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閑話:カリスタ=メイスフィールドの独白

長らく放置してすいませんでした。

息子病気発覚→通院・手術→完治→ほっとして体調崩す→過労と診断→まだ治ってない、って感じです。

こんなグダグダ進行ですが、また暇をみつけて少しずつ投稿していきますので、よろしくお願いします。

 わたくしに新しい友人ができました。

 彼女の名前はアリサ=ウォルブライト。王都で人気を博している商店の長女、そして教会がこれ以上の逸材はいないと太鼓判をおして推薦したらしい、王立アカデミーの新入生。

 すっとした立ち姿に、愛らしい笑顔がよく似合う少女です。

 わたくしと同じ12歳のはずですが、「とても物事の道理をよく弁えた少女」なので、王太子であるジェレマイア殿下やそのご友人たちからの秋波も簡単にあしらってしまいます。

 王太子に気に入られた……なんてことがあれば、天狗になってその寵を利用して悪事を犯しても仕方ないと思いますが、彼女には一切そのようなそぶりは見られず、むしろわたくしと王太子の仲を取り持ってくれるとおっしゃってくださいました。


 恥ずかしいことですが、わたくしは王太子の婚約者でありながら、王太子にとても嫌われております。

 彼にとって私は、あれこれと小うるさいことを言う女でしかないようです。

 私に望まれているのは、王太子にとって都合のいい女ではなく、より良い施政者となるべく、彼をお助けするパートナーであること。それ故に、王太子がその地位にふさわしくない行いをしたときには、道を正すことが求められております。

 しかし未だ12歳でしかない王太子にとって、私はただの小言屋でしかなく、周囲の思惑などは気にしておられない様子。

 こんなことではいけないと、さらにあれこれと煩く言って、ますます嫌われてしまうという悪循環に陥っておりました。


 そこへ現れたアリサ嬢は、王太子をたぶらかし王道を乱す原因になるのではないかと、一時は危惧いたしました。

 王立アカデミーができてから、いわゆる「庶民」と恋に落ち、それまでに決められていた婚約を解消してしまった王族・貴族が何人かおられました。

 どの件についても事情は秘密裡に処理されてきたため、あまり広く知られていることではございませんが、なぜかいつも恋に落ちるのは、貴族や王族の「男性」と庶民の「女性」なのです。

 ゆえに近年では庶民の「女性」を王立アカデミーに入学させることは大変稀なこととなっておりましたが、その暗黙の了解を覆すほどの優秀な人材であることから特別に入学を認められた少女。それがアリサでした。

 わたくしはその様な事情から、アリサのことをあらかじめ聞かされておりました。

 王太子が万が一にもわたくしとの婚約を破棄し、「庶民の女性」であるところのアリサと恋に落ち、わたくしとの婚約を破棄することがあったら、王家の直系男子がジェレマイア様しかおられない今、政治的混乱は避けられない事態となります。

 そのような事情があったため、わたくしは入学する前にアリサについて色々と知ることとなりました。


 彼女の実家である商店はごく普通の、どこにでもある雑貨店だったそうです。

 数年前までウォルブライト商店で洋服は取り扱ってなかったそうですが、今一番人気のある商品が「既製服」。

 今までは洋服といえば、オーダーメイドか中古品しかございませんでした。かの商店ではいくつかの「サイズ」を準備して、新品の服を販売しているそうです。

 オーダーメイドでは1つの型紙で1つしか服を作らないため、大変コストがかさむのですが、同じ型紙で大量に同じ服を作るのであれば、コストが抑えられ1着あたりの価格が安くなるのだとか。

 どうせどちらを買っても完全に体にぴったりするわけではないので、今まで中古品を買っていた方々は、挙ってウォルブライト商店の洋服を購入しているのだとか。すぐに傷んで使えなくなってしまう中古品よりも、新しくて長持ちする「既製服」のほうが長い目でみると結局は安くなるということなのだそうです。

 そして「既製服」の発売は、アリサの発案であるという噂。

 噂が本当なのかどうなのかはわかりませんが、アリサが商店に出入りするようになってから「既製服」が店頭に置かれるようになったのは事実のようで、噂の信憑性を高めております。

 私はそんな話を聞いておりましたので、アリサ=ウォルブライトなる娘は、さぞ計算高い少女なのであろうと思っておりました。


 そして入学してしばらくした頃、ジェレマイア様が同じアカデミーの学生である「庶民の娘」と常に一緒に行動をしているらしいとの話が、わたくしのもとに参りました。

 今の王立アカデミーには、庶民の娘はアリサしかおりません。

 わたくしは大きな問題に発展する前にと、アリサを囲むジェレマイア様とテレンス様、ザカライア様の前に立ちました。

 なんとか彼女をジェレマイア様から引き離したいと思えど、なんと言えばよいのか悩んでいたときに、彼女が言った


「こちらの方々に、私のような庶民に関わると評判に差し障りますし、私自身も男をはべらせて喜ぶような女に見える、とお伝え願えないでしょうか?」


という言葉には、大変驚かされました。

 過去、アカデミーで王族・貴族に気に入られた庶民の娘は、その寵を利用して婚約者たちを蹴落としていったと聞いておりましたが、アリサはむしろその寵を厭っているようでした。

 実際よく観察してみれば、アリサは大変迷惑そうな顔をしておりましたし、本当に嫌だったのでしょうね。

 それだけではありません、彼女はなぜか私と二人で話をしたいと私を連れ出し


「メイスフィールド様?誤解なさってはいけませんよ。王太子様は庶民が珍しくて、新しいおもちゃを見つけたようなものなのです。」


と言うではありませんか。

 いくら身分は関係ないという建前のアカデミーであっても、王太子であるジェレマイア様が言えば、たいていの人間はそれを聞き入れます。

 そして女性であれば、わたくしという婚約者がいるので、正妃という立場は無理でも側室という立場くらいは狙ってもおかしくはありません。

 この国の王族と貴族は多数の妻を持つことを許されておりますから、アリサでなくともわたくしたちと同じ学年で入学した女生徒のうち婚約者のいないものは、少なからず王太子側室という立場を意識していると思います。

 ですから、彼女が


「そりゃまぁ、立場とか考えたら……ねぇ?」


と、今の自分の状況を喜んでいないのを聞いた時には、思わず声を上げて笑ってしまいました。

 本当にジェレマイア様には興味がないのだと感じる反面、ジェレマイア様が彼女の傍にいるのは完全にご自分の意思でやっておられることなのだと、思い知らされました。

 私がいくらお慕いしたところで、ジェレマイア様の気持ちが他を向いているようでは、わたくしにはどうしようもありません。

 何しろ、わたくしはジェレマイア様に疎まれているのですから……

 しかし、彼女は



「それでしたら、今度から私があの方たちに絡まれそうなときに、傍に来てくださいませんか?できれば、他のお二人の婚約者様も一緒に!」


と言い、お互いに距離があるから理解しあえないのだと言います。

 わたくしは王太子様をお慕いしておりますが、結婚したとしても愛のない生活になるだろうと覚悟しておりました。が、アリサは違うと考えているようです。

 そして、私たちの仲を取り持ちたいとまで言ってくれました。

 どうして彼女がここまで言ってくれるかはわかりません。

 ひょっとしたら、私から反感を買わないように演技をしているのかもしれませんが、なぜか彼女にはそんな打算を感じさせませんでした。


 騙されているのかもしれませんが、私は彼女を信じてみたいと思います。

王立アカデミーで何度も「庶民の娘」が王族やら貴族やらと恋仲になるのは、このゲームがシリーズものだからです。

過去の攻略対象だった王族やら貴族はゲームではそんなところは描かれないのでハッピーエンドってことになってますが、物語のあとに廃嫡になってたり、「庶民の娘」と引き離されて修道院に突っ込まれてたりします。

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