ぶつかり合う禁忌
用語解説
召喚士 サモナーと読む。この世界に数百いると言われている生物、ドラゴンを2体以上呼び出す事ができる者の事。一体を僕、もう一体を竜依として戦うのが定石。
竜依 (龍依) ドラゴンアームドと読む。竜と人とが心を通わせ、更に自信の才によって使うことが出来る秘技。人に竜の姿を写し強力な力を得る。
ドラゴン 竜、龍と呼ぶこともある。どのようにして発生したかは不明。人が膨大過ぎる魔力に呑まれた時等に人から変異する事例も確認されている。ブレス、強靭な鱗、牙、爪等が攻撃手段。
「【嵐龍!】」
カイルの呼び掛けと共に、翠のドラゴンが姿を現し、カイルは風を纏う。
ファフニールはカイルの頭に顔を合わせる。
実体は無く、風で体を形成されており、腰から下は姿がない。
『ほおカイル、なかなか手強そうな奴と当たったのう…!』
翠の龍はニヤリと笑う。
「あぁ、召喚士ってだけじゃなく何かヤバそうな感じだ。」
カイルは短く返すと、アプラの様子を伺う。
「身っ構えなくていいよ?カイル君が本気出すまえにぃ、殺しちゃうからぁ☆」
アプラは木から降りる。
地に低い姿勢で着地してから、ゆっくりと状態を起こす。
「とりあえず、これで。」
アプラがそう言い終わらない内に、カイルはエルナトを庇いながら集めた風をアプラに向けて飛ばす。しかし、風はアプラの目前で固まり、無造作に落ちる。
凍結。
アプラがカイルの生成した風の球を凍らせたのだ。
「あら、しっぱーい。勘が鋭いよねぇカイル君は。要所要所で活きてきてるよね、今までの戦いで。」
「俺の今までを知っている口ぶりだな、アプラ。」
カイルはそう言ったが、アプラの返答に耳を疑った。
「だってぇ、私カペラさんから聞いたしぃ?てか毎日?この二年間、三週間くらいの短くてつまんない話。」
アプラは苦い顔で言った。
「お前…!師匠と会ってるのか…!」
カイルの表情が鋭く変わっていく。
「えぇ…私はカペラさんの部下よ?」
「あの人はどこにいるんだ!」
アプラにカイルは言葉を被せる。
「まぁ、落ち着きなさいって。あなたは私に勝てないんだから、もうこの話は打ち切り…」
アプラの真横を拳が通る。
カイルの物だ。勿論カイルはアプラにそれを当てるつもりだったが、アプラは自身の手で反らしていた。
「あらあら、短気だねカイル君。」
アプラは今までとは全く違う冷たい声で言った。
そしてカイルは吹っ飛ばされる。
アプラは自分の脚をカイルの胸にぶつけていた。
「ぐっ!」
地面を少し滑り、カイルは姿勢を戻す。
「しっかり死んでもらうわ。これで…!」
服から見えているアプラの肌という肌に、鱗が浮かび上がる。
そして、周りの景色が保存されていく。
氷によって。
白い鱗の走る身体、手の爪は黒ずみ、大きく伸び、目は元々の橙だが人から人ならざる者の瞳へ、頭は青き炎に見えるが、冷気を放って燃え上がっている。氷なんだろうか。そして体躯はカイルより一回りは大きい獣のように。
「そんな!この姿はまるで…」
竜だ。と、エルナトは口を開く。
『ほほぅ…我々に近寄り過ぎたか、それとも自ら望んだか知らんが。九割はドラゴンと言っても過言ではない。ほとんど人間の雰囲気を感じないと思えばこういう事か。』
ファフニールは笑う。
「『そう!私は呪われし竜の家系、それを受け入れた。自身の意思で、力を手に入れた!愚かな魔法士は私を【竜人】と呼ぶわ!』」
アプラは得意気に言った。
「カイル様!」
エルナトは叫ぶ。
「大丈夫だ。」
カイルは落ち着きを取り戻して言う。
「『何が大丈夫なの?竜になるのをビクビクして怖がってるお姉ちゃんとはレベルが違うのよ?どうやって私をこの場から退かせるの…?』」
両手を開きアプラにカイルは言う。
冷気が地を凍え固め、カイルに向かう。
「ミアは、怖がってなんかないよ。お前よりずっと強くて、勇敢だ。勇気を何に取り違えたかは知らないが、お前は誰よりも弱い…!」
そう言うと、息を吸い言い放つ。
「【継雷竜】!」
刹那、カイルのすぐ横に落雷。
冷気を振り払った。
『はいはい!お呼ばれ感謝!リーレイ、推参です!カイルさん、私を呼んだって事はやるんですね!』
グレーの小柄の竜、リーレイは明るく言う。
「『もう一体!?私達の家系と同じく召喚士の素質が…?』」
「そんなんじゃないさ。もっと愚かで、逸脱した事だ。」
アプラの驚きにニヤリと笑い、カイルは言った。
ふと、ファフニールとリーレイの姿が消える。
カイルの身体から風と雷が暴れるように出でる。
そして、カイルの肌に鱗が浮かび上がる。
「『【交竜龍依】…!』」
まったく新しいドラゴンが爆誕する。 ー
To be continued…