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第十話「Combat Proof!」⑤

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第十話「Combat Proof!」⑤

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 …デスペナから帰還するなり、カナちゃんのシャウト。


「おまえら絶対ぶっころーっす! 3回全滅させたって、許さんっ!

 乙女のラブシーンを爆発オチにした罪を償わせてやるっ!

 エスパーダッ! 射線もっと右! 弾幕で追い込めっ!! 伝之助さんがロックオン完了って言ってる!

 対空砲火とイグラのコンボで確実にやっちまえっ! ヘリごと全員火葬にしてやんなっ!」


「アイアイサー! アフロディーテ様の命ずるがままにィッ!」


 UH-1へ向かって、エリコンKBA 25mm機関砲の曳光弾がグングン伸びる。

 フラフラと器用に避けるUH-1!

 

 けれども、重武装なのが災いしその機動は俊敏とはとても言えず、なんとももっさりとした感じ。


 そこへ一発のミサイル…イグラが飛来!


 ヘリからフレアが巻かれて、翼の様な煙幕を引きながら光の玉が八つほどバラ撒かれ、ヘリ自体も急上昇っ!


 フレアに欺瞞されたイグラが起爆っ!


 空に火の玉が広がるもUH1はギリギリで爆風から逃れた。


 惜しいっ! けど、こちらも更にもう一手っ!


「ヒァッハァッ! 落ちろッ! このカトンボがッ!」


 エスパーダ氏が歓声と共にエリコンの追撃を見舞うっ!


 ミサイル回避で姿勢が崩れた所への追撃っ! さすがに避けきれずに曳光弾が右側のロケットポッド付近をかすめると爆発ッ!


 暴発したロケットがあさっての方向にばらまかれ、さらに誘爆! 色々ばら撒きながら左にガクンと傾き一気に高度を落とす。


 あ…一人落ちたっぽい…諸行無常。

 他に一人重傷、もう一人が瀕死…敵チームのステータスだけで、ヘリの中の惨状がうかがい知れた。


「ないすーっ! エスパーダッ! キミやるじゃんっ!」


「御意っ! 勿体無きお言葉っ!」


 カナちゃんとエスパーダ氏のそんなやり取りが聞こえる。


「いいねっ! トドメはボクがもらうよんっ!」


 伝之助さんの楽しそうな声。

 

 少し離れたところから放たれたロシア製の携行対空ミサイルがシュルシュルと満身創痍のUH-1を追尾、ヨロつきながらもフレアをばら撒き、傾いた姿勢のまま最後の力を振り絞るように急上昇をかける!


 これは…当たるかどうか微妙…だけど、もうあの調子じゃ反撃どころじゃなさそうだ。


 目の前に真っ黄色に塗装され、サイドにでっかく金色の牡牛のエンブレムの入った何ともケバケバしいフレッチャ歩兵戦闘車がやってきて停止。


 そして、上空に火の玉…かなり遅れてチュドーンと爆発音。

 敵増援の生き残り4人がまとめてDEADになって、4000Pとか莫大なキルポイントが入る。


 フレア…仕事しなかった! 残念っ!


 ちなみに、ヘリや装甲車と言った重兵装ははっきり言って、歩兵には手も足も出ないくらい強いんだけど、基本的に一回落とされたらおしまい。


 それに重火器使いのバスターガンナーが一人でもいれば、対抗は十分可能。


 おまけに、落とされるとキルポイントが痛すぎるので、ほぼ敗北確定。

 

 …更に修理費用が物凄ーくかかるので、チーム的にも大損害となる。


 なので、普通に対戦するとまずお目にかかれない…。


 まぁ、今回はPK連中が相手二人とタカくくって、出してきたっぽいんだけどね。


 こっちにもいざって時には駆けつけてくれる戦友ってのがいるんだ!

 …無法のツケは高い…少しは思い知れってんだ。


「うぉっしゃあっ! 伝之助さん! ないっしゅーっ!」


 カナちゃんが雄叫びを上げる! 相変わらず、何とも勇ましい。


「えへへ…ごちそうさまっ! 今のコンボは美味しすぎ! これはボク…MVPもらっちゃたかな…?

 んじゃ、一仕事終わったんで、ボクもそっち行くから拾ってね!」


 フレッチャの上にはカナちゃんが仁王立ちしながら、拳を握ってガッツポーズ中。

 なんか、色々見えまくりのスゴいかっこしてるんで、慌ててこちらも飛び乗る。


「カナちゃん、先に戻ってたんだ。」


「ランク低いからデスペナから解放されるの早いんだ! モンドくん! おかえりぃ!」


 カナちゃんが抱き付いてくる…爆発脱げで色々見えてるけど…なんか興奮してて気づいてないっぽい。


 銃座のエスパーダ氏と目が合うとペコリと挨拶しながら、慌てたように自分のジャケットを差し出して来る。

 この人、結構紳士…でも、変態…いわゆる変態紳士って奴だ。


「援軍感謝です! それとお気遣いありがとです。」


「いえいえ、私…カナちゃんファンクラブ会長を自称しておりまして!

 アフロディーテ様の危機と聞き、馳せ参じました! お二人ともささっ! 中へどうぞ!」

 

 自称なのねっ! と言うか、アフロディーテ様ってなに?


 カナちゃんは…今頃、自分の姿に気付いたらしく恥ずかしそうにジャケットを受け取って羽織る。

 先程まで仁王立ちで雄叫びを上げていたのに、何ともしおらしくて可愛い。


 二人で車内に入ると、ドライバーズシートにかうんたっく氏。


「お二人ともお疲れでっす! 援軍、間に合わなくてすんません!」


「いえいえ、向こうがヘリ出してきてから、援軍要請したんで間に合わないのは解ってましたから。

 助太刀感謝です! 今、状況はどんなもんです?」


 と言うか、ヘリ落とした時点でほぼ勝負決まった感じなんだけど、一応確認しとく。


「ミウラさん達が今、敵陣へ突撃中!

今しがた敵の残党を蹴散らして、防衛ラインを突破したそうです。

 ヘリは落っことしちゃったから、こりゃもう、狩りモードですね!

 デスペナから戻った奴も戻る端から狩られてますね。

 ミウラさん、元PKKなんで、手慣れたもんです。

 だから、ここはもうお任せで大丈夫!

 僕らはヘリを落とした時点で仕事完了って感じなんで、我がチームの誇るカウンタック号でゆっくりしていってくださいな。」

 

 こじろうと400GT氏が敵陣ド真ん中に陣取って左右を押さえつつ、ブレブレ組4人が散開して獲物を狙うサメのようにウロウロと遊撃中。

 

 ブレブレの機動力をフル活用したハンティングフォーメーション。

 死に戻った敵のマーカーが湧く度に味方が殺到…10秒もしないうちに消滅…というのを繰り返してる。

 

 増援チームごと切り札だったヘリも落とされ、自陣にあんな風に展開されちゃうと…。

 こりゃもうワンサイドゲームだよね…。

 自陣サイドに押し込まれた状態での全滅って大抵こうなる。


 だからこそ、敵にとってはもっとも避けるべき展開だったのだけど。


 増援が降下させる暇もなくこちらの増援が到着した事と、対空兵装を準備していた事が大きい。


 元々ヘリ自体が重機関銃や対戦車兵器や携行ミサイルにアッサリやられる程度には脆弱なのだ。

 最新鋭のMH60なんかでも落とさるるんだから、旧式のUH1なんて尚更。


 使いどころを間違えるとああなる。


 僕らを爆撃してる暇があったなら、パイロットどガンナー以外、降下させてればまだマシだった…。


 それにしても、前線は完全にミウラさんが仕切ってるみたいなんだけど、ホント手慣れた感じ。


 …ご丁寧に、手榴弾で敵陣の地ならしまで始めちゃってるから遮蔽物すら、どんどん消えていく…。

 戻ってもロクに遮蔽物がないから、逃げ場も無く一方的に一人づつ狩られるだけ。

 うん、酷い…PKと言えども、同情は禁じ得ない。


 と言うか…ミウラさんってPKKだったんだ!

 確かに、あの人って弱い者いじめとか、卑怯者って許さないって感じだしね。

 

 ちなみに、PKKってのは「PlayerKillerKiller」の略。


 遊び半分のPKを逆に狩るのを生業にしてる正義の味方っぽい人達。


 如何にも弱そうな囮役にソロとかやらせて、PKが狩りに来たら、援軍で出ていって逆に狩るとか…そんな感じの事をやってるらしい。

 

 今回、まさにそのパターン…PKに教訓を与えるのが目的だから、戦闘力に優れたメンバーを揃えてる上に、徹底的に心を折る術を心得てる。

 このゲームデスペナ緩いから、別に落とされても痛くもないんだけど…。

 為す術無くデスペナオンラインなんて食らったら、普通に心が折れる。

 

 今頃、向こうの連中のチームチャットは、泣き言と怨嗟の声で埋め尽くされていることだろう。


「ミウラさん…味方だとホント頼もしいねぇ…。」


 加奈子さんが感心したように呟く。


「だねぇ…ここまでやられると絶対心折れる。

 …あ、一人ログアウト…逃げたな。

 さてさて、僕らはどうしようか? かうんたっく氏もゆっくりしてけって言ってるし。

 無理に僕らが出ていくまでもないと思うよ。」


「そだね…さすがに、ちょっと疲れたから、終わるまで休ませてもらおっか。

 フレッチャの装甲なら、対戦車兵器でも使われない無い限り、まず安心だしね。

 ちょっちモンドくん、そこ背中向けて座ってぇ。」


 なんか、甘えた声を出す加奈子さん…何と言うか戦闘の時と、この落差がスゴい。


 言われるがままに、隣りに座ると背もたれ代わりにされる。

 ちょっと前かがみになってあげる。


「この椅子はリクライニング機能付きでございます…お嬢様。」


「モンドくん、気が利きますなぁ…楽ちん楽ちん。

 けど、さっきは惜しかったねぇ…でも、モタモタしてる君が悪いっ!

 だから、続きはお預けっ! やっぱ、ああ言うのは勢いか…それかもっとドラマチックに…ね?」


 そう言って、ぎゅっと体重を掛けられる。

 甲斐性無しで悪かったね…こっちもすっごい残念だったんだけど。


「はいはい…解りました…精進します。」


 そう言って、身体を起こすと、申し訳無さそうな感じのかうんたっく氏と目が合う。


「あ、お邪魔するようで…すんません…。

 一応、空気に徹してたんですけど…お二方、どうも終わったみたいです。

 向こう、全員ログアウト撤退したみたいです。」


 逃げやがったのか…。

 つくづくしょうもない奴らだこと。


 敵が全員ログアウトしてしまったので、戦闘終了の表示とともに、VRモード解除。

 レザルト画面へ移行する。


 かくして、戦いは終わった!


モンド「お疲れ様でーす! 皆様、援軍感謝! いやぁ…あっさり片付いちゃって申し訳ない。」


カナ「なんだよ…あいつら…最初、人を小馬鹿にしてた癖に、狩られる側に回るとなんとも軟弱だねぇ…。」


ミウラ「そうだよねぇ…せっかく、ハメ殺しモードになってたのに…諦め早すぎる!

 PKやるなら、もっと気合い入れて、もっと増援呼んだり、最後まで抵抗してみせろっての!

 けどまぁ…お遊び気分でやってたんでしょうね…なんか、子供っぽいコ達だったし…中学生くらいかな。」


 ミウラさん…どうもアルデバランモードじゃないらしい。

 そういや、まだ素で顔合わせたこと無いんだよね。


こじろう「いやいや、噂にゃ聞いてたけど、PKKのやり口も大概えげつないっすね! ありゃ、折れますって。」


キサラギ「最後の方…死に戻りの奴に命乞いされちゃったわ…「もうやめでくだしゃあい」とか言って!」


カナ「でも、ブッた斬ったんでしょ? 容赦なく!www」


キサラギ「当然っ! PKなんぞやってるクソガキは滅ぶべしっ!

 んな、泣き言言うなら、初めからやるなっつって、バッサリと一刀両断っ!

 お仕置き、気持ちよかったわーん! ミウラさんのPKK流のお手並み最高だったわ! 素敵すぐる!」


かうんたっく「うちのカウンタック号も大活躍でしたよ! 車体に撃墜マーク貼ろっかな。」


伝之助「ええっ! 撃墜マークなら、ボクのイグラに貼らないと! 今回ボクMVPだよ?」


モンド「そりゃあ、ヘリ一機撃墜なんてしたらねぇ…けど、フレア撒かれた時は外さないかドキドキしましたよ? イグラって、結構外しますよね?」


 ロシア製はシーカーの性能が今ひとつなんで、アメ製のスティンガーに比べると、イグラは安いんだけど微妙。

 自衛隊の91式携帯地対空誘導弾なんて、TV画像識別誘導まで併用してるから、滅多に外さないんだけど…。

 イグラはフレアなんか撒かれると大抵、そっちに向かっていってしまう…通称アホミサイルとも呼ばれてる。


伝之助「ふっふっふ…今回持ち込んだのSR級のスペシャル版イグラだよ?

 射程と火力が倍! チャフ、フレア無効のスキル付き!

 最新鋭のAH-64Eアパッチ・ガーディアンだって一撃必殺!

 ボクだって、たまにはいいとこ見せないとって思って奮発しちゃった!

 あ、ミサイル代はチームマネーから引いとくからネ。」

 

 …そんなもん、持ってたんだこの人!

 ま、まぁ…チームの予算管理してくれてるのは伝之助さんだし、文句は言えない。


カナ「ふぁっ! 伝之助さん、なんちゅーもんを! でも…お高いんですよね?」


伝之助「き、気にちゃダメだよ! ヘリなんて皆、滅多に使わないんだから、使える時に使わないとネ!」


 カナちゃん、鋭いツッコミ。

 けどまぁ…そんなもんかって気もする。

 

 僕もだけど、宝の持ち腐れって言葉もある。

 あそこで外されてたら、あれはあれで反撃とかされたかもしんないしね…。


 かくして、名も知らぬPK連合軍は「ウォーキーガンナーズ」「らんぼるぎーに」の連合軍によって、完膚なきまでに叩き潰された。


 あれ? そう言えば、今回…キサラギ落ちてないな…。


 そんかし、僕と加奈子さんばっちり爆発オチ。

 うーん、なんか二人揃って落ちるのって、恒例になってる気がするよ?


 何はともあれ…皆、お疲れ様。


 ありがとうございましたっ!


とりあえず、VS 無言PK戦編終了です。


ガンフロの世界では、たまにこんな風に対機甲戦やら対空戦闘も勃発します。


さて…ここまでで、ストック使い切ってしまいました。

一応、続きあるんですけど。

日常パートに入るんで、またアカン調子になるんじゃないかと懸念しておりまして…。


まぁ、その辺含めて明日は一旦おやすみします。

そもそも、まだ入院中なのじゃよ? わし。



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