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星の魔女 ~2years later~  作者: 羅偽
29/32

Extra 1 アフター

Extraシリーズスタートです!

「うっわぁ~。でかいなぁ、これだけ大きくて寮なの?」

「はい。この大陸をしっかり満遍なく使いたいと思って。」

キドとカイルが話す。

「それはそうだけど、六つにクラスを分けてそれぞれ一個の集まりにするなんてぶっ飛んでるねカイル君。」

カイルの作る魔法学園都市の工事は着々と進んでいた。

「クラスのお互いが攻め込めば実践訓練にもなりますから。まぁ中々生徒達には難しいかも知れませんが。」

最初に出来上がった学園本部エリアの一番高いビルで、二人は今後の予定を確認する。

「そういえば、正妻ちゃんは?」

「アトリアの事ですか…?今日は実家ですよ。」

キドは大きな窓に手をあてて言った。

「ここが本当に学園都市になったら、何百、いや何千もの生徒と職員が…まるで世界の全てがここにあるみたいに歩くんだろう?…すごい話だよ。」

「俺も、最近そう思います。こんな未開の地がこの星にあっただなんて。しかも文句のつけようもないくらい安全な。」

カイルは学園長の椅子に座り言った。

「ってあれ?そういえばスハイル君は?」

「え?またアイツいなくなってる…シリウスとの戦いの後もフラッといなくなったし…どうなってるんだ?」

「カイル様…。」

二人のスハイルへの意識は一人の少年によって遮断される。

「あっ、君か。どうしたんだ?」

「我々掩蔽団の元へ、また一人。旧メンバーを親族に持つ魔法士が。保護を要請すると。」

「んー、そうか。事情を聞きに行くよ。君は戻っていて良い。」

「はい…。」

掩蔽団(えんぺいだん)

カペラを含む星の一族に従事していたとされる者達の総称。

文献が無い以上、何をしていたか解らないが三次以外の魔法大戦に参加していたらしい。

前までの政権を変えるための一派だったのだろう。

今はカイルの護衛と、他大陸への支援救護、交渉等をカイルの代わりに行っている。

しかし、学園が完成すれば彼等はカイルの大陸、友好国への無断侵略を叩きのめす暗部へと変わる契約になっている。

「彼等も大変だね。この先一番不安なのは彼等じゃない?フワフワやってきて、急な外交。でもこれが終われば容赦無用の暗部へ。人が足りない分を補うのにも無理があるよ、新国王様。」

「そうですね。なんとか人員を増やさないと…。彼等も俺に不満かもしれない。今のところは、彼等が普段笑って楽しく話をしてくれる事が救いです。もし仮に不満を募らせてる人ばかりだったらと思うと。」

カイルは身震いした。

「暗部に戻っても、任務以外は笑って過ごしてくれると良いね。」

「まぁ、今の団長も周りを明るくする人ですから大丈夫ですよ。俺は信じます。」










大地の国。


「スハイル様、いかがなさいました?」

「エルナトお姫様よぉ…なんで俺がアンタのお側にいなきゃならねェんだ?いい加減カイルの所から抜け出すの大変なんだぜ?」

王宮の一部屋で、姫が踊る。

躍りのパートナーはスハイル。

カイルが聞いてもシリウスとの戦いがどんなものだったのかを彼が口にすることはほとんどなかった。

ただ一つ、お前が言われたような世界の仕組みの事は話された、とだけ。

学園都市建設に携わるだけでなく、彼も職員になることが決まっていて、永く学園を見守るための時魔法をかけるのも彼の仕事である。

「なぁお姫様。俺達がまぁまぁ趣味が合うのはわかるけどよ?ボロ雑巾と踊るのは止めた方が良いぜ?イメージ悪くなるだろ。」

「まぁ、ボロ雑巾だなんて。あなたは身も心も清らかですよ?スハイル様。」

「いやぁ…顔は知らねぇけどさぁ…心は暗殺者のそれだと思うんだが?」

スハイルはエルナトの手を取り言う。

「でも、心の奥にはしっかりと光が見えます。どうかこの手を殺しではなく私といる為だけに使ってくださいませ?」

「?…俺にお姫様のお付きは務まんねぇよ?」

「そうですか…。」

エルナトは少し黙ると言った。

「なら国王は如何ですか?私との子供が国を治めるまででよろしいですから。」

「はっ!?…バカかアンタ!?」

スハイルは動揺する。

「アンタなぁ…!俺はならず者みたいなモンで、殺しも山ほどしてる!そんなやつが王にだなんてなれるわけがねぇだろ!」

「大地の国は誰も拒みませんよ?貿易が盛んなのはそれが所以ですから。」

「いやいやいやいやいや!おかしいから!絶対ェおかしい!国民に暗殺されるわ!考え直せ!」

スハイルはエルナトの肩を揺らして言う。

「でも(わたくし)…協会から気まぐれに立ち寄って下さった負傷したスハイル様の手当てをしてから…胸の高鳴りが止まらないのです…!」

「おいおい…頭痛くなってきたんだか…?」












火の国。

森。

「掩蔽団の皆、上手くやってるかしら?…まぁ私自身あんまりあの人達知らないけどいろいろ出来るみたいだし、心配しなくていいか。」

カペラは懐かしの我が家に来ていた。

白い石で敷き詰められた床を歩き、木のドアを開ける。

忌々しい大戦、カイルとの別れ、協会の者からの逃亡。記憶改竄と近代化によるセキュリティ強化によって秘密裏に国を行き来する事も出来なかった。

唯一大地の国だけは入国が可能で、何年も諜報と情報操作だけをこなして過ごした。

そして一大決心の協会への乗り込みで裏切りに会い、負傷。

しかし、愛弟子の力ですべてに片がついた。

時も流れれば人も変わる。

既に人々はカペラを赦していた。

全てが終わった開放感に浸りながら、いつものように市場から帰って来てドアを開ける。

「…?」

何かがいる。

「誰かいるのかしら?私のお家なんだけれど?」

スイッチを押して電気を点ける。

少し先にあるソファーにいる者にカペラは息を飲んだ。

少女。

二~三歳くらいの少女である。

黒い綺麗な髪が白いフードパーカーと合わさり、愛らしい。

しかし、問題はそこではない。

朱。

白いパーカーと言ったのは元々がそうであったと思ったからである。

彼女の服は半分程、鮮やかな朱で濡れていた。

べったりと。

「あなたッ!」

カペラは少女に駆け寄る。

「あなたッ!痛い所は!?何があったの!わかる!?」

正面に行き、目線を合わせて言ったつもりだったが少女は最初、何も答えなかった。

それから数十秒ほどでハッとなりカペラを見た。

そして、口を開いた。

「おねーちゃん…だぁれ…?」

「私はカペラ!あなたはッ!?どこから来たの!」

どうして血で服が濡れているのかを聞くつもりだったが、少女はカペラの名前を聞いて、喜んだようだった。

「カペ…カペラ!カペラ!…ママがね、今日からカペラがママだって!…パパがね、バーッてね、まっかになってね、ママもね、バーッてなってね、そのときに言われたの。そのあとおそらまっしろになって…それで…。」

途中から、少女は何かに怯えだす。

「パパとママ…こわいひとたちを、みちづれっていうのにしたんだ…もうあえないのかな…やだな…」

「大丈夫!会えるわ!今は会えなくても!きっと直ぐに会えるから!」

カペラは少女を揺する。

「ほんと?」

「ホントよ。」

カペラの言葉に少女は笑う。

「カペラやさしい!…ママといっしょ!カペラはママ!」

「わかったわ。あなたを良い子に育てる。あなた、名前は?」

少女は元気に言った。

「ノア!」


星は朽ち、崩れ、周りも壊して、また生まれる。


To be continued.


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