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第五話「彼氏彼女のおつきあい?」①

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第五話「彼氏彼女のおつきあい」①

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 チームハウスってのは、六畳一間程度のめっちゃ狭いチーム用のVRフィールドの事。

 チームを立ち上げると、この狭いルームがもれなく支給される。


 まぁ…一応、フルVRなんで、打ち合わせとか雑談用とかそんな感じに使われる他、倉庫ルームなんてのもあるので、チーム共有の物置なんかにも使える。

 色々増設とかも出来るようになっており、戦車やら装甲車を置くためのガレージなんても置ける。

 ガーデンなんてのもあって、野菜やらを育てることも出来るらしいし、料理アイテムの作成が出来るキッチンなんてのもあったりする。

 この辺はもっぱら生産プレイ向け…うちは伝之助さんの趣味でキッチンがあって、たまにおじさんの手料理なんてのを皆で食べる事もある。

 けど、食に拘りある伝之助さんだから、味は抜群。


 今日は赤マフさんを見送ったあと、そこにチーム全員集合という話になっていた。


 僕が一番乗りかと思っていたら、先客がいた。

 赤マフさんならぬ…ちびっ子のカナちゃんだった。


 今日は、こないだの初期装備じゃなくて、僕とお揃いのマリーンブルー英軍迷彩ジャケットと、同じカラーの迷彩柄ミニスカートを着込んでいて、見覚えのある赤マフラーを身に着けていた。

 

 この赤いマフラーは赤マフさんの名前の由来でもあり、本人にとってもリアルでの宝物って話だった。

 もちろん、チーム共通のベレー帽もばっちり…カラーは黒と赤のツートン。

 あと、髪型も薄茶色のセミロング、おまけにハーフアップにしてて、ちょっとオシャレなお姉さんっぽい感じになっていた。

 つまり、可愛い。


 加奈子さんはルームのテーブルの椅子にちょこんと腰掛け、僕の姿を見ると慌てて、目をこすっていた。

 どうもタイミングが悪かった…ような感じ。


 無言で隣の席に座ると、顔を見ないようにして、黙ってハンカチを差し出す。

 加奈子さんはうつむいて、ハンカチを顔に押し当てたまま、しばらくそのままでいる。

 やがて、ぷはぁって感じで顔を上げると、ニッコリと微笑んでくれる。


「ごめん、ありがとね…いやぁ…あんないっぱいの人がお見送りに来てくれるなんて思わなくてさ。

 与一とかアイリス…モンタナのおっちゃん…あんな懐かしいメンツまで来てくれるなんて…。

 モンドくんは知らないだろうけど、スナイパー限定の「スナイパーマスターズカップ」って言う狙撃技量を競うイベントがあってさ…。」


 それから、彼女は赤マフさんとしての思い出を懐かしそうに語った。

 なんでも、そのイベントの決勝戦…それまで的打ちとロングショットなどで競い合っていたのに、与一さんの提案で、いきなりのガチバトルしかも、バトルロイヤル方式なんて話になってしまい…。

 あの3人と赤マフさん…4人のSクラススナイパーの頂上決戦なんてのが始まってしまったらしかった。


 その戦闘は熾烈を極め、射爆場を目一杯使った特設会場の大勢の観客の前で、交わされる絶技、また絶技と言った調子で…。

 最後は誰もがサイドアームの拳銃を使った近接戦になる…と思ったところで、隠し持っていた弾薬を使って、AK47でアウトレンジで全員一掃と言う奇策で赤マフさんの勝利に終わったんだそうな。


 なんか、ずっこいけど…赤マフさんってそう言う人。

 勝つためなら手段を選ばないし、ハッタリやフェイクと言った駆け引きが抜群にうまい上に…敵の武器のブン取りだの、技をパクったりも平然とやる…。


 いずれにせよ、死力を尽くした結果の勝利って奴だから、誰も文句言えない。


 そして、語られる僕の知らない様々な人達との様々な思い出。

 …やっぱり、この人ってすごい人だったんだなって改めて思う。


「で…ここに来てから、そんな感じの色んな思い出がぶわぁっと湧き出してきちゃってさ。

 …もう一人で思い出し泣き。

 赤マフのイメージ的にあそこで男泣きとか出来なくて、一生懸命我慢しちゃってたのもあって…もう大変。」


 そう言って、目尻から溢れた涙を拭く加奈子さん。


「何言ってんだかね…泣きたい時は男だろうが女だろうが泣いていいに決まってんでしょ。

 カナちゃん…君は何かと色々我慢しすぎだったんじゃないかな?

 だからこそ、これからは自分がやりたいように、したいようにしたって構わないんじゃないかな。」


「我慢…してるのかなぁ。

 あんま考えたことないな…我慢…してるかもしれないし、ワガママ放題な気もするし…。

 リアルじゃ「節制」って言葉を絵に描いたような感じの生活なんだよね。

 …もう我慢するってのが、癖になってるのかもね…。」

 

 なんとも聞き慣れない言葉が出てきた。

 節制…ああ、キサラギがよく使う言葉だ…タバコとか塩分控えめとか? いや、確か…ほどほどに慎ましくとか…そんな感じの意味だったかな。

 あとはそんな感じの名前のスタンド使いが居たような気がしたけど、多分これは関係ない。


「まぁ…カナちゃんのリアルな生活ってあんま想像付かないけど…。

 街を遊び歩いたりとしないで、化粧とか服にはあまりお金かけない感じ?

 あ…いや、別に答えなくていいよ…あまり突っ込んだこととか聞くのは失礼ってもんだし…。

 特に女の子相手にね。」


 良く解らないけど、とりあえずインドア派な感じかな…と思う。

 クラスの隅っこで本とか読んでる地味な真面目っ子とかオタクタイプ…後者っぽいなぁ…彼女アニメ、漫画ネタめっちゃ使うし。


「あはは…そうだね…そんな感じ…。

 お外行って、お友達とカラオケとか街で遊んだりとかいいなって思うけど、無理な相談だしね。

 お化粧やお洋服か…わたしも女の子なんだしそれなりに興味あるんだけど…。

 見せる人もいないから、その辺全然だわ…色気ないよねぇ…。

 そんかし電子ブックで漫画、小説は読みまくりだね! もう蔵書が千冊超えちゃったよ!

 あとアニメとかゲームなんかも?

 まぁ、この辺は皆でアニメ同時鑑賞チャットとかした仲だし、しょっちゅうネタ連呼してるから今更かな?」


 電子ブックで蔵書千冊ってのは尋常じゃない…つぎ込んだ額にしたら、約50万円以上…もちろん、長年に渡るものだろうけど…普通の本だったら、壁一面本棚で埋め尽くすくらい…何と言うかすげぇ。


 けど、また出てきた「無理な相談」…なんなんだろ?

 何か事情があって、行動に色々制約がある…そんな風に思える。

 それにリアルで友達とか少ないのかな…と思う。

 

 いわゆる女子高校生とかって、クラスメイトを見てる限りだと、基本集団行動。

 単独行動してるのは、オタク系の娘とか、真面目ガリ勉系…それか彼氏持ちとかそんな感じ。

 

 まぁ、あんまりリア友で女子高校生なんていないから良く解らない。

 一応、それなりに付き合いのある女子高校生はいるにはいるんだけど、どいつもこいつも一癖も二癖もあるような奴ばっかり、スタンダードなふつーに女の子、女の子してるような奴は…いない。


「うん、その辺は赤マフさんの時点で色々周知の事だからね…お互い様。

 けどさ、僕は年中妹のワガママに付き合わされてるから、大抵のことに寛容って自信はあるよ。

 だから、少しくらいワガママかなって思っても、遠慮なく言ってもらってかまわないよ。」


「ふふ…モンドくん…年下のクセになんか、妙に大人びてるんだよなぁ…絶対年上って思ってたし、実はリアルで結構モテるんじゃね? いわゆるリア充ってヤツ?」


「うーん、これが年齢=彼女いない歴なんだよなぁ…。まぁ、女の幼馴染とかいたり、妹の友達とかに告られたりとか、顔も知らない後輩からラブレターもらったりとかは何度かあったんだけどね…。」


「あれ? それってモテるって言わね? でも、一度も彼女いた事が無いってなると…全部お断り?

 なんだか勿体無くね? あんま理想が高いと女の子には嫌われるよ?

 女の子の幼馴染って…それ、どんなギャルゲー主人公よ?」


「いや…まぁ…幼馴染とか言っても、幼稚園の頃から延々一緒の腐れ縁ってだけだしなぁ…。

 妹の友達って、そもそも小学生のお子サマ達よ? そんなの彼女にするとか普通に犯罪でしょ。

 後輩とかは…いきなり、待ち伏せされてラブレターとかベタなパターンだったけど、こっちは全然知らなくて、向こうは何だかこっちの事、熟知してるんだよなぁ…正直、怖くなって逃げた…。」


 妹の友達はともかく、その後輩の方ははっきり言って、少々…いや、ものすごーく問題があったのだけど。

 正直、あまり思い出したくない程度には修羅場化したので、あえて黙っておく。


 あれは本当に色々大変だったし、現在進行系でもあるんで、下手に食いつかれるとろくな事になりそうもない。


「あはは…実際の幼馴染って確かにそんなもんだろね…。

 ラブラブな関係になれるなら、とっくになってるって…そう言う事だよね。

 妹ちゃんのお友達は…うん、そりゃ犯罪だね! よく思いとどまった! モンドくん、エラいよ!

 男子高校生が女子小学生に手を出しちゃたら、もう事案! 通報乙って感じ。

 けど、その後輩ちゃん…一方的に熟知ってなんかヤバくね?

 なんかさ…ストーカーとかになりそう…って、わたしみたいな他人が、決めつけは良くないか。」

 

 カナちゃん、結構鋭い…実はそんな感じだったんだ。

 まぁ、黙っとくけどさ。


「でも、そうなるとモンドくん…フリーだったんだ…失敗したなぁ…。

 モンドくん、絶対リア充彼女持ちとか思ってたんだよ? わたし。

 あーあ…もっと早く…半年前、知り合った時点で、こうやってリアル女の子だって、ぶっちゃけてれば良かった…あの時、フラグ立った! とか思ったんだよね…。」


 なんとも残念そうにため息を吐くカナちゃん。

 なんとなく、彼女の気持ちや事情も解ってきた。


 まず、彼女の僕への気持ち…それは、もう好感度的にはMAXに近いと見ていいだろう。

 要するに、押せば落とせる…それくらい。

 

 下世話な言い方だけどチョロイン状態って気がする。

 

 僕だって、人のことは言えない…なんの事情も無ければ、僕は彼女の彼氏になりたい…それが本音。

 正直、この時点でたぶん両思いって奴…なんだろうけど。


 彼女も僕も…お互い一緒に過ごせる残された時間が少ないのだ…だから、踏み込めないでいる。

 彼女もどこか遠慮がちな気がするのは、気のせいじゃないだろう。

 

 まるで糸電話みたい…近づきすぎたら聞こえない…離れ過ぎれば、簡単に切れてしまう。

 それが僕らの関係…そんな風に思った。


 それに…ガンフロが出来なくなると言うのは彼女としては不本意なのは間違いなかった…。


 その事情と言うのも、海外に引っ越すとかそんな所なんじゃないかな…と思いあたった。

 

 VR関連技術については、現状日本がトップ独走状態。

 その為、日本国内限定の技術となっており、他の国ではアメリカくらいでしか実用化されていない。


 現状、日本の独占技術のひとつとして、その関連技術製品については、国外へ一切持ち出しが許されていない。

 VRヘッドセットについても、実は個人所有は許されておらず、レンタル扱いとなっているのだ。


 譲渡や貸与も出来ないし、分解なども禁止、海外持ち出しも不可。

 …レンタル自体も、実は結構厳密な審査があって、犯罪や補導歴なんかあったり、外国籍の人とかだとこの審査の時点で蹴られたりするらしい。

 

 紛失したと称して、闇オークションに流そうとした奴は、国家機密情報保護法違反で検挙されたと言う話も聞いた。

 そんな最先端技術を投入してやってることが、ネットゲームと言うのがこの国のおかしな所なのだけど。


 おかげで、所謂中華BOTだのRMT目当ての業者とかは、全然いない。

 不正アクセスなんかも、そもそも海外からのアクセスを一切シャットアウトしたサーバーを使っているらしいし、恐ろしく高度なセキュリティを使っているので、データ改ざんとか個人情報漏洩も聞いたことすら無い。

  

 いずれにせよ…インターネット自体は世界中で接続出来ても、VRヘッドセットを持ち出せないのでは、海外からだとどうにもならない。

 

 …そうなると彼女との付き合いは、その海外へ旅立つ日までと言うことか…。

 ホント、いい娘なんだけどなぁ…思わず、こっちも深々とため息を吐いてしまう。

そんな訳で以降、赤マフさんはもう出番なしです。


カナちゃんとモンドくんのお付き合いの始まりです。

やっと恋愛モノっぽくなってきました。


ハーレムタグや学園タグの意味は? とか思われてるでしょうけど、それはもうちと先。


勢いでMF新人賞も応募してみることにしたので、ここらでペースアップw

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