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第四話「英雄の旅立ち」①

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第四話「英雄の旅立ち」①

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11月25日


「赤マフさん、引退セレモニー」


 それはちょっとした一大イベントになってしまった。


 知り合いの大手ギルド運営者に赤マフさんの引退の件について持ちかけたら、せっかくだから他のギルドにも声掛けして、タウンマップでの自主イベントって事で、大勢で盛大に見送ろうという話になった。


 さて、ギルドについてなんだけど。

 その説明するを前にまずチームの説明をした方がきっと解りやすいだろう。

 

 チームは最大8人までの戦闘部隊の基本単位って感じで…要するに永続パーティのようなものと言えば解るだろうか?

 

 ログインしたら、すでにパーティの一員として扱われるので、勧誘だの面倒なことは一切いらない。

 他のメンバーがすでに対戦中だったとしても、増援という形で乱入できたりもする。

 

 チーム内だけの内緒話用のチームチャットとか、チームハウスとか共有倉庫とか他のゲームで言うギルド的な機能もあるし、チーム単位での装備品なんかも色々ある。

 このゲームを楽しむにあたって、仲間とチームを組むのは基本とも言える。


 このゲーム、役割分担とか仲間との連携が重要なので、野良パーティとかホントギャンブル…変なのと組むと本当に後ろから撃たれる。

 なので、こんな感じで固定メンバーでチームを組む事が推奨されていて、大半の人が何らかのチームに所属している。

 

 他にもインスタントパーティって機能もあって、これは臨時チームって感じで、誰とでも組めるようになっている…他のチーム所属の人やリア友と遊ぶときや野良パーティを組むときなんかに使う。


 ギルドはこのチームを大規模化したようなものなのだけど、多くて10人程度のチームとは規模がまるで違う。

 最低20人で編成可能なのだけど…大手ともなると軽く百人単位にはなる。

 

 本来は、中隊だの大隊だの軍事用語が公式での説明なんだけど、規模によって名称が変わり、非常にややこしかった。

 なので、他のゲーム準拠って事で、プレイヤー間ではもうすっかりギルドで通ってるし、運営も諦めたようで最近はギルドと堂々とアナウンスしてる…僕らの勝ち。


 専用のギルドVRフィールドなんかが用意されてて、アジトみたいなのがあって、大容量の共有倉庫とかあったりもするし、ギルド同士の大規模対抗戦…ギルド戦なんてのもある。


 ただし、ギルド戦については助っ人枠があるので、ギルド所属してない僕らのような野良チームなんかも参戦可能で、実際、時々お呼ばれされて助っ人参戦している。


 最大250人 VS 250人と言った大人数による大規模マップでの大規模戦闘は、このゲームの醍醐味のひとつでもあった。


 ちなみに、その大手ギルド…「グランドフォース」とは、ギルド戦の助っ人で何度も手伝っている関係で、ギルド長の乱童氏とは割と親しい仲だった。

 それに乱童氏もオープン当初からの知り合いの一人ということで、赤マフさんの事もよく知っていた。


「いやはや…赤マフさん…ドラゴン落としの英雄さんもいよいよ引退か…オープン組がまた一人去って…なんとも寂しくなるね。」


 そう言って、遠い目をする乱童氏。

 彼はついさきほど、会場の隅っこにいた僕を見つけて話しかけてきたところだった。


 彼のアバターもちっこい子供アバター。

 

 実は、例の鬼畜仕様キャラメイクの被害者のひとりなのだけど、他のプレイヤーがサブキャラ作ってそっちをメインにしたりする中、それなりに愛着が湧いたとかでこの姿のまま…。

 中の人、ショタお姉疑惑なんてのもあるんだけど、正直良くわからない。


 子供キャラは、小柄だから敏捷性とか高いし、投影面積も少ないから回避や隠蔽なんかは優秀。

 ただ、とにかく非力なんで、CQCは弱いし、装備制限も結構キツくて、重たいのも使えなくもないのだけど、取り柄である敏捷性が落ちてしまうので、あまり使えない。

 兵種も向き不向きがはっきりしていて、向いてるのはスカウト系かメディック系と言った所。


 好き好んで使うってのはオープン時の罠にハマって、そのままやり込み過ぎて引き返せなくなった連中とか、ロリコン属性の奴が好き好んでロリっ子使うとか…まぁ、そんな感じ。


 ちなみに、「ドラゴン落とし」ってのは、赤マフさん伝説のひとつ。

 

 このゲーム3大運営やらかしイベントのひとつと呼ばれる…とあるイベントでの活躍から付いた非公式な称号。


『ブラックドラゴン迎撃戦! 僕らの癒やし、タウンマップを守り抜け!』


 …その突発イベントのタイトルはこんな感じだった。


 土曜、夜の9時過ぎと言う一番タウンマップが賑わう時間帯に、その平和をかき乱すように、空襲警報と共にブラックドラゴンなんて言う出すゲームを間違えてる感じのレイドボスが突如出現!!


 平和な非武装地帯のオープンフィールドに、そんなもんを告知なしで奇襲攻撃させると言う発想もハチャメチャだけど、その敵もハチャメチャ!!

 

 運営バグったとか言われても文句言えない…まさに暴挙だった!


 おまけに、小型のドラゴンも多数襲来し、もう現場に居た連中は大混乱、一発即死のドラゴンブレスで100人くらいがまとめてデスペナ行きだの、ドスドス歩くだけでバタバタ薙ぎ払われて、やっぱりまとめてデスペナ部屋送り…。

 

 更に、フレンドリーファイア解禁により、パニックを起こした者達による誤射や跳弾の嵐で、平和なはずのタウンマップは、瞬時に阿鼻叫喚地獄絵図って感じになった。


 …一説によると、運営の設定ミスの文字通りのやらかしイベントだった可能性が高いらしいのだけど…。

 運営があとから公式イベントだったと言い張ったので、そう言う事になってる。


 一部のギルドはメンバーをかき集めて、戦列を組んで反撃を試みたみたいだけど、相手はアクロバティックな超高機動で空を舞い。

 スティンガーなどの対空ミサイルが直撃しても、物ともしない空飛ぶ戦車のような文字通りの化物。


 ボイスチャットは悲鳴と怒号でパンク状態、テキストチャットも訳がわからない状態になり、まともに指揮統制するものもおらず、もはや手に負えない大惨事…となりかけていたのだけど。


 そんな状況を覆したのが、バレットM82A2…対空仕様アンチ・マテリアルライフル…の調整でたまたま射爆場に来ていた赤マフさんだった。


 赤マフさんは、こんなパニック映画のような状況の中、冷静に狙撃ポイントを確保すると、距離にして1kmは優に離れていて、航空力学なんぼのもんじゃい的な変態機動を見せつけるドラゴンの目玉を正確に射抜くと言う信じられないスーパーショットを決めた!


 さすがに、その一撃で撃破…とはならなかったのだけど、ブラックドラゴンは片目を失った上にヘッドショットダメージで気絶し、地上へ墜落!


 この一撃がまさに、完全に流れを変えた一撃となった!


 更に騒ぎを聞きつけたSランクプレイヤーや、戦車やら装甲車やら、戦闘ヘリ…やられると痛すぎるせいで、あまり出番の無い重量級チーム装備を持った連中が続々と増援として到着。

 

 おまけに、ブラックドラゴン墜落後、好機と見た有志達がRPG7やらカールグスタフやらの対戦車兵器による集中砲火を仕掛け、翼をやられ…ブラックドラゴンは飛行能力を失った!


 かくして、ブラックドラゴンは空飛ぶ重戦車から、鈍くさくて的が大きい重戦車へ格下げ!

 その後はもう、フルボッコタイムって感じで、それなりの時間はかかったものの撃退に成功した!

 …と言うのが、この突発レイド戦イベントのおおよその経緯だった。


 ちなみに、僕はその時、何してたかと言うと…。

 まぁ、ちょうどタウンマップには、いたんだけど…初撃のドラゴンブレスで即死。

 その後もその他大勢って感じで訳も解らないまま、デスペナオンライン状態になってたんだけど。


 何度めかのデスペナ戻りの場所がたまたま赤マフさんの直ぐ側だった!

 しかも、赤マフさんは、小型ドラゴンに囲まれ、弾切れで足を負傷し動けなくなっていた!


 状況もよく解らないまま、とにかく彼がピンチなのは解ったので、すかさず乱入して、小型ドラゴンを迎撃!

 赤マフさんへ弾をありったけ手渡して、赤マフさんが弾幕張ってくれてる隙に彼の負傷してた足を治療。

 

 さらにステアーを撃ちまくって、弾幕を張りつつ囮となることで、赤マフさんをその場から逃がすことに成功したものの、三匹くらいにまとめて襲われて敢え無く討ち死に。


 けれども、赤マフさんはその時の事をちゃんと覚えてくれていて、レイドボス戦終了後にぼんやり座り込んでた所で再会。

 それをきっかけに、すっかりその場で意気投合して仲良くなってしまった。


 ついでに、ギルドにもチームにも所属してないソロ専って話をされたので、だったらうちに来ない? って話になって…今に至る。

 

 Sクラスプレイヤーなんて、はっきり言って住んでる世界が違うから、向こうからすれば僕らみたいなCクラスチームの連中なんて、お荷物以外の何物でもないのだけど…。

 

 赤マフさんは「ウォーキーガンナーズ」入りを快諾してくれた…それも、ものすごく嬉しそうに。


 その時の事をカナちゃんの姿で懐かしそうに話してくれたんだけど。


 彼女から見た僕は、負傷し動けない上に弾切れで、刀折れ矢尽きの絶体絶命のピンチを救ってくれて、身代わりに散っていったなんともカッコ良すぎる感じで…。

 

 彼女いわく「なんか乙女心にキュンと来ちゃった」…と言う事らしかった。


 それって、一目惚れ…とか「フラグが立った」って奴なんじゃないかって、思わなくもなかったけど。

 敢えて、その辺は追求しないことにした。


 正直言うと、僕は彼女に惹かれていた…何よりこの半年間、お互いを相棒として戦場の苦楽を共にしていたのだ。

 今までは見た目がむせる感じの渋兄ちゃんだったから、色々リアルの人物像の想像くらいはしてたんだけど、あまりそんな気は起きなかった。

 

 けど、そんな相棒の正体がリアルの女の子だと聞かされ、リアルの名前とか色々知ってしまって、可愛い女の子の姿で目の前に現れてしまうと…意識しない方が無理だった。


 けど…あまり踏み込むわけにもいかなかった。

 彼女との別れの日は確実に訪れるのだから。


 けど…例えば、初心者だった彼女と最初に会ったのが僕だったら…。

 もしそうだったら、どうなっていたのかな…?


 そんな風に色々と考えてしまう…まぁ、僕もストイックを気取ってるだけで、所詮男の子って事だ。


ストックが結構たまったので、ガンガン行きます!

くろがねのときに比べて、いまいちPV伸びてない…。

やっぱり、異世界転生しないと駄目なのかねぇ…良く解かんないっす。

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