表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

追放の理由

 なんで私が国を追放されるはめになったか、話そう。



 私の名前はエセル。

 パイシーズという国のド田舎で猟師の娘として生まれ、11歳の時に戦争で村が壊滅し孤児となったので生きるために軍に入った。

 このご時世、珍しくも何ともない生い立ちの人間である。

 

 レグルスとは15歳の時に出会った。

 忘れもしないどしゃ降りの雨のあの日、『街でケンカふっかけてきた元気なガキだよ』と隊長が言ってボロ雑巾のような状態の少年を私に押しつけてきたのだ。

 介抱してみるとあんまりに綺麗な金髪と顔をしていたので、呆気に取られたのを覚えている。


 それからレグルスはうちの部隊の一員に加わり、華やかで剣技にも長けていたため、あっという間に部隊の中心と目される存在になった。

 私はと言えば、孤児になって死にかけていた時に隊長の世話となったのが縁で隊長の遊撃部隊にいた弓の腕前だけが取り柄の弓兵だったから、輪の中心にいるレグルスとはそんなに関わることもなかったように思う。



 パイシーズ王国は北方の隣国ジェミニと数十年に及ぶ戦争を続けており、戦をしては小康状態という名の平和が来てまた戦をするという状態だった。

 私は隊長にくっついて戦場に出ては敵が気づかない所から矢を射かけ、敵部隊を混乱させるのが主な役割で『夜陰の射手』と蔑まれつつも恐れられていたらしい。


 レグルスはその剣の腕と敵を斬り伏せる戦い方の苛烈さで有名となり、隊を任されてもおかしくはない武勲を立てていたが、素行が悪いせいで上層部に目をつけられ相変わらず遊撃部隊の切りこみ要員として戦場を駆けていた。



 そんな日々が五年ほど続いた時、隊長が戦闘で命を落とした。

 残忍にして類まれな馬術の才を持つため自ら騎兵隊を率い戦場に立つジェミニの兄王ザムエルに斬り殺されたのだ。



 その後の記憶は私が混乱していたせいでひどくあいまいだ。

 副隊長の命令を無視して単身でザムエルの騎兵隊をつけ狙い、暗殺者のごとく粘り続けた結果、三ヶ月後にザムエルの眉間を射抜いた、らしい。

 そんなに時間がたっていたという自覚は全くなかったけれども、あの男を射殺した瞬間だけはよく覚えている。


 まさか自分が殺されることはない、という驚愕に満ちた顔。

 眉間に突き刺さる矢の力のまま仰向けに馬上から落ちる瞬間を、確かに私は見た。




 その後、栄養失調と疲労で死にかけていた私を味方の兵士が見つけ、パイシーズ軍の陣に連れ帰ったのだと言う。


 軍に帰ってすぐは私の扱いは英雄のそれだった。

 正直、愛国心のかけらもないので隊長の仇を討ったということ以外、私は何も考えていなかったからその扱いにとまどった。

 敵国のトップ、双子の王の片割れを殺した私にどんな報償が与えられるかで部隊の連中が盛りあがっていたようだ。


 しかし、私に告げられたのは国外追放だった。


 いくら軍規違反を犯したとはいえ、総大将の一人を討った者に重い処罰が下ったことに皆が驚いた。


 この処罰にはからくりがあったのだ。


 ザムエルの死に続いて弟王テオドールも死に、政権が代わったことによる一時的な和平が成立したということも理由のひとつだ。


 けれど最も大きな理由は、ある伝説によるものだった。


 『ジェミニの双王』の片割れを殺したことでふりかかるという災いを回避するために上層部は私を追放することに決めたのだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ