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第六話「彼氏彼女の戦場な日常」②

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第六話「彼氏彼女の戦場な日常」②

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 全員突撃開始!

 

 向こうも近接特化だから、両者考えることは一緒…話は早い。


 先陣を切るのはいつもどおりキサラギ…と思ったら、カナちゃん?!


「ちょっ! カナちゃん、あんた…どんな動きしてんのよっ!」


 見ると、木から木へ飛び移りながら、ピョンピョンと三角飛びの要領で、かっ飛んでいくのが見える。


「へへーん、お子様特有の機動力をフル活用! 

 …って言うか、わたし動画でもこれくらい動いてましたよね?

 こう言うマップだと、こうやって動いた方が早いんですよ!

 モンドくんも思い切ってやってみようっ! 木をしならせて、いい感じのとこでタイミング良くキック!

 なるべく高いとこまでよじ登って、木のしなりを目一杯活用するのがコツ!

 やれば出来るってば! イケる! イケる!」

 

 ああ…確かに、壁走りみたいな事や壁蹴っての三角飛びでビルの間を駆け上がるみたいな事やってたなぁ…。

 あれってスキルか何かだと思ってたけど…。

 やろうと思えば誰でも出来るプレイヤースキルって奴だったのか…へぇ…。


「って、出来るわけねぇよっ! キサラギ、カナちゃんのサポートッ!

 ワイヤーガンで進撃の巨人っぽく…あんな感じでやれない?」


「あ、そっか…あんな感じで行けばいいのか! やってみるっ!」


 キサラギがワイヤーガンを使って、同じような感じで木から木へと飛び移っていく…。

 タイミング間違えると木にぶつかったり、速攻墜落すると思うんだけど…なんか器用にすっ飛んでいく。

 

「おーっ! すんごく早いし! こりゃ気持ちいいわっ! ちょっとこれ癖になるかもっ!」


 凄く楽しそうだった…キサラギって、意外に度胸あるし、プレイヤースキルも高いのな…。 


 とりあえず、僕は…そのまま走って進軍!


「こちら、カナ! そろそろ、会敵っ! 先制仕掛けるよ!

 頭上、通り過ぎざまのマグナムトップアタック、避けれるかなぁ? にししっ!

 いきなり全員昇天とかさせちゃったら、キサラギごめんね~。」


 無線越しに、カナちゃんがいたずらっぽい笑い声をあげる。


 戦場マップを見ると、早々とカナちゃんと向こうのブレイズブレイド…略してブレブレ三人組が接触しそうになっていた。


 何という侵攻速度! あまり広くないマップとは言え…会敵ポイントは中央陣地を超えて完全に敵サイドだった。

 キサラギも少し遅れてはいるものの、まもなく接触出来そう。


 どうやら完全に機先を制したらしい。


 右手側には三人組に少し遅れて、アサルトガンナーのエスパーダ氏と400GT氏のマーカーが現れた。

 カナちゃん、木の上すっ飛んでいってるから、視界も広い…あの移動方法は、まさに森林戦用って感じなんだなぁ…。


 アサルトガンナーの二人は、ブレブレトリオの側面支援狙いだったんだろうけど…完全にカナちゃんの侵攻速度を読み違えたようだ。

 

 …って言うか、あんな移動方法での電撃速攻! 誰が予想出来るかってんだ!


 スカウトレンジャーのかうんたっく氏は…マーカーがまったく見えない…視界内に誰も捉えてないって事か。

 そうか…スカウトレンジャーは固有スキルで隠蔽もってるもんな…プラス光学迷彩ってとこか。

 

 そうなると彼は奇襲要員…ブレブレによる正面突撃、アサルトガンナーによる火力支援。

 スカウトレンジャーによる伏撃、奇襲。

 

 ブレブレ3人とかイロモノ編成に見えて、結構考えてる。

 このマップのスペシャリストを自称するだけはあった…こりゃ、舐めてかかってると負けるかもしれない。

 

 ちなみに、この戦場マップのマーカーは、各員の視界や索敵スキル等から算出された索敵値に応じて発見した敵と味方全員が表示されるようになっている。

 

 この辺は…ゲームなので、実際とは少し違うところ。

 実際の戦場では、前線からの情報を取りまとめて、後方の司令部なんかがやる仕事なんだけど、このゲームでは後方支援ユニットって言うチーム装備で実現されている。

 

 無いと敵増援コールなどの情報支援もなく半端じゃなく辛いので、必須装備のひとつだった。

 

 もちろん索敵ドローンなどがあると、この索敵はもっと楽になる。

 うちも導入しようかな…なんてことも考えてみたり。


 それにしても、問題はかうんたっく氏の狙い。

 ステルス化してるって事は、どこかへ浸透単独奇襲を狙ってる可能性が高いんだろうけど…中央の陣地?

 

 確かに今はガラ空きだけど、一人だけで陣地に篭っても、包囲殲滅されるだけであまり意味がない…これは伝之助さん狙いってとこかな?


 伝之助さんはまもなく陣地に入るところ…。

 となると、伝之助さんを奇襲で仕留めて、陣地に立て籠もって味方との合流を狙うのは悪手じゃない。


 …そうなると、彼の相手は僕が引き受けるとしよう。

 この手の隠密系相手なら、僕は結構強いぞ…勘と耳には自信がある。

 

 これは…プレイヤースキルと言えなくもないかな。


 遠くで、パイソンの銃声! 四連射っ!


 カナちゃんがブレブレの頭上通り過ぎざまに仕掛けたっぽい。


「すまねぇ…兄貴…俺は先に逝くぜ…いいの、もらっちまったようだ…ぐはっ!」


「うぉおおおっ! ディアブロォッ!」


「ミ、ミウラの兄貴…お、俺は足をやられた…。

 先にいってくれ…こんなとこでパンクだなんて…ざまぁねぇ…ぜ。」


「イ、イオタ! お前までっ! くそっ! 今のはなんだ! 敵はどこだっ!」


「ちゃおっ! いっただきま~すっ!」


「ぬおおっ! 同業者かっ! バカなっ! 早いっ! いくらなんでも早過ぎるだろっ!」


「ごめんねぇ! 私らってせっかちなの! 楽しませてねぇん!!」


 どうやら、一人クリーンヒットで撃墜。

 もう一人も足を奪ったから、白兵特化のブレブレだともう事実上の戦線離脱。

 

 そして、キサラギとミウラ氏が激突っ! どうやらチャンバラが始まった模様。

 

 カナちゃんは三人の頭上をフライパスして、右手側へ移動。

 …アサルトガンナーの二人に捕捉されたらしく銃声が聞こえ始めた。

 

 まぁ、さすがに木々の間を飛び交ってるから目立つっちゃ目立つもんな。


「こちら400GTよんまるまるじーてぃーッ! 敵を見つけた! なんだあれはっ!」


「かっけー! 木から木へ飛び移ってるのかっ! ああ言う動きって、やればできるもんなんだねぇ…。」


「エスパーダッ! 感心してる場合かっ! 弾幕だ! 弾幕を張れっ! こっちに来るぞっ!

 なんでもうこんな所に敵がいるんだ!! 始まってまだ5分も経っちゃいない…おかしいだろっ!」


「あいよ! けど、あれ…女の子だよね? しかも、結構可愛くね? 

 ちょっと撃ちづらいなぁ…俺、紳士自称してるんで…。」


「バカ言ってんなっ! ディアブロとイオタがアイツにあっさり落とされたらしい!

 手加減なんてしてたら、こっちが落とされる! あれでFランなんて詐欺だろ!

 って、おぅわっ! めっちゃちかっ! 撃たれてるっ! 撃たれてるぞっ! 頭、引っ込めろぉっ!

 後退っ! 後退ぃいいいいっ!」


「ひ、ひぃいいいっ! 今、こめかみ弾掠めてったっ! あっぶな! やっばっ!

 って、400GT君? ちょっとタンマっ! お、置いてかないでぇっ! あqwせdrftgyふじこ!」


 なんか向こうは無線オープンにしてるっぽい…つくづく、楽しい人達だこと。


「なんだか賑やかな人達だねぇ…。

 けど、エスパーダってコ…銃弾見切って避けたよ…やるじゃん。

 結局…一人しか落とせなかったかぁ…やっぱブレブレ系は硬いねぇ…。

 あのミウラって人なんて、マグナム二発も当たったのに跳ね返してたよっ!

 多分、積層装甲型のヘビーアーマー装備…となるとブレイドマスターって事かなぁ…。」


 チーム無線に、独り言のようなカナちゃんのつぶやき。

 銃撃戦の真っ只中のはずなのに、結構余裕な感じ…さっすが。

 

 ブレイドマスター…ブレイド系の最上位兵種。

 ブレイズブレイドの防御力を更に上げた白兵特化。

 確実に落とすには、対戦車兵器が必要とまで言われるほどの重防御。

 ここまで来ると浪漫なんてバカに出来ない…マスタークラスの兵種のひとつだった。


「ブレイドマスターかぁ…さすがに、実物にお目にかかるのは初めてかな…当然、やり合うのも…。」


 ブレイズブレイドの機動装甲服だって、9パラ程度ならものともしないのだ…。

 これは僕単独でやりあったら、歯牙にも掛けられないな…。


「ブレイドマスターって、はっきり言って強いよっ!

 12.7mmクラスの弾丸じゃないとあの装甲抜けないからね。

 それにアイツ、頭上を取って、こっちが撃つより先に顔をとっさにガードしてた。

 勘もいいし、相当戦い慣れてる! 強敵だよっ!

 …キサラギ! そいつ結構ヤバイよ! あっさり負けんなよっ!」

 

「はいはーい! 言われなくても、手強いってのは生で体感中! やばっ! これたのしーわ!」

 

 無線越しにも激しく打ち合う金属音が鳴り響いてるのが解る。

 ガンガンバキンとかそんな感じ。


「それと、こじろうっ! そっからでいいから援護射撃っ!

 向こうのアサルトも弾避けるくらいには、手練!

 すっかり、体勢立て直されて、二人がかりで撃たれてる! ちょっと木の後ろから動けないっ!

 一旦離脱して、リロードすっから援護っ!」

 

「まぁかせろっ! 射線通ってねぇし、まだカナちゃんの姿も見えねぇけどな。

 八九式の射程ならこのマップの端から端だって余裕で届く。

 このまま前進しつつ、盲撃ちで弾幕張るっ! 牽制程度にゃなる!

 カナちゃん、流れ弾に当たんなよっ!」


「盲撃ちなんかに当たると思ってんの?

 きわどいの来たら、避けっから平気っ! 遠慮なくぶっ放せっ!」


 右手の方で、カナちゃんがパイソンをぶっ放し、やや後方にいたこじろうの援護射撃の音がし始める。

 こじろうもカチコミスタイルだった割には、さすが切り替えが早い…かなちゃんも…多分、平気だろう。


 カナちゃん、なんだかんだ言って戦闘になるとノリが赤マフさん時代と変わってない…。

 けど、あの荒々しい調子も可愛い女の子の声だと、なんか可愛い。


「さて…こっちもそろそろかな?」


 風に乗って、独特のオゾン臭のようなものが漂ってきたので、そう独りごちる。

 かなり近い…おそらく50m以内…敵の姿も気配もない。

 

 目をつぶって、ステアーTMPのセーフティボタンを目一杯押し込む。

 

 …カサリ。


 草を踏む小さな音…


「そこだっ!」


 一見、何の変哲もない草むらへ向かって、振り向きざまにステアーで水平なぎに9パラをばら撒く!


「ぬぐぉっ!」


 草むらの中から、うめき声…そして灰色のマントとフードを被った人影が転がり出てくる!

 敵…かうんたっく氏だった。


「な、なぜ…完全に気配を断ってたのに、どうやって僕の光学迷彩を見破ったんだ…?」


 右手と左足に被弾したようで、もはや動けないようだった…。

 一応、向こうもM4カービンを構えてはいるものの、左手だけじゃ当てるのはキツイだろう。


「うーん、今のは音…かな? それと気配? うちにも光学迷彩使いがいるからさ…。

 あれって、稼働中は独特の匂いがするから風下だと解るんだよね。

 それに絶対ここ通るって予想してたしね…。」

 

「ええっ! 匂いなんてすんのっ! 僕、全然わかんないし、Wikiにだってそんなの、載ってないよっ!」


「オゾン臭って知ってる? 飛行場とかコピー機の近くとかでするアレ…。

 こんなとこで、そんな匂いが微かにでもしたら不自然って解るでしょ?

 だから、光学迷彩使う時は相手の風上に回っちゃダメ。

 …それに僕は鼻と耳がいいからね…索敵は強いんだ…ちょっと運がなかったね。」


「なんとっ! 光学迷彩にそんな弱点があったとは…。

 やれやれ…あのFランのロリっ子といいあんたと言い…。

 あのキサラギってコもうちのミウラさんと互角に打ち合うなんて、スゴいっ!

 ミウラさん、Aランブレイドマスター! それも十剣豪のひとりだよ?

 ホント、君らただモンじゃないね! …けど、僕もまだ終ってないからねっ! スキありっ!」


 その言葉を告げると、M4カービンで撃ってくる! 諦めないその心意気、お見事っ!


 けど、こっちも油断なんて、これっぽっちもしてない。

 撃たれると予想してれば回避は容易い…。

 前回り受け身の要領で転がりながら、弾幕を回避しつつ、ステアーで一斉射!


 4つほどの赤い被弾エフェクトと共にかうんたっく氏はばったりと倒れると、最後の力を振り絞ってのサムズアップ!

 そして、その姿が消えていく…よし、これで二人っ!


 かうんたっく氏を撃破し、一息つく間もなくキサラギが戦っている方から爆発音。

 キサラギのステータスが瀕死になってる…。


「キサラギ、なにがあった?」


「ごめーん、イオタって奴をほっといたら、自爆されちゃった…。

 向こうはどっちも即死だったけど…こっちも巻き込まれて瀕死!

 まったく…二人犠牲にして、一人巻き添えって、ポイント計算くらいしろっつの…。

 せっかくいい勝負してたのに水差されたっ! むかつくーっ! あのミウラってヤツ、絶対落とすっ!

 …そんな訳でちょっち落ちるね!」

 

 瀕死状態だったキサラギのマーカー消失…あちゃー、落とされちゃったか。

 まぁ、キサラギが落ちるのは、うちのお約束だしね…デイリーノルマ達成って事で乙っ!


「こちら伝之助…中央陣地を制圧したよ。

 こっちの被害はキサラギが落されて150Pだけど…。

 向こうのブレブレ三人とスカウトレンジャーを一人落としたから550P先取!

 ブレブレは安い上にフレンドリーファイア扱いになっちゃったから激マズ…。

 けど、どうやらAランが居たみたいだね…たぶん、ミウラって人…彼がエースかな?

 フラッグも取ったから、このままフラッグ防衛に専念しよう…こじろうとモンドくんはこっち来て。

 カナちゃんは遊撃ってとこでどうかな?」

 

「こちらカナ…向こうのアサルトガンナー二人は撤退した!

 たぶん、一度自陣に戻って、体勢立て直すんだと思う。

 ここは一発、追撃して敵陣切り込みってのはどう? 睨み合いの小競り合いとかなったら面白くないよ!

 わたしが片道切符の単騎突撃するから、皆は迎撃態勢整えててっ!」


 相変わらず、勇猛果敢なカナちゃん。

 確かに、カナちゃん安いから鉄砲玉にはぴったりかも。

 けど、その威力はマグナム級…悪くない、あの三角飛び移動なら、戻りも早いしね。


「んじゃ…僕も付き合うよ…僕は君の相棒だからね! その先が地獄だってお供するさ!

 どうせリロード中のカバーは必要だろ?」


「いいね! 実は付き合ってくれないかなぁって、思ってた! じゃあ、モンドくん一緒に逝ってこよう!

 地獄の底かぁ…そうだね、モンドくんとだったら、怖くないかもっ!」


「ああ、とことん付き合うよ!」


「まったく、二人共しょうがないねぇ…このマップで敵陣特攻なんて、あまりオススメ出来ないんだけど。

 解った…ここの守りは引き受けたから、二人共好きに遊んでおいで…。

 まったく若いねぇ…おじさんも見てて微笑ましいよ。

 こじろう、いつものパターンだけど、キサラギが戻ってくるまで、二人でここを死守するよ!

 陣地強化して、敵襲に備えよう!」


 呆れたような伝之助さん…でも、無鉄砲な若者のフォロー役に徹してくれるのが彼のいいところ。


「あいよっ! モンドっ!

 カナちゃんにカッコいいとこ見せてやりな! 後ろは俺達に任せろっつのっ!」


 こじろうも…なんか、苦労かけちゃいます!

 あとよろしくー!


さて、ガチな銃撃戦開始ですっ!

お互いマジなんだか、スチャラカ何だかって感じです。


うんうん、こう言うノリがやりたかったのだよ!


ここに来て、モンドくんの特殊能力が披露されましたね。

「鋭敏知覚」って能力で、意図的に副交感神経優位の状態を作り出すことで、五感が通常時の倍くらいになります。


これは架空の超能力とかでもなく、寝る時とかたまに周囲の音がやたら気になる事ってありません?

あれって、そう言う状態で…その時の感覚がさらに強力になった感じです。

モンドくん地味に人間レーダーみたいな感じのコだったりします。


こんなのと1kmスナイパーが組めば、そりゃあ強いですよね? 

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