二人が会うにはあまりに遠くて
心機一転頑張りたいです。
お願いしまーす
魔法階級
魔法士には階級があり、
下級魔法士。
上級魔法士。
賢者級魔法士。
賢者。
特別聖賢者級魔法士(特級)。
聖賢者。
がある。
この世界での聖賢者はただ一人。
すべての国を統べるシリウス王である。
俺と師匠が別れてから、二年が経っていた。
俺は師匠から紹介された騎士ミザールと、彼の右腕である召喚士のミアによる修行と魔法の総復習をして過ごしていた。
幼馴染みのアトリアに起こされ、アトリアのご飯を食べ、アトリアと笑いながら眠りにつく。
そんな毎日で心に引っ掛かった物を忘れようとしていたんだ。
でも、一週間前のミザールからの言伝てで俺はまた何とも言えない喪失感に引き戻された。
『大地の国の魔女を救う。』
俺の今回の仕事。
俺は雷の国から《魔具》のボード、浮きながら進む遊具のような物で到着し、一日が過ぎた訳なんだが、何せこの国は広い。
ずっと真っ直ぐの道が大きな城まで続いているんだが、全く辿り着ける気がしない。
『あそこはカペラとも繋がりがあるぞ。』
そういったミザールの言葉を信じて、俺は歩く。
彼女に、会えなくても、何か手がかりがあると信じて。
数ヵ月前
「ミアは質問をしたいです、カイル。」
「なんだよ、また料理の失敗作を食べろって言うのか?」
いつもの会話だ。
「ミザール様はどんな女性が好みだと思いますか。あなたなら食事の時に小耳に挟んでいるかと思いまして。」
ミアは真面目に、しかし無表情に訊いた。
「あぁ、ミザールは臣下とは結婚しない。って言ってたんだったか?振り向かせる為に、か。」
ミアは頷く。
「はい、私なんかが烏滸がましいのは分かっているんです。でも、結ばれたい。そう思うのです。」
(いや、どう考えてもミザールのミアへの信頼とかそういう扱いは女性への振るまいを越えてると思うんだけどなぁ…。)
それでいて、ミザール本人はミアを手に入れたいが臣下との関係を越えるにはどうしたら良いか、等と訊いてくるので、つくづく良い二人だ。と、カイルは思う。
「あ、カイル。私には妹が二人いるのは知っていますよね。」
ミアが唐突に言った。
「なんだよ、急に。どうした?」
「その一人にアプラという名の魔法士がいるのですが。気を付けて欲しいのです。」
ミアはいつもには無いトーンで言った。
「彼女は、竜に憧れていました。父と同じように。私達は竜に憑り付かれた血族。その中でも、アプラはずば抜けて竜に執着していました。もし会うことがあれば気を付けてください。ミザールの仕事の先で出会う事があれば、対策を練るべきです。あなたなら問題ないとは思いますが。ミアは念を押しておきます。」
『もしかしたら、今のカペラ様とも繋がりがあるかも知れません。』
そんな風に言った。
道の先で、ぶつかり合う事も知らずに、カイルは思い出した。




