道のりは遠く
「随分遠くまで来たな。あのビルがあんなに小さく。」
カイル、アトリア、エルナトは林道を行く。
「もうすぐです、目の前の建物ですよ。」
エルナトは楽しそうにスキップする。
巨木。ツリーハウスから階段が延びている。
が、かなり長い。
「ここです。ここがキド様の研究所です!」
「キド…様?」
アトリアはエルナトに問う。
「はい、私の【魔具】を作っていただいたんです。彼にはとても感謝しています。さぁ、入りましょう!」
エルナトが元気に言っている間に、人が一人降りてくる。
若い男。眼鏡をかけ、黒いシャツにズボン。無表情で、肌は白い方である。
男はカイル達の方へ降りると、エルナトに挨拶する。
「久しぶりですねエルナトさん。キド博士に御用ですか。」
「はい、Dr。すれ違いですか。」
男は、ええ。と、言うとカイルを向く。
「君、名前は。」
「カイルです。」
答えると男は表情を変えず言う。
「君がカイル君ですか。噂はかねがね。私は、カノープスと言います。次会うときは、是非ともあの魔法について話を聞きたいものです。」
そう言うと男は去っていった。
一年前。
「あぁぁぁっ!!」
焼けつくような痛み。
それにカイルは悩まされる。
「ダメだカイル。強いドラゴンを得るには、これしか無い。本の呪文を読み続けろ。基礎の体はできている。後は精神、それだけだ。」
契約の呪文。ドラゴンを呼び出す方法の一つ。
過酷だが、詠唱中の痛みに耐えれば契約が成立するのだ。カイルは三体目、ダイモスと契約せんとする。
現代。
「来たか。」
魔法士が笑う。
階段を上り、会いに来る者に。
「カペラさん、来たよ。あなたの弟子が。
自分なりに、教えるという行為を。頑張ってみます。」
椅子から立ち上がり深呼吸。
「今こそ、【魔力剣】の伝授を。」