台風が入れ替わって
継雷竜
カイルが契約したドラゴン。
雷を使う若年のドラゴンであり、竜としての日が浅いのもあり、人へと頻繁に姿を変える癖がある。
性格はカイルのドラゴン一明るい。
「『…おおおぉぉぉぉおおおぉ!!!』」
【交竜龍依】したカイルの雄叫びで地と空は震る。
不純物の無い海のような蒼と翠の中間の身体、金色の大きな肩、爪、そこから腕へと走る同じ色の線。
下顎に金のドラゴンの顎の鎧が付き、
そして尾。カイルからは風と雷が溢れる。
「『カイル君、何をしたかは知らないけどその姿は私達にかなり近いわね…!ゾクゾクするわぁ。』」
アプラはそう言いながら手を振りかざす。
刺のような氷が地から生み出される。
「『見たことの無い魔法だからって様子見か?アプラ、本気を出せよ。脆すぎるぜ。』」
カイルは氷を真っ直ぐに素早く拳で殴ると、いとも簡単に氷は砕けアプラへ飛び散る。
「『…っ!あらあら怖い怖い。』」
笑いながらアプラは身体を後ろへ大きく反らす。
九十度に曲がったアプラの腹の上を氷の礫より先に雷球が通過して行き、そのまま後ろの木を粉々にする。
そして反撃しようとしてエルナトに飛ばしたアプラの氷の球も、カイルは砕いて見せる。
「すごい…!これがカイル様のドラゴンの力!」
「『これ程なんて、すごいわぁカイル君。本気、出さなきゃねぇ。』」
その言葉をアプラが言い終わる前にカイルは襲い掛かる。
周りに氷を生成している様子は無いのに、アプラは笑う。
「『んー…でも、丁度時間なのよねぇ。今日は有名な魔法士様と会食なの~、カイル君ごめ~んね?』」
カイルの拳がアプラに当たる瞬間、カイルの目の前に氷の柱が現れる。
拳は柱の芯を捉えたが、ヒビ一つ入らない。
「『くっ、逃がすかよ…!おぉぁぁ!』」
もう一度。今度は全力の攻撃で柱に当たったあと風と電気が周りに散る。
大きなヒビが入ったが、割ることは叶わなかった。
「『んじゃぁ、バイバ~イ☆またやろーねっ!今度は制 限 時 間 、延ばしてきてね~。』」
「『待てッ!』」
アプラの一言に少し驚いた後、カイルは三度目の拳をぶつける。
柱は割れ、バラバラと氷が降り注ぐ。
しかし、アプラの姿はどこにもなかった。
「『ぐっ…!』」
日に当たり、宝石のような氷が降り終わるか終わらない内にカイルは身体を硬直させた。
「カイル様?」
エルナトがカイルに駆け寄る。
カイルから突風が起きた。エルナトが自分のスカートを抑えてからカイルを見ると、ドラゴンに近しい姿から、元の服装へと戻っていた。
そして、カイルが膝を着く。
「大丈夫ですか!?カイル様!」
「あ、あぁ…大丈夫。この魔法、制限時間があるんだ。見破られてたか…さすが召喚士。でも、追っ払えて良かった。」
カイルは立ち上がりながら言った。
「そうですか、ならお疲れでしょう。少し動かないでください。」
そう言うと、エルナトは息を吸う。
歌。
エルナトは歌う。安らかな声で、落ち着いて、安らぎの旋律を。
ふと、カイルは自身の身体から魔力が満ちるのを感じた。
エルナトは歌を止めると、微笑む。
「す、すごい。使った魔力が元通りだ…。」
「良かったです、私の歌は聞くもの全てに効果がありますから。召喚士がいるあの場所では、使えなかったですが、癒しの効力があります。戦闘ではお力になれませんが、後にはお力添えできるはずです。」
「ありがとう、心強いよ。さて、行こうか。」
二人はすぐそこの樹の国へ、歩き出す。
大地の国、国道。
樹の国へ通じ、カイルとエルナトが歩いていた道を駆ける魔法士が一人。
「ぜぇ…ミザールさんの、鬼…!私も同行しろって、送ってきなさいよ、はぁ…。」
紫と白のツイストが目を引く、フード付のコートに金髪のツインテールを振り乱すカイルの幼馴染み、アトリア。
彼女もまたミザールの命で、樹の国へと足を運ぶ二人へ合流せんとする。
「バカイル、待ってなさいよ…!」
一難去ってまた一難