道のりはすぐ近くに。
「へえ…これがあんたの日記ねぇ。ダッサ、女々しいわねアンタ。」
アトリアがつまらなさそうにカイルに言う。
「見るなよアトリア、恥ずかしいじゃないか。大雑把にしか書いてないんだからさ。」
カイルは頭を軽く掻くと、灯りを消す。
「俺、もう寝るから。明日は決戦だ。」
雷の王国に戻ったカイルは自分の力の制御と、自身の日記の違和感の答えを、模索していた。
二日前。
「遂に協会の王、シリウスとぶつかろうと思う。」
雷の王国の領主、ミザールは言った。
「理由は二つ。シリウスがもう生存していないという疑いがある。三次大戦の後、王であるシリウスが若返っている。との噂があるが、おかしい話だ。そんな現象を起こす魔法は世界で確認されていない。一体誰なのか、それを確かめる必要がある。第二は、各地で暗躍しているとされている、掩蔽団の一部が協会にいる。という事だ。これは俺の協力者が教えてくれたことだ。正直、これから協会が何を世界にしてくるかわからん。協会にウチが乗り込んで攻撃されたなんて事があったら、それは後ろめたい事しかないという話になる。協会の城の中だけで一気に決着をつける。ミアと俺、カイル、その他がいれば大体は捌けるだろう。ついてくる者は好きにしろ。多ければ多いほど良い。」
そうミザールは言った。
カイルはさらにその数日前から伝えられていた。
答えイエスだった。
カペラがいる。
そう聞かされていたからという訳ではない。
近頃、シリウスの夢を見る。
水の国で出会いその後顔を合わせていないのに、頭に残り続ける彼の顔。
そしてあの絵画の城の夢…。
カイルは心の中で望んでいた。
あの時から。
何故か、一戦交えたいと。
初めての感覚。
決戦前日
アトリアは秘密裏に、アウストレイルに言われたことを言い聞かせていた。
小さい頃からずっと考えて暖めて来た、自分だけの魔法。それは未だに完成していない。
光の鞭。何かが足りず、途中で砕けてしまうのだ。どうすれば良いのか分からなくなっていたとき。
アウストレイルが現れ、助言をした。
どうして魔法の事を知っていたのだろう…。
死んだ母なのであろうか、そんな筈はない。
目の前で死を見ているのだ。
あるはずもない。
誰なのか。
「ミザール様、ミアは緊張しています。」
ミザールの片腕。召喚士のミアは言う。
「妹と戦うのが、か?お前らしいな。」
ミザールはミアの頭を撫で、優しく言う。
「俺がどこまでお前の力になれるかはわからん。だが安心しろ。お前が妹と交戦する前に話をつけてみせる。それに、もしもの時は助っ人も途中から来るしな。」
戦いに備え、彼らは眠りにつき始める…。
決戦当日 水の国、国道。
「早くなさって?こんなんじゃ加勢する前にぜーんぶ終わってしまいましてよ。」
「う、うるさい…。私はインドアなんだ…。」
「シャウラさん、そろそろ国道を抜けます。王国です。」
三人が険しい道を歩く。
「や、やっとか…ここもその内開発しないとな…。」
「あらあら、どんどん肥えていってしまいますわよ?ハウト。」
To be continued




