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星の魔女 ~2years later~  作者: 羅偽
27/32

絶望と希望。

『アッハッハッハッハッ!!軽く放った冷気だけで瀕死だなんて、どうかしてるわッ!脆すぎるんだよクソアマァ!』

白煙の中、アプラは笑う。

いつもの白と蒼の鱗に紫の鎧が付き、より高貴な雰囲気を(かも)し出す。

「ぐっ…。もう魔力も何もかも…」

ボロボロになった服でミアは呟く。

「本当に、(ミア)の負け…ですね…。あの時の言葉は取り消します。何もあなたに勝てていなかったのに父に愛されて…。」

『そうね…。今はイケメン騎士に愛されて、生涯幸福者なのね、お姉ちゃん。』

そう言ってアプラは小瓶をミアの方へ投げる。

「これは…。」

「ポーション。聞いたことくらいはあるでしょ?むか~しからある薬よ。アプラちゃんの慈悲は海なんかより数倍深いんだから。」

人の姿でアプラはそう言うと何処かへ歩いていく。

「待って…!アプラ…!」

「なぁに?アプラちゃんは気ままに多忙なの。お姉ちゃんが止める権利なんてどーっこにも無いんだから。」

それに。とアプラは続ける。

「キドの目が光ってて、下手に動けやしない。私もう冷めちゃったの。二人とも、二度と私の前に出てこないでね。」

「あらら、バレてたか。」

キドが天井から声をかける。

浮遊していて、ゆらりゆらりと降りてくる。

「キド、アンタ…体洗ってるの?蛇くさいんだけど?アプラちゃんの服は高級素材で出来てるから臭い移さないで欲しいの。」

「ごめんね姉さん。ちょっと二日くらい研究ぶっ続けだったからさ。」

キドは笑いながら頭を掻く。

「まぁ…いいわ。キド、ミアお姉ちゃんをよろしく。じゃあね。」

「はいはい。一生の別れだといいね、姉さん。」

「アプラ…!」

キドは地に降りると、ミアの肩を担ぐ。

そして言った。

「ミア姉さん、僕たちが向かうのはアプラ姉さん側じゃないんだ。行くよ…。」

そう言って、姉妹は道を別にする。










「『クソ野郎がぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』」

カイルは拳をシリウスに突き立てる。

「大事な再開の口付けの雰囲気を壊さないでもらいたいな…。」

カイルの体に何かが刺さる。

風。

風の槍が右肩に刺さる。

「…カイル君ッ!」

カペラは叫ぶ。

「おっと、刺激が強かったかな?」

「ッ!あなたはどうしてここにいるの!どうやってここに!」

カペラは力無く、しかしはっきりと言った。

「まぁまぁ、君ももう長くは無いだろう?この闘い、見届けては如何かな?」

そう言ってシリウスはカペラを椅子に座らせ、自らは立ち上がる。

そして、カノープスから剣を引き抜く。

「来たまえ。」

「『勿論ッ!』」

拳を何度もシリウスへ。

シリウスは余裕が無さそうに一本の剣で止める。

「『おぉぉぉおおおっ!』」

左の拳がシリウスの右手の剣を砕く。

(いける…!)

そのまま右で胴へ打ち込もうとするが、緑の光。

シリウスの左手に剣が現れる。右にあったものと同じで、エメラルドグリーン。

それが拳を止めた。

「『くっ!』」

後ろに跳んで距離をとる。

シリウスの右手には壊れた筈の剣が光と共に現れていた。

「『一体、どうやって!』」

「俺も竜と契約していてね、剣は幾らでも出てくるのさ。竜の牙が折れないようにね。」

そう言うと、シリウスは二つの剣を投げる。

「『当たるかよっ!』」

軽々と避け、懐に飛び込み、一撃。

これも叶わなかった。

槍。

風で作った槍を、シリウスは握っていた。

「これも、契約のお陰だ。」

そしてカイルへ向かって振るう。

「『ぐっ!』」

所詮武器なのだか、カイルが攻め入る隙を与えてくれない。

「にしても、余所見は良くないな…?」

「『がッ!?』」

後ろに何かが当たり、カイルの背を斬り血を引きずり出す。

先程投げた剣がシリウス側に戻って来たのだ。

軌道上にいたカイルはそれに切り裂かれたのだ。

「『これほど強くて、なぜ《時計》とやらを使おうとするんだ、目的は…!?』」

「あぁ、目的か…?なら昔話をしてからだな。」











何時かの時。


協会の頂上。

青年が王の元へ辿り着いた。

「シリウス・ユースティア!」

「おやぁ、生きの良い青年だ。君は何をしに来たんだ…?名誉か?金か…?それとも肉欲かな?」

横に大きな椅子に王が女達と座っていた。

「こんなに…人間を破滅させて…!」

「何がおかしい?…王なのだ、妃の候補がいるのも当たり前だよ。」

虚ろな目をした女達は皆、シリウスの方を見ていた。

(くっ…!師匠はどこに…!?)

「ンン~?もしやこの前来た娘を探しているのか?…ほほぅ、あれはお前の女だったかァ~!」

「貴様ァッ!彼女をどこへ!」

「そこにいるともさ。」

怒鳴る青年の後ろを王は指差す。

「ッ!…」

青年が振り向くと、後ろには鎖に繋がれた少女。

きめ細やかな肌は所々が(アザ)になり痛々しく、服はぼろ切れのように、脚には一筋、血の乾いた跡。そして、輝いていた瞳は光を完全に失っていた。

「あぁ…あぁぁぁ…。」

「残念だがなァ~?お前の大事な星の娘は、私が散らしたよォオォォ!!!フヒャッハハハハハハハハ!!」

「……ル君…。」

笑う王に、力なく青年を呼ぶ少女。

「お前は許さない…!お前だけは許しちゃおけない…!シリウス・ユースティア!」

「そんなにそいつの処女が欲しかったのかよォオォォ!!??カイル・セイリオスぅぅぅ!!!!」

「うぉぉぉぉああああおおお!!!!!」





なにも、残らなかった。

虫のように死んだ外道。

使い物にならなくなっている女達。

再起不能の愛しい人。

幼馴染みは既に逝き。

そして、《時計》。

あの時の言葉を伝えられたら。

もし今の自分でなくて、他の世界線があるなら。

その世界の自分が言葉を伝えられたら。

もし、やり直せたなら…。

そんなとき、《時計》の鐘が鳴った。



《時計》は俺に応えた。

火の国の宿屋に俺はいた。あの時の俺が駆けていくのを見た。

カイル・セイリオスとは別の人間として、世界は俺のために、一からやり直しを始めたと思った。

でも、違った。

今度は、幼馴染みが何も考えられない状態にされていた。

勿論、シリウスによって。

そして、今度は俺も死んだ。

やり直した世界の俺はシリウス・ユースティアに勝てなかったのだ。

笑ってしまうよ。

今度は幼馴染みではなく師が死んだ。

遠くで傍観していた俺は絶望して、激昂した。

また、シリウスを殺した。

そして《時計》が鳴った。





何度もこんな事が起きた。

必ずどちらかが毒牙にかかり、どちらかが死んだ。

いくら途中まで見守っても、シリウス・ユースティアは外道で、何度もやり直した世界の俺を手こずらせた。

何百、何千。

幼馴染みも師も救えない。

絶望の輪に、希望を失っていた。


そんな時、傍観者が増えた。

幼馴染みが、《時計》に選ばれた。

彼女もまた、周りが死ぬ世界からやり直すために来たと。そう言っていた。

そして、俺達は決めた。

最初に、シリウス・ユースティアを殺すと。

そして、自分達がシリウスユースティアに代わって彼等を待ち、助けを差し伸べると。

幸いにもシリウスが作った《時計》は俺達が彼を殺す時に完成していた。

俺が王座で彼等を待ち、彼女が彼等に助言。

しかし、仲間が生き残るルートを見つけるのは、これも何度も時間がかかった。

掩蔽団達の情報操作なんかじゃ利かなかった融通。そして、その世界のカイルも、アトリアも俺に勝つため、強くなくてはいけない。

二人に勝ってしまえば、誰が生きていても、《時計》でやり直した。


そして、最後の世界が…!そのルートが!












「『まさか…!この世界が、この時代が!ソレだと言うのかよッ!』」

「あぁ…見事にお前達は生き残ってくれた。

カペラが長くないというのは初耳だったがな…。それでも暫くなんとかする方法くらいはある。」

「『なら…お前は一体何が目的なんだ…。』」

シリウスは悠々と答える。

「この世界を、いや全ての世界線を…!ここにある《時計》で、統合する!」

「『統…合…!?』」

シリウスは笑う。

「そうさ!…世界線が統合され、貴様を含む俺以外のカイル、アトリア、カペラ、いや全人類が一つとなるッ!シリウスは俺が代わっているから、そこらの王と統合されるだろうが…まぁ女癖の悪さを発揮する前に殺しに行けばいい…。そして、誰も不幸のこない世界、人生が訪れる!」

「『どこに保証が…!』」

「あァ?…無いね。」

シリウスはおどけて言った。

「『何だとッ!?』」

「俺は元々シリウス・ユースティアとして立ちはだかると決めていただけ。俺を越えろ。カイル・セイリオス。世界線の希望。越えられなければ、世界線探しに飽きた俺の手で、世界は滅びる。」

さぁ!

と、シリウスは言った。

「『うぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!』」

拳。

シリウスへカイルが放った拳。

しかし、受け止められていた。

そして、

「《竜離 》。」

カイルからドラゴンの力が離れる。

そのまま剣がカイルを裂く。

「がッ!?」

血を流しながら、下がる。

「もう一度!」

ファフニールとリーレイを纏う。

「阿呆が…。情に流されたな。」

「『なッ!』」

「世界線をやり直した俺に、同情したな。お前が最後の頼みだと言うのに。」

そして、シリウスは駆ける。

カイルの懐へ潜り込み、双剣を両手で振るう。

(速い!)

交竜龍依(クロスドラゴンアームド)したカイルの速さでも追い付くのがやっとのラッシュ。

それとも、カイルのスピードが落ちたのか。

(俺が…最後の…。)

「本当に優しい奴だな…お前は。」

シリウスの言葉にカイルは驚き、涙を流す。

「なぜ泣く…。お前は俺を外道の王と見なければならないのに。」

「『俺はあなたも…救いたい…!』」

そのカイルの言葉にシリウスは激昂した。

「ふざけるなッ!救済など求めていないッ!貴様も検討違いかっ!竜離ッ!」

またシリウスは謎の言葉と共に、カイルに触れる。

龍依が解け、元の姿に戻る。

「さようなら。」

九回程剣を振ったシリウス。

カイルの体からは血。


あと…一つ。

To be continued

わかりづらいよボケ。

という事を言われたので今回の話を手短に解説します。



今カイル達の目の前にいるシリウスは元々この世界にいるシリウス・ユースティアではなく、別の世界から来た人間です。

今敵となっているシリウスは、異なる世界から幾度となく他の世界を渡り歩き、カイル・セイリオスがカペラ、アトリアと共にシリウスを倒す平行世界線を探していました。

別世界のアトリアも仲間に加わりながら長い旅路を繰り返し、今書かれている星の魔女の世界が最後の希望と見出だしカイルと合間見えている。

ということです。

察しのいい方なら、シリウスの仲間となった別世界のアトリアが誰か、わかりますよね。

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