飽きに悩まされて。
久々に夢を見た。
城の夢。
どこかで見たような絵がずっと並ぶ廊下を歩くだけの夢。
赤いカーペットに足音が吸い込まれ、カイルをまだ見えぬ側へ引き込もうとする。
目覚めろ。
誰かが呼び掛ける。
目を覚ますと、木の天井が見える。
見たことのない木の色。
黒で、鼻に心地よい香りが滑ってくる。
「目がさめた?」
聞き慣れた声が左からする。
「よーく寝たわね、カイル。」
「あ…アトリア。」
体を起こす。
部屋には自分とアトリアだけ。
綺麗な黒と白の内装。
既にこの見知らぬ場所が気になってしょうがない。
笛の音や、荷物を運ぶ音も聞こえる。
「ここは?」
「大地の国よ。アンタがぶっ倒れてから、三泊目。心配したわ。」
そういってアトリアは近くのテーブルから何かを持ってくる。
湯気に、この香りは。
「はい、ラザニア。喉乾くだろうから、水はここ。好きに飲みなさい。しばらくここを動かないからゆっくりすると良いわ。」
「え?でも、ミザールに報告とか…。」
「アンタが寝てる間に来て報酬も置いといてくれたわよ。好きなときに戻ってこいって。」
「そっか、迷惑かけたな…。」
温かいアトリアの手料理を頬張りながら、気を落とす。
「スハイルに言ってやんなさい。運んできてくれたんだから。」
アトリアはそういうと扉に向かう。
「あ、暗くなったら【星の帽子】ってバーを見つけなさい。全員そこに集合にしてるから。んじゃ、後は好きにどーぞ。」
日がドアから差し込み、消える。
「嘘みたいに広い…。」
カイルはため息をついた。
宿を出ると、市場だった。
エルナトが統治する、大地の国は
活気があり、全ての店員から明るい雰囲気を受ける。今までで見たことのない光景がこの国にはあり、魔法士で道が混みあい、詳しく何があるのかを見ることが出来ない。
「向こうの方はここら辺と違って高い建物もあるな…行ってみるか。」
徒歩で人混みに揉まれ15分か、
ガラス張りのビル、そこにカイルはたどり着く。
「高いなぁ…。」
樹の国で見たビルそっくりである。
なんというか、この地域ではこの造りが流行っているのだろうか。
「ここではなんの建物なんだろ…。」
入ろうとする直前。
「お兄ちゃんみーつけた。」
「お兄ちゃんみーつけた。」
二人の声が聞こえる。
「…!?」
振り返ると、双子が立っている。
銀の髪の毛、白と紫のローブ。カイルより小柄で、無邪気なイメージだ。
雰囲気は、どこか誰かに似て…。
「あっはは、戦お!」
「戦お、あははっ!」
双子は無垢に言う。
「君達は…一体?」
カイルはビルの入り口から離れる。
被害を減らすためだ。
「私達?人形!」
「人形!名前なんてないもん!」
そう叫ぶ。
はっきりした。
この双子は、だれかの魔力による分身体であること。そして、この雰囲気は…。
「師匠に何て言われて来たんだ?君達。」
カイルはたずねる。
「ししょー?誰それー?」
「お兄ちゃん、あんなおじさんに魔法習って楽しいー?」
(師匠の分身体じゃないのか…?雰囲気は師匠のものを感じるのに…。)
カイルはまだ探りを入れようとするが、自らが契約している龍、ダイモスに遮られる。
『カイル、纏え。』
そう聞こえてカイルが動きを止めると、
双子は言う。
「お兄ちゃん、凍っちゃえー。」
「凍っちゃえー!」
左の方の少年の方が手を出すと、地面から冷気が走り、タイルが氷に覆われていく。
「『クロス!…』」
雷と炎がカイルの身を包む。
「『うぉおっ!!』」
炎を弾けさせ、冷気を吹き飛ばしたかに見えた。
しかし、その炎も凍っていく。
「『っ!?…そんな…!』」
脚が凍り、動きを封じられてしまう。
「爆発しちゃえー!」
「お兄ちゃんふっとんじゃえー!」
今度は右の少女。
目の前で炎が弾ける。
召喚士のミアに劣らない炎。
「『ぐっ…!あぁぁ!』」
地面を転がされる。
立ち上がれない。
「お兄ちゃん、魔力ちょうだーい。」
「ちょうだーい?」
そういって双子は互いの手を取り、回る。
「ぐっ!?…なんだ…これ…。」
体から力が抜け、龍依も解けていく。
「ありがとう、お兄ちゃん。またね!」
「ありがとう、お兄ちゃん。またね!」
二人はカイルから離れ、どこかへ歩いていく。
「ま、待て…。」
やっとの思いで立ち上がり、追いかけようとする。
しかしおぼつかない足で、どうにもならない。
横のビルの扉が開く。
人が出てきたのだ。
自分で避けたつもりでも、倒れこむ形でぶつかってしまう。
「あ、あなた大丈夫?」
女性の声。
「と、とりあえずウチに行くから。いい?」
そういってどこかへ担がれる。
「ベネさん…にカイル!?」
懐かしい声が聞こえる。
「またなんかあったのか?つくづく巻き込まれるタイプだな。」
こちらも懐かしい声。
「おっと、知り合い?良かった。カイル君?だっけ?【星の帽子】にいらっしゃいませ!」
To be continued




