プロローグ
ある朝目覚めたら異世界に転移してた……なんて小説があちこちにある。
自他ともに認めるオタクである私が、そういう小説を読んでいないはずもなく、書店に並んでいるものからWEB小説まで、幅広くいろんなものを読んだ。
特に乙女ゲーの世界に悪役令嬢として生まれ変わる、なんてのは大好物だった。
もし願いがかなうのであれば、私も悪役令嬢に生まれ変わってヒロインざまぁ!としたかった口である。
だいたいが、ヒロインが恋愛を成就したところで、その後の生活を考えてみたら、どうなるかなんてお察しなのである。
王太子に愛される庶民ヒロイン、その後絶対立場的に大変な目にあって、よくて鬱、下手したら鬱こじらせて自殺ルートでしょ。
ありえんくらい金持ちの跡取り息子に愛される庶民ヒロイン、そんなもん家に入れるようなご家庭はせいぜい成金だけだ。価値観が違い過ぎて、結婚するまでもつとは思えない。こっちもうまく結婚式までいっても、鬱ルートだな。
世の中そんなに甘くないのである。
なのにそういった乙女ゲーがあるのは、所詮はフィクションだからである。後の世界を描写する必要もなく、結ばれたところでめでたしめでたしで終わるのだから、きれいにまとめておしまい。
それなのにだ……
昨晩、間違いなく自分のベッドに入ったんです。
ちょっと親が奮発してくれた-15万ほどしたらしい-とても寝心地のいい、お気に入りのベッド。
女の子らしくないといわれても、ブラックウォッチのテキスタイルで統一したベッドリネンは、肌触り重視のダブルガーゼで自作したものだ。
パジャマだって、自分でオーダーして作った生地で作った一品ものだった。学生には少々手痛い出費だったが、1mで3460円だったらブランド物のテキスタイルよりは安い。
ギリギリの要尺でプリント発注したから、失敗は許されない戦いだったけど、私は見事作り上げたんだよ!
私は寝ることに全精力をかけて生きているのだ、妥協は許さない。
そんな私の睡眠ライフに、なぜこんなことがおきた?
ベッドは変に固い、シーツもベッドカバーもなんかごわごわしてる、寝間着はそれなりに柔らかくて気持ちいい生地だけど、パジャマじゃなくてネグリジェ。
あと私の知ってる天井じゃない。
ここはどこなんでしょうか?