仕組まれたポジション
二年前。
「っ…ぐぅ…!」
どこかの城で、王座に血と共に倒れる魔法士。
剣を突き立てられ、苦しそうに敵を見る。
「さぁ…!吐きなさい、彼らは何処にいるの!
私は会う必要があるわ!」
焦った様子で白い魔女が問う。
「く、それを聞いてどうするつもりだ…?君には必要ないと思うが…」
そういった魔法士に二本目の剣が突き刺さる。
「ここであなたが死ねば、目的は果たせないわよ。何もしていない私を大罪人扱いして、これだけ追い詰めて。しかも、かなりの人数に記憶改竄の魔法をかけたわね、大虐殺をしたですって?全く、あなたって人は…」
カペラはどこか知人を相手にするように話す。
「まぁ…奴等の居場所は伝えよう…。」
王は笑う。
現在
歪んだ景色の終着点は、見たことの無い部屋の中だった。
「おう、カイル。もう安全だ。ここは俺の泊まってる宿屋だ。アイツらは長く同じ場所に留まってると協会に追っ掛けられる。短時間で仕事場を変えるからな。」
「いや、質問が沢山あって何から…。」
スハイルは何か荷物を整理していた。
「さっきのア、アヌト…」
「アヌトゥパーダ。時渡りのドラゴンが機械に宿ったからそういう呼び名なの。」
カイルの質問に手早く答える。
「なんでここに?」
「休暇だよ、二年休みもらった。」
なんて長い休みだ…。と、カイルは思いながら一番聞きたい事を投げ掛ける。
「アイツらは、竜人の集まりは、なんなんだ?」
「【掩蔽団】か?あぁ、最近動き始めたな。」
スハイルはさらっと言うが、カイルはさらに問う。
「な、なんだそれ…師匠と繋がってるのは本当なのか?」
「あぁ、カペラさんと?そうだろうよ。詳しくは知らねェが、アイツらは星の一族に仕えてるからな。カペラさんの意思で動いてるんじゃないか?星の血は今のところあの人だけみたいだし。ま、とにかくお前は先に強くなれ。あの竜人擬き魔法の弱点が緩和されれば、俺と組む事でアイツらに勝てる。」
スハイルはカイルに向いて言った。
「え?…」
カイルは首を傾げた。
「俺がお前の旅に同行する。って事だ。そこの子との用事終わらせたら俺に言え。ついてく。」
スハイルはニヤリとして言った。
「あ、エルナト…!大丈夫だった!?」
思い出したようにカイルはエルナトを探す。
「あの子はもう宿屋に帰した。お前のお目覚めが凄まじく遅かったんでな。」
カイルが窓を見ると、日が沈んで行っているのがわかった。
「カイル、これだけは言える。」
スハイルは続ける。
「カペラさんは何かヤバい事をしそうだ。それでいて、囚われてるように感じる。」
軽く挨拶をして、カイルはその言葉が引っかかったままスハイルと別れる。
「アンタ…あの無駄乳女だけでは飽き足らず、国を背負うお姫様まで毒牙に!」
自分の宿泊先に戻ったカイルを待っていたのは申し訳なさそうに座るエルナトと何か誤解をしている幼馴染み、アトリアだった。
「あのー、アトリアさん?俺の無害さはあなたとの二年間の共同生活で証明されていると思うんですが…?」
カイルは苦笑いで無実を主張する。
「それとこれとは別よ!私が目を離すとすぐに他の女の子に声かけて…!」
私はいつでも待っているのに。と呟いた言葉はカイルには届かず、カイルは無罪の主張を続ける。
「仕事で同行せざるを得ないんだけど…それよりどうしてここに?」
「当たり前でしょ、バカイルについてけってミザールさんに言われたの。今ごろミアちゃんとベタベタしてるんでしょ。」
アトリアは腕を組んで言った。
「そうか…。」
カイルはアトリアの肩に手を置く。
「んじゃあ、今回はよろしくなアトリア!」
「あ、当たり前でしょうが!近いのよバカ!」
アトリアがカイルを突き飛ばす。
新たな旅は賑やかになりそうである。
To be continued