Fと見透かされて
扉を開ける。
「キド様ー!キド様ー!」
エルナトが大声で呼ぶ。
「いるよ。僕が外にいる時間は三十分もないんだから。」
椅子に、本をパラパラとめくる魔法士が座っていた。
「あなたがキドさん…?」
アトリアが訊く。
「そうとも。」
整った顔立ちに、白衣、その下に緑のコートが見える。
「エルナト、魔具はそこに置いといて。僕はそこの彼に話がある。」
そう言ってキドはカイルの前に立ち、手を引く。
キドは顔を近づけ言う。
「ねぇ、カイル君。ミアにも、アプラにも会ったんだよね?私は姉妹の中で、何番目?教えてよ。」
聞きながらカイルの顔を自分の胸に押し当てる。
一人称と、ボーイッシュな顔をしていて女性だという事にカイルは気づいていなかったのか、驚く。
決して大きすぎず、かつ形のいいそれがカイルの顔全体を包む。
「んんーー!!?」
カイルは突然の出来事で混乱する。
「なっ!?…ちょ…」
アトリアは顔を赤くして固まる。
「どうしたんだい?ただのスキンシップさ。それとも何か困ることが?」
キドは何かに気づくと、笑う。
「あらキド様!私にもしてくださいませ!」
エルナトはキドに抱き付く。
「さて、カイル君。私は君の師匠から伝言と頼みごとをされているんだ。」
カイルを離しエルナトに抱き締めるとキドは言った。
「…何をです?」
キドはポケットから手紙を取り出すと、カイルに渡す。
「はい、これ。外に出て一人で読みなさい。そのあとで、答えを聞くよ。」
どこか分からない場所で、男が歩く。
「久しぶり。どう?会えた?」
声をかけられ男は答える。
「えぇ、あなたの思っているよりは成長していましたよ、カペラさん。」
そう言って男は立ち止まる。
「カノープスさん、今回は何の用なの?」
大きな椅子の前でカペラの問いにカノープスは言った。
「あなたの力が欲しい。」
カイルは封筒を開ける。
〈愛しのカイル君へ
あなたが私に追い付こうとするなら、ここで選びなさい。
キドに今のあなたを変える力を託しています。
あなたの前に出てきた者達も使う、対等に戦える力です。
しかし、このまま仕事だけをこなすならキドにそれを教わる必要はありません。
そして、ここから先は戻れない事を忘れないで。
追記、この浮気者。〉
「決まったかい?」
キドは入ってくるカイルに問う。
「勿論。教えてくれ、力が欲しい。」
そうかい、わかったよ。と、キドは言うと手を何もない所に出す。
「広い方が良いよね?休む所しか無い場所にしようかな。」
キドがそう言う間に、景色が変わっていく。
木造の家から、浜辺へと変わる。
「さあ、始めよう。僕が教えるのは君のムラのある魔法の改善だ。見てたよ?良いところまで行くけど、全然ダメじゃないか。」
「はぁ…。」
どうやって見ていたのかという疑問を抱きながら、構える。
「僕が教えるのは、【魔力剣】。手取り足取り教える前に、君の力の底をみたい。長持ちする方を選んで交竜して?」
「(勝手に略されてる…)いきます、【交竜龍依!!】」
雷と同時に、爆炎。
畏炎龍のダイモスと、継雷竜、リーレイの同時装着をカイルは選択した。
「カイル様はなぜ炎属性の方を?私が見たときは風属性の方が長く持続していた気がしましたが…。」
「知らないのね、お姫さま。見て。」
エルナトにアトリアは自慢気に言う。
カイルの赤い背から、羽が生える。
「へぇ、飛べるのか。余ったエネルギーで。」
キドは楽しそうな顔をする。
カイルはゆっくりと宙に浮く。羽の辺りは少し歪んでいる。熱を使い空に上がっているのだ。
「行きますよ!…」
「いつでもどうぞ?」
To be continued




