第9話 臨時パーティ
ハルトが偉そうなのは仕様です
「うまい!」
「おや、口にあったかい?ポテトパイなら おかわりがあるよ。」
「おお!もらうよゾーイさん!」
ハルトは宿:鈍色の寝床に戻り夕食をとっていた。大将のダミスが作る料理は少しばかり大味ではあったが、下処理がしっかりしているのか、味に深みがあり量も十分なものだった。ドイツパンのような固めのパンに煮込んだ肉料理、じゃがいものパイ、少し酸味のあるドレッシングがかかった葉物野菜のサラダ、トマトを煮込んだミネストローネのようなスープとかなり豪華なラインナップ。比較的若い傭兵の利用者が多いこともあり、夕食はかなりボリューミーにしているとのことだった。
ハルトは人が作った温かい料理はいつぶりだっただろうかと思いながら、無限に食べられるのではないかと思うほどの若い肉体に感謝しながら腹を満たすのだった。
朝と夜は基本的に宿:鈍色の寝床でとることにし、ゾーイに頼んだハルトは、ふと思い出した。
「そう言えば、風呂ってあるのか?」
「風呂?ハルトは貴族の坊ちゃんだったかい?」
「貴族なんて見たことも無いが・・・風呂が好きなんだよ。」
(日本人だからな・・・)
「へぇ。ずいぶん豪奢な趣味をお持ちだこと。残念ながら鈍色の寝床には風呂は無いよ。この季節は裏の井戸から水を汲んで体をふくことはできるから、それで我慢しとくれ。」
「まぁ仕方がないか。公衆の浴場なんてものも無いんだな?」
「湯を用意するのが難しいからね。貴族の屋敷には魔石回路でお湯を作って風呂に入るなんてこともできるらしいけど、かなりのお金がかかるみたいだよ。」
「洗濯は?」
「石鹸を買って自分で洗うんだね。今日はもう雑貨屋がしまっているから、どうしても欲しいなら宿にあるものを譲ってあげるよ。しかしアンタ、ずいぶんきれい好きだね。服は洗いすぎると痛みが早くなるよ?」
「臭いよりましだ。」
「ははっ、そうかい。じゃあ後で部屋に届けてあげるよ。鉄貨1枚にまけておくさ。」
(相場が分からんから まけてくれてんのか判断できねぇよ。)
ハルトは心の中で文句を言いつつも、当たり障りのない返事をしておく。
「ああ、頼む。」
夕食を終え、ゾーイから石鹸を買ったハルトは、井戸の水で絞ったタオルで体を拭いて、ライラがリュックに詰めてくれていた下着に着替えて異世界初めての一日を終えるのだった。
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ハルトは朝起きて、朝食をとった後、とりあえず昨日着ていた肌着などを洗濯し窓際に干してから傭兵組合に足を運んだ。
「ハルトさん、おはようございます。今日はどうされました?」
「本格的にモンスター討伐を始めようかと思ってるんだけど、今日も魔領域の森に行ってきていいのか?」
「あ、そうですね。昨日お伝えしておけばよかった。今日は間引きを行う予定でいまして、ディミトリさんのパーティが対応される予定なんです。もし良ければ同行していただいて、間引きを手伝われますか?」
「そう言えば、定期的に間引いてるって話だったもんな。どんなパーティなんだ?」
(どうせなら女の子がいるパーティと一緒が良いんだが・・・)
「男性3人のモンスター狩り専門のパーティで、結構熟練の方々ですよ。リーダーはディミトリさんという剣士で、スカウトのアリストさん、ヒーラーのイアソンさんの3人です。パーティ名はアンドレイア団ですね。」
「へぇ、ヒーラー。回復魔法が使えるのか。」
「はい。ただ、一度に何度も魔法を使える人自体が少ないので、薬なんかも使いながらサポートする感じですね。魔法でガンガン回復できるのは宮廷魔導士レベルになってしまいますから。」
(魔法って連発しないものなのか?俺もまぁ2連射しかしてないけど・・・)
「せっかくなんで、同行させてもらおうかな。ソロだと何かあった時に困りそうな気がしていたから丁度いい。」
「わかりました。ディミトリさんに相談するので、あちらの談話席でお待ちください。そうそう、先輩たちに同行させてもらうんですから態度は気を付けてくださいよ。」
エレナがアンドレイア団にハルトのことを説明する間、ハルトは談話席で一息入れることにした。
(魔法が使える奴がいるなら、魔法について聞いてみるかな。回復魔法と攻撃魔法は違うか?まぁ何かしら知っているだろう。)
ハルトが魔法について考えていると、大柄の男性を先頭に3人の男たちが傭兵組合に入ってくる。受付でエレナと何か話し始めた。
(デカいのが剣士、細いのがヒーラーか?あいつらがアンドレイア団っぽいな。確かに熟練の傭兵って感じの雰囲気だ。強いのかな。)
エレナと少し話した3人は、エレナに案内されてハルトの方に歩いてくる。ハルトは立ち上がってエレナに目で合図すると、エレナは軽く頷いた。
「アンドレイア団のみなさん、彼が今回同行してもらう新人のハルトさんです。ゴブリンの間引きに連れて行って、いろいろと教えてあげてください。」
「ほぅ、なかなかいい体をしているじゃないか。俺はディミトリ。アンドレイア団のリーダーだ。」
ディミトリが最初に声をあげ、中肉中背の男性がスカウトのアリスト、細い男性がヒーラーのイアソンと名乗った。
「オレはハルトだ。剣はそこそこ使える。今日は色々と見せてくれ。」
(あー!もう!態度は気を付けてって言ったのに!)
「ちょ、ちょっとハルトさん。」
「いや、いいさエレナさん。傭兵なんざそんなもんだ。新人の根拠のない自信もよくあることだしな。」
(ん?今こいつ挑発して来たか?フン、まあいい。先輩の実力とやらを見せてもらうとするさ。)
「準備はできているか?」
ディミトリがハルトに問うと、ハルトは腰に下げた剣を叩いて応える。
「こいつがあれば十分だ。」
自信満々に応えるハルトを見て、ディミトリの後ろでスカウトのアリストがため息をついていた。
エンカウント:アンドレイア団:ディミトリ、アリスト、イアソン
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