル…。
彼女の姿は、有名格ゲーキャラ「紅麗」そのまんま…。
本人的にはものすごーく目立つんじゃ…と思ったのだけど、道行く人達もミニタリーな感じの人が多く、中にはアニメとかのコスプレみたいなカッコをしてたりする人がいるので、これも別に珍しくはなく…。
たまにチラッと見られる程度でそこまで浮いてないようだった。
目の前を、二人連れのピンクと緑の髪の女の子達が駆けていく。
女の子は少数派と聞いていたけど、あんな娘達もやってるんだ…なんて事を葵は思う。
「先輩、こちらでは初めまして…。」
背後から声をかけられて、振り向くと。
白い髪のシャプカ帽を被った白いコートみたいなのを着た女の子がいた。
目元を覆い尽くす黒いバイザーのせいで最初は顔が解らなかったのだけど…。
近くで見ると、目の色が右目が金で左目が銀色のオッドアイがとても神秘的だった…。
背は葵の肩くらいまでしかないのだけど、葵は雰囲気や気配で伽耶ちゃんだとすぐに解った。
名前は「カーヤ」兵種は「ストーミーガンナー」との表記。
「もしかして、伽耶ちゃん? うっわ…すっごい可愛くね? それ。」
一見、伽耶ちゃんと似ても似つかないのだけど。
よく見ると、顔立ちとかスタイルとかは伽耶ちゃんと同じで、なんとも斬新だった。
「ありがとうございます…とりあえず、場所を変えましょか。
ここじゃ目立つので…わたくしのギルドの勧誘飛ばしたんで、受領してもらえますか?」
伽耶ちゃんがそう言うと、葵の視界にメッセージが表示される。
『ギルド「ウロボロス」から、入隊勧誘されています。承諾しますか? Y/N』
葵がYを押すと、葵のステータス表示に蛇が自分の尻尾に噛み付いたような絵柄のアイコンが表示される。
「尾を飲み込む蛇」とか「身食らう蛇」とか呼ばれる紋章でギルド名そのままだった。
この「ウロボロス」…ガンフロ界隈では、PK勢と呼ばれる無差別乱入無言対戦と言うプレイスタイルで悪評高い人達の中でも最大勢力を誇る巨大ギルドなのだけど。
ギルドマスターにして、最強Sランクプレイヤーが引退してしまった関係で、すっかり大人しくなっていたのだった。
だが、そんな雌伏の時は今日までだった…何故なら、そのプレイヤーが帰還したのだから。
はい、そんな訳で…。
「篠崎さんと杜若さんの帰り道」の時系列的には続きです。
実はもう一話ぶんあるので三話構成になっちゃった…。
こんな感じで、カヤちゃん&葵ちゃんコンビが爆誕しちゃいましたとさ!
もうこの二人、主人公でいいよね?(笑)
余談ながら、京八の高山ラーメンってのは実在します。
京王八王子のショッピングセンターのレストランフロアにあります。
本当にピッチャーに入った巨大パフェが食べれます。(笑)
私が住んでた頃になかったので、実際には行ったことありません。




