第一話
流血場面もあります!
苦手な方はお引き取りを(^_^;)
綺麗な森の中を一台の自転車が通っていた。
「後どれくらい?」
私は独り言のようにポツリと呟いた。自転車には私自身しか乗っている者はいない。
「後一キロくらい?マキはどー思うの?」
誰かが答えた。その声は私と同年代くらいの女の子の声だった。私は不信がる事もなく、平然と答えてみせた。
「うーん…五十キロ?」
「長すぎるでしょ」
「この森にゴールがあるとは思えない」
「なるほど」
次はハッキリ聞こえた。モデルガンから声が。今までの謎の声はすべてこのモデルガンから発せられたものだった。
「あっ」
モデルガンが声をあげる。
「どうしたの?サリ」
私は長い黒髪をフワリと揺らしながらサリに目をやった。
「…正しいのはどうやらマキじゃないようだね」
「はあ?」
「前をみてご覧」
私は言われるがままに前を見た。すると街が見えた。目的地についたようだ。
「本当はもうつくって分かってたけどね」
私が顔を赤らめながら呟くと、サリが一言、「嘘つけ」と言った。
私は街におりるとそのまま役場に向かい、地図をもらってきた。そして”早矢無村”の場所に印をつけた。”早矢無村”は、私の祖母が住むところだ。最近は殺人事件が多発しており、この街に入る事は禁止されていた。
しかし、ここ最近の二週間は事件がなくなり、観光が再開した。
険しい道をしばらく通ると、一人の男が立っていた。手にはナイフが二本。私は自転車から降り、できるだけ冷静な口調で男に話しかけた。
「私を殺したいのですか?殺人はできるだけしないほうがいいと思いますが、それでもナイフを捨てませんか?」
「…」
男の目は血走っていた顔も赤い、完全に興奮状態だ。
「話して何とかなるわけじゃなさそうだねー」
サリが緊張感の無い口調で事実を話す。確かに私の話をこれっぽっちも聞いていないだろう。
「お相手するしかないかあ、サリ、すこし借りるよ」
そう言ってサリ、モデルガンを構える。モデルガンでは人を殺せない。しかし、うまくいけば気絶させれる。それにしても重い。モデルガンとは思えない重さだ。
「ちょっと重くない?」
「あれ、言ってなかった?ボクリヴォルバーだよ」
サリが拍子抜けの声で言った。私は驚きつつ、冷静さを取り戻した。今は目の前の男がさきだ。
銃もモデルガンも使い方は同じだ。一応モデルガンには慣れている。焦るな。
ガシャン!
私はリヴォルバーを構え、目の前の男に銃口を向ける。距離は十メートル弱。弾は十分すぎるほどに届く。ナイフを持つ相手と戦うには有利な距離だった。
男が動く様子はない。ならこちらからやらせて頂くか!
するといきなり男がナイフを構え突っ込んでくる。
「うおおおおおおお‼」
「⁈」
あまりにもいきなりの出来事に避けるのが遅れ、ナイフが頬に擦れる。祖母から護身術を教わってなければ死んでいただろう。隙をついて、男がナイフを振りかざす。
「うわっ!」
かろうじて避ける。数本黒髪が舞う。私は即座に姿勢を正すと、男の腹に思い切り蹴りをくらわせた。
「ぐはっ!」
男が大量の唾を吐く。それでも再びナイフをつかみ立ち上がる。そしてあろうことか、私とはかなり的の離れた所にナイフを投げる。
「?」
一瞬男の行動がりかいできなかった。しかしすぐに行動の意味を知る。自転車が私に向かい倒れる。ナイフは見事にタイヤに刺さり、重い胴体の部分だけが倒れてくる。よけてもライトのガラスが飛ぶだろうし、隙をつかれるだろう。
「もったいないけど仕方ないかあ…」
どんっ!
リヴォルバーの弾が椅子の部分にあたり、そのまま私とは反対側に倒れた。そして弾の反動で取れた椅子をすぐに男に投げた。
「ぐあぁ!」
椅子は見事に腹を直撃した。先ほどの痛みが蘇ったのか、男が苦痛の表情を浮かべる。
私は静かに狙いを定める。
「や、やめてくれっ!」
「……」
パンっと乾いた音が響いた。