近き者同士の邂逅
カイルは二年の修行により、
追加で二体の龍(竜)と契約を果たしている。
魔法階級は下級から
一国を統べる魔女達と同じ賢者級へ。
そして、あらたな魔法を会得しこの任務についている。
雷の王国の宮殿ー
「カイルはしっかりエルナト様に会えたでしょうか?」
ミザールの右腕、ミアは表情を曇らせ言った。
「問題はない、お前との組み手で出さなかった隠し玉があるようだしな。」
ミザールはそう答える。
しかし、ミアの顔は変わらない。
「お前の妹が現れても、追い払う事くらいはできるだろうよ。何よりも、あいつは心の底では諦めていない。敵になった自分の師と会う事を。っと、この話は終わりだ。鼠がいる、出て行け。」
二人のいる部屋の扉は閉まる。
夕食の用意をするメイド達の中に、不適な笑みをした者がいた。
「俺もあなたを探していたんだ。ミザールの言伝てでね。」
カイルは歩きながら大地の国の姫、エルナトに話しかける。
二年前と同じ雰囲気の緑の線の入った白シャツの服の上に白と黒の網のようなコートで、右腕にはミザールの下で動く者の証の朽ち行く鎧のエンブレムが縫いつけられている。
「あら、ということは貴方様がカイル・セイリオスその人なのですね?」
エルナトの上品な問にカイルは返す。
「そうです、でも苗字の方はあんまり言わないでくれないかな。そんなに得意じゃないんだ。」
すると、エルナトは思い付いたように言った。
「では、カイル様と。カイル様のご家系はあまり良い話を聞かないですものね。」
「ご存知なんですか、かなり昔の話なのに。今になって気にしているのは俺一人だし…。」
エルナトは微笑む。
「過去の文献にありましたので頭の隅に残っていました。」
セイリオス家は昔貴族として名を馳せていたがとある理由で名は落ちる。それを馬鹿にされ、カイルは小さい頃色々と嫌な思い出がある。
これらはアトリアのお陰でかなり良い印象に塗り替えられて来ているが。
「そんなことより、エルナト様はどこに向かっているんです?」
「私の事はエルナトと呼び捨てにしてください、私はカイル様より二つ下ですから。私は、樹の国に向かっています。」
カイルはエルナトの後ろについて歩き、エルナトはカイルの方を見て後ろ歩きで会話をする。
「樹の国って?」
「私の国からちょっと離れた所です。会いたい学者様がいまして、その方に魔具を修理して頂こうと。魔具が無いと、魔法が使えない私は国の統治なんてできませんから。」
エルナトは笑顔で言った。
「え!?魔法使えないんですか!?」
カイルは驚く。
「はい、使えません。私の特技は歌うことのみ。他の魔女様と違って、歌姫のような感じです。私は自分の事をそう思ってはいませんが。」
「変わってるんですね、大地の国…!」
カイルはそう言ってエルナトの手を引き、自分の方に寄せる。
「お前、いつからそこで待ち伏せてたんだ?」
カイルは口調を変え、頭上の木の枝にぶら下がる少女に言う。
「カイル君とお姫様みーっけ。可憐な乙女を待たせるなんて、罪なぁ…ふ・た・り。」
黄色にまっすぐな青のエクステの長髪の少女は脚を枝にかけ、逆さにぶら下がっている。
青に黒文字が入った七分袖のシャツに、同じカラー調のスカート。勿論この体勢なので、その中身までも同じカラーを履いている事が丸わかりである。
「あ、あなたは一体誰なのです!は、はしたないですよ!」
エルナトは顔を真っ赤にして注意する。
「純情なお姫様ねぇ、ゆっくり凍らせてあげるわ…!」
少女はニヤリとする。
「おいアンタ。なんで俺たちに用があるんだ?」
カイルは静かに言った。
「ええ~?アプラちゃんは、カイル君に興味があって、アプラちゃんのボスはそのお姫様に興味があるの。これでいい?」
「勿論、倒さなきゃいけないのはわかったよ。ミアの妹の召喚士。」
カイルは平静を保ったまま、アプラ空で揺れて、火花は散っていた。
変わりきった世界の救いは ー
To be continued