第七話「学校に行こうっ!」①
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第七話「学校に行こうっ!」①
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11月26日
制服のブレザーを着て、朝飯のテーブルに着くと、妹の雛乃がすっ飛んできた。
「お、お兄っ! ついに引きこもりで不登校の日々も終了?
毎日、祈った甲斐があった! お母さんは嬉しいよっ! 愛してるわっ!」
言いながら背中から抱き付いてくるので、エルボーで引き剥がす。
「誰がお母さんだ! このロリおかん!
不登校じゃなくてサボり…ちゃんと単位は計算してるから問題ない! 引きこもりでもないからな…。
まぁ、いつものゲーム…ガンフロ三昧だったってだけだ。
親父とお袋は…また始発出勤?」
「うん、例によって…だけど、今度は台湾出張だってさ! しばらく帰らないってさ。」
「台湾ねぇ…チャイナさん、しばらく大人しくなってたんだけどねぇ…。
最近あの辺の情勢…また怪しくなってるもんなぁ…戦争なんてゲームだけで十分だっての。
いっそガンフロで、決着つけりゃ良いんだ。」
ちなみに親父もお袋も外務省の関係者。
何の仕事やってるかは、詳しくは知らないけど、一年の半分以上を海外で過ごしている。
特に今年に入ってからは、近隣諸国が色々きな臭くなってる関係であちこち飛び回っているらしい。
日本の平和を影で支える仕事と言う事なのだけど、どんな仕事やってんだか…。
「戦争っ! ゲームっ! ガンフロッ! それ、今度私も始める事にしたっ!
実は雛乃もガンフロ用のVRヘッドセット、レンタル審査通ったんだ!
しかも、友達もやるって言うからさ! 美奈ちゃん! お兄も知ってるっしょ?」
なんか、雛乃が変な口調で食いついてきた。
美奈ちゃんって…ああ、あの告って来た子の一人か…。
まぁ、確かに将来美人になりそうな感じだし、背もあって大人しくて物静か…雛乃の奴とは大違い。
けど、少なくとも5年は早いんじゃないかなぁ…それくらいなら、釣り合い取れるから悪くないんだけど。
もっとも、その頃には僕は22歳で向こうは15歳…高校生にはなってるだろうけど。
それってどんなエンコー? とか、そんな感じなんで…やっぱ駄目じゃん。
「まぁ、知ってるけど…あん時は泣かれて困った…と言うか、何をやるって?」
「えっ? だから、お兄が毎日のようにやってるガンフロっ!
お兄がハマってるって話、美奈ちゃんにしたらやるって言い出したんで、私も一緒に始めることにした!
身内のお兄がすでにやってるし、うちはお父さんとお母さんが政府関係者だから審査も速攻パス!
明日にはモノが届く! 土曜は美奈ちゃんうちに来るから、よろしくー。」
「ちょっ! おまっ! 何勝手に決めてんだよっ!
あのゲーム…どう考えても女の子向きじゃないんだけどさっ!
あ、こら待てっ! 話は終わってないっ! 逃げんなっ!」
僕の追求を無視するかのように、雛乃はさっさと玄関へと向かう。
「だって、もういい時間じゃん! いってきまーす! あ、戸締まりはよろしく!」
それだけ言い残して、ランドセル背負ってさっさと出ていってしまう。
と言うか…雛乃とガンフロ? うわぁ…めんどくせー!
カナちゃんは昨日のらんぼるぎーに戦での通り、ルーキーのクセに空中戦やって、一人で1000P以上稼いじゃったくらいだから、はっきり言って手がかからない。
ミウラさんも言ってたようにFランク詐欺って奴だ。
昨日の一戦だけで早速Eランへ昇格…昨日はミウラ先生のお説教に捕まって、逃げるようにログアウトしたから、最後の方、お相手出来なかったけど…。
スナイパーの下位職にあたるスカウトに昇格したって言ってた。
スカウトは火力補正や防御補正も低いんだけど、足の速さと隠蔽スキルがあるので、プレイヤーに狙撃スキルさえあれば、スナイパー的な戦い方も出来るので、意外と強い。
スカウトなら、カービンとかも使えるから、戦力的には十分と言えるだろう。
ただ雛乃達は完全なド初心者…まずは銃の構えとかその辺から教えないとってそんな感じ…。
こりゃあかん…応援が必要だ…僕一人じゃ面倒見きれない…カナちゃんは…手伝ってくれそうだけど。
他のメンバーは…どうかな? ああ、もうっ! 仕方ない…皆にメール送っとくか! 善は急げだ。
明日VRヘッドセットが届いて、土曜にって言ってたから…今日は木曜だから…あさってかよっ!
それと…そうか…ミウラ先生にもご協力をいただこう!
先生ってくらいだから、きっと子供の扱いや人に物を教えるのも慣れてる! グッドアイデアっ!
手早く、スマホを使ってメールを作成。
面倒くさいからCCで同じ文面を送信。
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タイトル:お願い。
差出人:モンド
本文:僕のリア妹とその友達がガンフロ始めるとか言い出した。
どっちも小学生…たぶん、今度の土日辺りにデビューすると思われ。
二人も子守は無理なので、誰かブートキャンプ手伝ってください。
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うん、こんなもんでいいか。
ガンフロのメールは、リアルともインターネット経由でリンクしているので、専用メールソフトを使うことで、スマホなどからVRクライアントを起動せずにメールを送れるようになっている。
アドレス帳も向こうのフレンドリストから引っ張ってくるので、普通のメールを送る感覚でメールを送信できるし、受信もできる。
さすがに、チャットは無理なんだけどね。
とりあえず、時間も押してるんでダッシュで家を出ようとしたのだけれど…。
思った以上の冷え込みにジャケットを取りに戻る。
…天気予報の東京の最低気温とか、この辺だと全然当てにならない。
冬場は氷点下もザラ…氷柱とかだって出来るくらいで、雪とかも降る時は半端ない。
…天気予報でも八王子だけ切り離されてる事があるのだけど、あれはそれくらい東京23区とかと比べて落差があるから。
ここらへんになると、もう奥多摩とか山梨の天気や気温を見たほうがまだ近い…それが八王子クオリティ。
…僕が住んでいるのは、以前カナちゃんに話したように、東京都の最果て、八王子の更に果て…元八王子って所。
歴代天皇陛下のお墓のある多摩御陵や心霊スポットで有名な八王子城がすぐ近く…豊かな大自然あふれる高級住宅街…と言えば聞こえがいいが。
要はド田舎…夜になるともう真っ暗…おまけに僕の家はその住宅街の最果ての家。
グーグルマップなんかだと物凄く解りやすいんだけど、物の見事に周りは緑色の総天然色。
通っている高校は…中の上と言うそこそこの偏差値と、万事可もなく不可もないと言う学風で知られる都立富士林高校って高校。
本当はもっと上を狙えたんだけど、楽をしたいが為にここにした…距離的にも最寄りだったしね。
おかげで、成績については上位20番内をキープできる程度には優等生。
だから、別にサボりまくっても、単位さえ取れる程度には出席して、テストを落とすような事さえなければまず問題ない。
ある意味、問題児扱いらしかったけど…学校なんて成績が問題なければ、学校側としてもぐうの根も出ない。
まぁ、大学受験とかに本腰を入れるのは3年になってからでいいんだからね…今はせいぜい楽をしよう!
ただ…遠いんだよね…その距離約5km…まぁ、歩きだと軽く1時間コース。
最初はキツかったけど…もう慣れた…自転車も考えたけど、自転車置き場のスペースの抽選に漏れた。
バス使っても良いんだけど、結局結構歩くし、ガンフロってリアルの体力とかも反映されるっぽいから、体力つけるのは悪くない…そんな訳で、トレーニングも兼ねて基本歩き!
僕はどちらかと言うと細身で貧弱君なんだけど、少しくらいは鍛えないとねっ!
現在時刻は7時半…8時半の始業には余程チンタラ歩かない限り間に合う。
ちなみに、雛乃はもう少し近く…と言っても2kmちょっとの白山小学校に通ってる。
子供の足だと軽く1時間コース…途中で下級生をかき集めながら集団登校するので、それなりに時間がかかる為、7時過ぎにはいつも出てしまう。
チビがもっとチビっこいのをぞろぞろと引き連れて歩く姿はなかなかに微笑ましいんだけどね。
ちなみに、雛乃は5年生のくせに130cm台と低め…胸なんかも全然無い…ハッキリ言ってまな板である。
こないだ…風呂に乱入してきた時に見たけど相変わらずだった…。
こりゃもう絶望的だろうと思うのだけど、本人は至って前向きだった。
…と言うかそろそろ…いい加減、風呂乱入はやめろ。
例の美奈ちゃんは…雛乃と同学年とは思えないくらいの長身で150cmくらいはあって、160cm台の小柄な僕と並んでもそう大差ない…。
中高校生とよく間違えられるらしい…胸もCカップくらい余裕であった。
つまり、大変発育がよろしい。
雛乃と並ぶと格差社会と言う言葉をしみじみと感じてしまい、雛乃が不憫でならないのだけど、二人は親友!
だが、いずれにせよランドセル装備…もはや、声掛けの時点で事案なのであった。
さて…主人公のリアル編です。
思い切り実在の地名ですが…。
まぁ、作者は八王子育ちなんで、あのへん土地勘ありまして…。
やっぱり、自分の知ってる土地だと、描写もしやすいですからね!
ちなみに、富士林高校ってのもうちの母校をモデルにしてます。
校舎とか全然変わってないです!
絵に描いたような中庸な高校で今もやっぱり相変わらずらしいです。
部活推しみたいになってるとかなんとか。
新キャラの雛乃ちゃんは、カードキャプターのさくらをもっと活発化させて、
ブラコンをこじらせた感じをイメージしてます。
CVは丹下桜! 萌えますなぁ…。
本日中にもう一話! 行ったります!




