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2.図書室には出会いがある

 アリサは朝から今までのことを、思い返していた。


 完璧に攻略対象をスルーすべく、シミュレーションを重ねて出会いイベントの回避対策はバッチリであった。

 校門を入ってすぐに出会う王太子とは、アカデミーに登校するタイミングをずらして、なおかつ衝突ポイントからずれた位置取りをしたので、ニアミスはしたもののぶつからずに済んだ。

 式場に入って出会う宰相子息とは、ゲームのように座席を間違えなければ、学年が違うので顔を見る事すらない。

 入学式後に出口でぶつかる騎士団長子息とは、これまた座席を間違わないでいれば退場のタイミングが違うので問題なし。

 式後のオリエンテーリングで出会う侯爵子息の教師とは、顔をあわせることはしても教員の指示通りにしていればイベントはおきなかった。

 つまり、出会いイベントは全て無視したはずなのだ。

 にも関わらず、なぜこの4人は私の前に揃って立っている?


 少し時間を巻き戻そう。


 イベントフラグを全てスルーして、オリエンテーリングも無事に終わり、今日は午前だけで下校する予定だったけれど、念には念を入れて、出会いイベントから下校までのイベントもスルーすべく、図書室へと足を運んだわけです。

 学園ものの乙女ゲーのくせに、なぜか図書室がらみのイベントが終盤まで一切出てこないのだから、図書室はある種聖域だと考えていた、そんな頃もありました。

 王立アカデミーの図書室は「室」とついてはいるものの、下手な図書館よりも蔵書数は多く、古今東西ありとあらゆる書籍を集めていて、卒業者はもちろん、外部の著名な研究者から閲覧希望の申し出があったりするほど。

 研究書からハウトゥ本、一般向けの読み物、果ては娯楽小説や絵本に至るまで、公序良俗を損なわないものであればなんでもあるらしい。

 活字中毒の気がある私としては、在学中はイベント回避も視野に入れて図書室に入り浸るつもりでいました。

 ところが、その図書室で攻略対象の教師と出会ってしまったわけです。


「君は今日入学してきた……」

「アリサ=ウォルブライトと申します。」


 内心は超絶焦って挙動不審になりかけたけど、なんとか落ち着いて名乗ることができた。


「そうそう、ウォルブライト君だったね。君の管区の神父様から直々に僕に挨拶に来てくれてね。オリエンテーションの時にでも話ができたらと思っていたんだが、図書室に来て正解だったようだね。」


 うぉおおい、神父様、余計なことすんな!

 無駄に爽やかでキラッキラした笑顔で言ってくれてますが、私はあなたと接触を持たないようにしてたんです、ほんとごめんなさい。


「神父様の話によると、君はたいそう優秀なようだね。僕は君が学年首位をとるんじゃないかと予想しているんだよ♪」


 なんだよなんだよ、私はさらさら目立つつもりなんざないんだよ、テキトウに学年上位に食い込んで「そこそこ優秀」な成績で卒業するつもりなんだよ、首位なんか取ってみろよ、負けず嫌いの王太子様が出てきて……


「何やら聞き捨てならない話が聞こえたようですが、アディンセル先生?」


 デターーーーーーーー!


「おや、ジェリーにザックじゃないですか」


 しかもお二人様ご到着ーーーーーーー!!


「さみしいなぁ、いつもみたいにアル兄様と呼んでくれたらいいのにぃ」

「家名を呼ぶわけにはいかないだろうから、ジェレマイアと呼ぶようにとお願いしたじゃないか!」

「そうですよ、アディンセル先生。オレだってザックじゃなくて、ザカライアか、家名のガターリッジって呼ぶって!!」


 図書室に響く大きな声で王太子たちがわめいているとさらに……


「こらこら、二人とも大きな声で騒がない!アル兄様が困ってるじゃないか」


さらに、お一人様追加ですーーーーーーーー!!!


「そうだよ、テッドからも言ってくれないか?」


 ん?

 なんかこの人たち仲良さそう?

 私の知ってる設定とは、何か違う気がするぞ。


 ちょっとおさらいしてみよう。


 ジェリーとは王太子のこと。

 ジェレマイア=セル=ブリーロウム、言うまでもなくこの国の次期国王で、性格は負けず嫌い、やや天然なところもあるが、ついつい手を貸してあげたくなる、みんなの弟キャラ。

 ヒロインとは首位争いを通じて、ライバル→気になる存在→恋心とステップアップしていき、カップル成立するとヒロインを王妃として迎えると国中に宣言してゲームが終わる。

 長くもなく短くもない自然な長さに整えられた蜂蜜のような金髪に、透き通った青い瞳の、絵に描いたような王子様面で、今のところは私とあまり身長は変わらないけど、将来は結構育ちそうだな。


 ザックは騎士団長子息で、ザカライア=ガターリッジがフルネーム。性格は豪放磊落、やや脳筋系だけど、空気は読めるタイプ。

 実家は三代前に戦争で名を挙げた騎士の家系で、その後も戦の度に功績をあげ、歴史は浅いが侯爵家の嫡男。

 本人の脳力も高いことから将来は王太子の剣として騎士団長になる予定、王太子の側近候補その1。

 いつも鍛錬を怠らず努力をしているところに、ヒロインが差し入れを持って来たり、スランプのときに励ましたりして、いつしか恋心が芽生えてカップル成立。

 ザックとのエンディングは、騎士の妻として夫を支えていきます!みたいな感じで終わったんだったな。

 短く刈り込んだ燃えるような赤い髪に、少したれ目だけど意志の強そうなアンバーブラウンの瞳、いつもニコニコ笑顔で、すでにかなり背は高いがまだまだ伸びて、筋肉はこれから付くんだろうな。

 まだ少年の域を出ていないけれど、将来はさぞかし雄々しく逞しくなることだろう。


 テレンス=ソーンダーズ、愛称テッド。

 性格は常に何手も先を読んで行動する策略家タイプ。

 実家は代々宰相を排出する公爵家として有名で、本人も将来は王太子の盾として宰相になる予定、王太子の側近候補その2。

 一つ年上で、ヒロインたちの先輩にあたる。

 ヒロインのドジっ子属性を拾いまくって、自分がいないとダメだ→守ってあげなきゃとなり、カップル成立。

 テッドの家は子供に厳しいので、反面教師的に穏やかで優しい空気に溢れた家を築いていこう……的なエンディングを迎えます。

 プラチナブロンドっていうのかな、長く伸ばして後ろで軽くしばったつややかな銀色の髪に、少しきついイメージの瞳はグリーン。

 すでに背は高く、今の時点で私より頭一つは高いけれど、あまり肉付きはよくないのかしなやかに細い体躯は、それでいてなかなかバランスのいい体型をしている。


 アラステア=アディンセルはアカデミーの先生だけど、実は国の法曹関係を担っている侯爵家の嫡男。

 ゲームの設定ではミステリアスなキャラだったけど、今の所はなかなか優しそうなみんなのお兄さんタイプ。

 ゲーム終了時、つまりヒロインが誰かと結ばれたときに実家の話が出てきて、先生とヒロインがカップル成立するとそのまま先生としてアカデミーに残り、他の誰かとカップル成立すると実家の後を継ぐんだったかな。

 黒髪短髪に黒い瞳と、日本人的な色合いながらも顔のつくりはコーカソイド系。

 体格は中肉中背といったところだけど、上半身はきれいな逆三角形に、引き締まったウエストからお尻、きっとトラウザーズの中のおみ足も引き締まったきれいな足だと思う。


 ゲームではジェリー・ザック・テッドの三人はなんだかんだライバル関係だけど、心の中ではつながっている心友っぽい感じで、アディンセル先生とはあまり接点がなかったはず。

 とういうか、ゲーム内で三人と先生の繋がりが見えるようなシチュエーションは皆無だった。

 ……やばい、ゲーム知識と違うところが他にも結構たくさんあるんじゃないだろうか。


 そんなことよりも、だ。

 なぜうまく出会いイベントを全回避したはずなのに、全員と出会っちゃってんだよ!

2016/7/6 加筆訂正

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