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星の魔女 ~2years later~  作者: 羅偽
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Extra 3 シャドウズ

用語解説


魔法士連


魔法士連盟の事


数ある各種エレメントのエキスパートの集まり。

全大陸から招集されている。

すべての国に貢献するための連盟だが、光の魔法士連だけは一部の国にしか貢献していない。


「ノア、それ面白いの?」

「うん!すっごいの!」

火の国で二人は本を見つめる。

「おかあさん!ノアね、おかあさんがいるからさみしくないよ!」

「いきなりどうしたの?」

ノアの言葉にカペラは戸惑う。

「おかあさんはノアだけじゃさみしい?」

「ノアのおバカ。ノアがいるだけで十二分よ。」

「じゅうにぶん?」

「いっぱいのいっぱいって事。」

カペラの言葉に少し考えると、ノアは笑って言う。

「ノアもじゅうにぶん!」

「使い方違うわよ。」

「じゅうにぶんー!いっぱいのいっぱいー!」


ノアの両親は突如として何者かの襲撃を受けて死亡していたのがノアの記憶から明らかになった。

ノアの両親は私の両親と繋がりが深かったようで、何かあったときのアテにしあっていたらしい。

少し経って、教書を読んだりと私との生活にはなれているようだけど、私をおかあさんと呼び、両親をパパ、ママと呼んでいる所を見ると、何が起こったかはわかっているみたいで、なんでこんな幼いのに笑っていられるのかを正直聞きたかった。

聞きたくて聞けなかった時はいつも言った。

いつでも笑っていて頂戴。本を読んだりしていない時はいつでも、と。




数日したある日、

二人が庭で遊ぶ。

白い石の庭を駆け回るノアの姿に、カペラも喜びを感じていた。

そんなとき。

「やはり、生きていたか。好都合だが。」

庭に、異なる者の姿。

「あなたは…?」

「あのときのこわいひと…!」

ノアの表情が変わった。

今までにない、恐怖を写していた。

「あぁやっと会えた。貴方を探していたんです。星の魔女カペラ。貴方は我ら光の魔法士連の狙いですから。」

「光の魔法士連…!?魔法士の集まりがこの子の親を!?」

「えぇ、そうですよ?…別の大陸で餌を調達するときに仲間が全滅とのことで焦りました。でもしっかりカペラの居場所を炙り出せましたから、良かったです。」

白と金のローブの魔法士の言葉にカペラは怒りを隠せない。

「私を見つけるために…わざわざ両親と繋がりのある一族を殺して…逃げた子供を餌に使った…?」

「えぇ…我々の崇高な目的の達成にはあなたというファクターが…」

「黙りなさいっ!!!」

魔法士は肩をすくめた。

「何を怒っているのですか?我々の魔法、技術の成長は世界を変えるというのに…。」

「クソエゴイストの集まり風情が!調子に乗って!許さないわ!」

カペラの体から赤黒い魔力が溢れる。

「良いのですか?貴方は魔法を使うと寿命が減ると聞きましたが。」

「っ!」

ハッとなって我に返る。

カペラは今延命の方法を探索しているが、その間も命は燃えていく。

魔力と命を引き換えにした契約は満了し余った魔力と寿命が渡されたが、ごく僅か。

五年生きられれば良い方であるとか。

更に魔法を使うことで救護装置となっている魔力が減り、死へと近づく。

「はははっ!行きますよっ!」

火球を投げる魔法士。

手をカペラがかざすと、家の方から剣が飛び出しカペラの手に。

火を斬る。

「ほう?…真っ向から受けてその程度ですか。流石ですね。」

「これは…?何故あの火球にこれ程の威力が…。」

「私の専門は《成長》!成長の魔力を通し、炎は燃え盛り、風は嵐に、土は山脈へ、水は海へと変える事が出来るのです…。驚きましたか?」

カペラは魔法士の言葉に笑う。

「実力だけは、他の魔法士連と一緒ね。」

「…他の愚か者共と一緒にしないでもらおう。我々は…!」

魔法士の視線にカペラは気付く。そして走る。

彼の目の先にあるのは、ノア。

浅い日でも、時間は濃く。愛娘にもならんとしているノアに、危険が迫っていた。

「貴方を怒らせ、私を殺すための魔力を使えば…貴方の寿命が減る。星の一族が二人も減って一石二鳥だよ…!」

「最初から、私達が目的で…!」

走り出そうとしたカペラには魔法士が作ったツタが絡まり、動きを封じられる。

「えぇ、そうとも。手段など選びませぬ!」

少し離れた机の上で怯えるノアに、魔法士が手をかざした。

「さようなら。」

「ノアーーーーーーッ!!!」

煙の後に彼女の姿はなかった。

「ンフフフ、ハーッハッハッハハ…。さぁ、どうしますゥ?」

魔法士は怨みが晴らされたような顔で言った。

笑い転げる男に、カペラは動かずこう言った。

「お前…だけは…お前だけは…!お母さんをよごしたアイツみたいなお前は…!殺すッ!」

カペラは怒りをあらわにする。

「えぇ!えぇ!やってください!私を殺してどうぞ!?それが私の…我々の力の拡大に広がるのですからァあァァァ!!」

「お望み通りなぶり殺してやるよッ!外道がぁぁぁぁ!」

怒りで魔法を使おうとしたカペラの肩に、誰かの手が置かれる。

「…?」

「もう、いいから。お母さん。」

最近よく聴いた事のある声だった。

「なッ!?…どうして…!?」

魔法士の言葉を無視し、その声は続ける。

「お母さんは…そこにいて。」

「ノア…?」

ノアが、そこにいた。

三歳くらいの姿ではない。

カペラと同じかそれ以上の、背丈。

服は着ていた物が年相応にアレンジされたようで、まるで未来の彼女と入れ替わったようである。

「な、何をした!?」

「お前の、成長の魔力が私に偶然に作用してね。暫くは、この姿でいられる。」

「なッ!?…バカな!そんな事が…いや、だとしても!一時的な成長、しかも元が子供ならば!少しでも無理をしたらただでは済まない!魔法を使いでもしたら魔法士の命とも言うべき魔法回路が焼き切れて、そのまま魔法士としては過ごせなくなる…!」

「それでも良いよ。」

ノアは静かに言った。

「マ…お母さんを救えるなら、ね。」

「ノア…。」

「心配しないで、平気。」

ノアはカペラの持っていた剣を拾い上げると光の魔法士の元へ近づく。

「ッ…!?」

「やられたら、やり返さなくちゃね。」

剣に炎が走る。魔法士の四肢にはいつの間にか鎖が繋がれ、動きが撮れない所へ一閃。

剣が切り裂いた。



「それほど魔力を使って…貴様の人生はここで終わるぞ…ガキ。」

「あなたのもね。」

「ぐっ!!!」

光の魔法士は突如灰になった。

「光の魔法士連の使いは、仕事を果たせないと灰にされてしまうの…。長がヒドい奴でね。」

「そうなんだ…。」

「ノア、あなたの体は…」

カペラの言葉にノアは頭を掻いて言う。

「いやぁ…節々がっていうか、全身が痛いよ…やっちゃったぁ。ゴメンねママ。」

「いえ…謝るのは私の…」

カペラの唇にノアの指が当たる。

「ママ。私が一人でやったことだからそういうのはダメ。そういうのナシ。」

ノアは微笑む。

「もう少しだけ、私と一緒にいてくれるのね。」

「勿論、一人だけの家族だからね。まだ甘え足りないよ。じゅうにぶんに。」

「あら、可愛い。そんなに大きくなっても十二分はまだ難しいのね。」

ノアの体が光って、消える。

カペラの足元でいつものノアがカペラの服の裾を引いてた。

「おかあさん…いたい…。」

「あぁ、痛かったわね。直ぐ痛いのどこかに消しちゃうからおうち入りましょ。」

「ノア、じゅうにぶんってちゃんと言えたもん!」

抱え上げられてノアは言った。

「んー…六十点かな?」

「やだー!ひゃくてんー!」

「もう少し大きくなったら取れるかもしれないわね。」













どこかもわからない、一握りの人間しか知らない場所。

黒い床を歩き、広い場所に出る。

訓練場。

細かく言えば訓練場兼闘技場である。

そこにカペラは来ていた。

新たな希望と共に。

剣、槍、拳、鎧、盾、炎等様々な物がぶつかる音を奏で、戦士達の雄叫びが響く。

「おぉ、カペラ殿。お久し振りですな。」

カペラの後ろから声がする。

掩蔽団に所属する魔法士。

鋼のアルデバラン。

あの戦いでのアトリア達に負わされた傷は癒え、今は新生国王の傘下となった掩蔽団の長を勤める。

「あら、バラン。久しぶり。皆はどう?」

戦士達の熱気を見守りながらカペラはアルデバランに問う。

「どうも何も、皆絶好調と言うやつです。やはりあの戦いに人員を割かなくて正解でしたな。」

「カノープスは?こっちに来てる?」

「いえ、やはりアイツはアイツで反省しているようです。未遂とはいえ今の国王の赦しが無ければ大罪人。この前別の大陸に移ったようですよ。」

「アプラは?」

「アイツも音沙汰無しです。もう会えるかわかりませんね。」

「そう、皆違う道に進んでいるのね。」

戦士達はカペラ達に気付くと一礼し、直ぐに稽古へと戻る。

「熱心ねぇ。」

「そうですな。少しばかり元気が余りすぎてる者もおりますが…。」

そうアルデバランが言い終わるか終わらない内に空から二人の目の前に何かがかなりのスピードで落ちてくる。

アルデバランは右手で目元を抑え、カペラは目を丸くする。

「ガッハッハァッ!父上ェ!今日の稽古は俺が勝たせて貰いますぞォ!…おや、カペラ殿!お久し振りでございます。相も変わらず強者の風格ですなぁ、恐れ入ります!」

アルデバランの一子、タウラーン。掩蔽団守備隊副隊長を若いながらに勤め、その実力は父を凌ぐのではないかと言われている。

「あぁ、タウラーン。元気そうね。」

笑うカペラの横でアルデバランは眉をヒクつかせ、叫ぶ。

「こっんんのぉぉ…バカ息子がぁぁ!何度言ったらわかるのだッ!声が無駄に大きいッ!戦でも無いのに上から急に現れるでないッ!それに稽古で私に勝てる時はほぼマグレではないかッ!まったく…。」

アルデバランはため息をつくとタウラーンに言う。

「俺はカペラ殿と少し話す。席を外せ。」

「わかりました父上!と、おや…そこにいる愛らしい幼子は誰ですかな?」

タウラーンが首を傾げる。

「失礼ですがカペラ殿。私も気になっておりました。そちらは?…」

アルデバランもカペラの後ろにくっついている人物に目を向ける。

まだ物心付きたての幼い少女。三歳くらいの可愛らしい黒い髪の少女が後ろでカペラのローブの袖をしっかりと掴み、不思議そうに掩蔽団の長とその息子を見上げる。

「あぁ、この子ね。この子はノア・リーゼロッテ。私の。いえ、掩蔽団だけでなくこの世界の命運を握るかもしれない、希望よ。」

「ほう、希望…ですか。」

アルデバランが眉を寄せると、カペラは笑った。

「アッハッハッ!嘘よ嘘。そんなに大層な子になるかはこの子次第。」

「なッ…!?冗談ですか?」

「ガッハッハッハァッ!父上ェ!何があっても動じない心を持て。と言った人間とは思えないほど面白い顔ですぞ!」

「お前は黙っていろ!…で、この幼子を何故ここへ?」

タウラーンを押し退けてアルデバランは訊いた。

「この子、二つくらい向こうの大陸の子なんだけど今私任されててね?まぁ稽古の見学というか、私に出来るのは魔法と料理と剣術を見せるしか出来ないから。」

「ほう?…しかし、こんなに早くなくても良いのでは?」

そうアルデバランが言うとカペラは真剣な面持ちで言った。

「この子、ちょーっと色々あって魔力回路がぐっちゃぐちゃになるくらい入り組んでいるの。それなりに処置はして現在進行形で治療してるけど、技術、治療時間共にまだ足りないわ。人間の成長スピードだと、回路がおかしくなったたまま育ってしまうかもしれなくてね。魔法で治療しつつ、数百年位眠る方法をとろうと思ってるの。」

「それは…本当ですか?…しかもこの子の前でそんな事を…。」

アルデバランが息を呑む内に、カペラはノアを抱えて言う。

「この子も承知よ。勿論治っても魔法の使用に支障が出ないとは限らないけど、極力無くそうと思って。ねー?」

カペラに抱え上げられると、ノアはとても嬉しそうに笑った。





「うーむ…父上。」

「どうしたバカ息子。」

「俺は勿論この掩蔽団に尽くすつもりですが、彼女もまた、掩蔽団に招かれる気がするのです。」

「ん?…あぁ、ノアという子か。」

二人は団の皆と笑い合っていたノアを思い出した。

「それに、俺自身も長く星を守って行きたい。」

「つまり?」

「時に抗おうかと。」

「好きにしろ、バカ息子のネジの飛んだ台詞には一々噛みついてられん。」

「感謝します父上。」



To be continued



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