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3 小話集

三本立てです。

◆ひなた観察報告書

※活動報告再録



 ひなたを不知火から預かるに当たって、不知火の方から「ひなたの様子をちゃんと報告すること!」と約束させられた。


 という訳でひなたの行動を報告書にまとめることにする。



---------------------------------------------------------



○月×日 晴れ


 家に帰ると、ひなたが初めて寝返りをしたと報告された。本当に寝返りをしたのか確かめようとして眠っている姿を見ていたが、途中で起きてしまい、泣き出してしまった。

 泣いているひなたをあやすが効果は無い。「あなたの顔が怖くて泣いてるんですよ」と言われ、不用意に近づけなくなる。




 △月□日 曇り時々雨


 ひなたがはいはいが出来るようになった。しかしまだおぼつかないようでよく途中で潰れている所を見る。しかし特に泣くこともなくはいはいを再開し、途中で諦めることなくゴールである黎名の所まで到着した。意外と根性があるようだ。




 ◎月◇日 晴れ後曇り


 ひなたが黎一と黎名と遊んでいる。二人をにー、ねー、と呼んでいる。二人と遊ぶのが楽しいのかにこっと笑っていて可愛い。近くに行くと泣かれるので、後で録画したビデオを見せてもらうことにする。




 ▲月☆日 晴れ


 ひなたがとうとう歩くようになった。しかしすぐに転ぶ。べちゃっと床に激突したかと思えば何事もなかったかのように起き上がる。はいはいの時も思ったが中々我慢強い性格のようなので、騎士に向いているのではないかと思う。




------------------------------------------------------




「……」



 約束通り報告書を不知火のやつに渡したのだが、やつは読みながら何故か震えていた。



「お前、報告書なんだからもっと細かく書けよ! もっとひなたの可愛さを全面に出してだな……というか、ひなたが転んだのにのんびり報告している場合か! 転ぶ前に助けろ、何のための運動神経だ!」



 多分助けてたら泣かれたぞ。

 理不尽に怒られながら、こうやって書くように、と陣の報告書を渡された。



 ……お前、可愛いしか書いてないじゃないか。ただでさえうちよりも不知火から送られてくるビデオは少ないのだ。もっと詳しくどこが成長したのかを……(以下略)。


(親父同士のどうでもいいやりとり)






◆子供部屋

 ※会話文のみ



「当主様、真剣な顔で何をなさってるんですか?」

「佐伯か、ちょうど良かった。将来もしひなたが泊まりに来た時の為に部屋を作ろうと思って計画を練ってたんだが……どうだ、力作だろう」

「……あの、本当にこれで作るつもりですか?」

「何かおかしいか? 女の子はピンクが好きだから、部屋に統一感を持たせる為に合わせてみたんだが」

「いやいやいや、いくら好きでも限度というものが……」

「ベッドは天蓋付きにしてみた。女の子の夢だろう」

「それは問題ではないのです。もう少し他の色も取り入れた方が」

「そうか? でも姉さんの部屋もこんな感じだったし、きっとひなたも気に入るだろ!」

「あの方の美的センスを参考になさるのはどうかと……」


(どピンクの部屋はこうして作られた)






◆魔術科の会話(高三後半あたり)


「あー、彼女ほしいー!」

「佐々木、黙れ」



 俺の悲痛の叫びに、陣は本を読みながら酷い言葉を投げつける。

 仕方がないので暇そうにしている大吾郎に話を振ることにした。



「なあ、大吾郎もそう思うだろ? 彼女欲しいって!」

「え? いや、俺は……」

「照れるな照れるな、一人身の男なら誰だってそうおも――」

「大吾郎なら彼女いるぞ」

「は?」



 本から顔を上げた陣が淡々と言う。何か聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたが……気のせいだろう。



「なあ、居るわけないよな?」

「……悪い」

「はあああっ!? てめえ、裏切ったな!」



 大吾郎の襟を引っ掴んで揺さぶる。「ちょ、締まる」とか何とか言っているが、うん、気のせいだ。今日は幻聴が酷い。



「……誰だよ」

「騎士科の、ミネルバ」

「はあ!? あんな美人とお前が? はあー、なんで俺には春が来ないんだ……」



 同じ平凡顔として親近感を覚えていた同志が、まさかの抜け駆けである。しかもあんな綺麗な子と付き合ってるとか……。



「呪うぞ」

「真顔で言うな、怖い」

「くそー、同志がいなくなった。陣には言うまでもなく嫁がいるし……まあ、あいつが嫁だったら俺は逃げ出すけどな。殴られたら一発で死にそうだし」



 初等部の時点で一発で気絶したことを考えれば、今もう一度右ストレートをお見舞いされたら確実に天国へ行けるだろう。



「……殴られるようなことするのが悪いんだろう」


 陣が呆れた顔を隠さずにそう口にすると、まるで図ったかのように教室の入口からひなたが顔を出した。


「陣ー、ちょっと来てー」

「話をしてたら嫁が来たぞ」

「……」



 陣は無言で立ち上がると、廊下で待っているひなたに早足で近づいて行く。


 それを眺めながら、俺は何とも言えない気持ちで大吾郎を振り返った。




「なあ、あいつ当然のように嫁発言スルーしたけど」

「……嫁なんだろ」


(嫁です)




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