第8話 モンスター図鑑
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それ以上ゴブリンに遭遇することなく森を出ることが出来たハルト。空を見ると太陽はまだ昇ったままだったが、間もなく沈みかけてくるように思えた。
(あまり長居をしたつもりはなかったけど、それなりに時間が経っていたのか?時計がないと不便だなぁ。最近はスマホを持ち込めるような異世界転生もあるってのに、ライラはわかってねぇなぁ。サービスが足りんのよ、サービスが。)
心の中で転生の仕様に対して毒づきながらハルトは街道を戻っていく。
(そうか、この世界の街道には電灯なんて無いから、日が沈んでくるとあっという間に暗くなっちまうな。急ごう。)
日本にいるときの感覚で行動しがちではあるが、見慣れた電灯やアスファルトの道路がない この世界の街道を見て、ハルトは世界に順応しようと気持ちを改める。肉体の能力を確かめる意味も込めて駆け足で移動を始めた。
それなりな速度で移動できたのか、太陽は空に昇ったままの時間に辺境都市コリンの東門に到達することが出来たハルト。傭兵組合の員章を門番に見せて入場する。
(とりあえず傭兵組合で魔石を換金してもらうか。ゴブリンの魔石は6個あるから1個当たり鉄貨5枚で・・・鉄貨30枚・・・銅貨3枚か。宿1泊分。どうなんだこれは?まぁ時間があればもっと稼げるからまぁゴブリン狩りだけでも何とかその日暮らしくらいできるのかね。)
今日の稼ぎを計算しながら傭兵組合に向かい、組合の建物のドアを開ける。受付にはエレナではなく、少し年配の穏やかそうな女性が座っていた。
また、エントランスホールの談話席には2組6人の傭兵らしき男女が座ってそれぞれ話をしていた。仕事帰りの傭兵たちのようだ。
「ゴブリンを狩ってきたから魔石を換金してもらえるか?」
「いらっしゃいませ。ハルトさんですね。本当に魔領域の森まで行って帰ってこられたのですね。」
ライラからハルトのことを聞いていたのか、年配の女性はハルトが名乗らずとも、ハルトのことを知っているようだ。
「まぁそこまで遠くなかったし、様子見程度で帰ってきたからな。魔石は6個だ。」
「おやまぁ。この短時間で6個も・・・。拝見いたしますね。」
ハルトから魔石を受け取った女性は引き出しからルーペ・・・虫眼鏡というより宝石ルーペのようなものを取り出し、魔石をじっくり確認する。
「はい、確かにゴブリンの魔石6個ですね。報酬は銅貨でよろしいですか?鉄貨でのお渡しの方が良いですか?」
「銅貨でいい。」
銅貨3枚を受け取り革袋に入れるハルト。
「魔領域の森にいるモンスターについて知りたい。まずはゴブリンの武器や群れ方なんかも知りたいんだが。」
「おやまぁ、お若いのに勉強熱心でらっしゃる。モンスターについての情報は右手奥の扉の向こうにある図書室にあるモンスター図鑑をご覧になると良いですよ。貸し出しはできませんが、中で読んだり、メモを取ったりすることが出来ます。詳しくは司書にお声がけください。」
(若いのにって・・・若い時こそたくさんの情報を得る努力をしないといけないんじゃないか?クソッあの後輩野郎・・・ろくに社会のことも勉強せずに、上司受けだけで出世しやがって・・・)
過去の苦々しい思い出がハルトの心をよぎる。しかし自分はもう日本にいる訳ではないと頭を振って記憶を振り払った。
「ああ、わかった。行ってみる。」
受付嬢に教えてもらった通り、受付の右奥には扉があり、中に入るとハルトの身長よりも高い本棚が2列ほど並んでいた。簡易的なカウンターには眼鏡をかけた男性が座っている。
(この世界にも眼鏡があるのか。そう言えばさっきもルーペで魔石を見ていたし、ガラスの加工ができる技術力はあるのかね。ガラス自体は紀元前からあったんだったか?でも眼鏡レベルになると16世紀とかそれ以降だったような・・・近代への移行期じゃなかったか?この世界の技術水準がよくわからんな。)
「モンスター図鑑を見せて欲しい。」
「おや、傭兵かい?見ない顔だね。モンスター図鑑は手前の棚の上から2段目、左端から並んでいるよ。この辺のモンスターを見るなら一番左端の図鑑になる。」
ハルトは教えてもらった通りに本棚から図鑑を引き抜く。革の表紙にパピルスのような紙を綴じたもので、開くと左のページにモンスターの姿が描かれた絵と簡単な説明、右のページには攻撃手段などの詳細が記載されていた。
最初の方にゴブリンのページもあったが、一番最初にはモンスターとはどんな存在なのかと言うことが書いてある。ハルトはまずそこを読むことにした。
(なるほど、モンスターってのはどこから生まれてくるのか良く分かっていない不思議な存在なのか。体はプラーナとかいう謎エネルギーでできていると・・・。だから倒すと光の粒になって消えてしまうんだな。死体が残るとグロイし、放置すると疫病とかも流行りそうだから良いことなんだが、モンスターの素材を使った装備なんてものや、肉なんかは手に入らないと。まぁ解体なんてしたくないし、死体を持って帰ってくるのも大変だ。)
異世界パンチャーのモンスターは、人間が記録を残し始めたころにはすでに人類と敵対している存在である。その生態は解明できていないことが多く、なぜ生まれ、なぜ人類と敵対するのかも分かっていない。
その体はプラーナでできており、装備している武具もプラーナでできている。そのため、いわゆるドロップ品は魔石のみである。
一説には魔王が無限に呼び出す魔族の兵であるとも言われる。また、モンスターには元になった魔獣と呼ばれる存在がおり、魔獣が自身の眷属であるモンスターを生み出していると主張する学者もいる。
ただし魔獣については500年前に勇者が数体倒したらしき記録があるものの、遭遇した記録がそれ以外になく、空想上の存在とする学説も多い。
モンスターは森やダンジョンと呼ばれるような洞窟などに多く存在しており、深部にはモンスターを生み出している魔力だまりと呼ばれるエネルギー体があるらしい。
しかし、その魔力だまりも500年前の勇者が一つ破壊し、高密度な魔石を発見したという伝説が残るのみである。到底、人が到達できるような場所には存在していない模様。
(つまり、ほとんど何もわかってないってことか。ゴブリンが持っていた武器も一緒に消えていた理由は分かったが。で、ゴブリンのことはどれくらい分かっているんだ?)
ゴブリンのページを開くハルト。ゴブリンについての情報は多いようで、ゴブリンのことだけで見開きで3ページ、びっしりと情報が書かれている。
(ゴブリンが持っている武器は、こん棒と石斧、石のナイフ・・・弓なんかの飛び道具は無しか。体も120cmくらいで罠を仕掛けるような知恵もないと・・・。)
パラパラと書かれていることを読んでいくハルト。脅威となるような情報がないままページをめくっていくと、簡易的な防具を付け、金属の片手剣を持ったゴブリンが描かれているページがあった。
(ん?ゴブリンファイター・・・上位種か・・・ほーゴブリンを5体率いていると。武器も金属製だし一気に強くなっている感じがするな。魔領域の森での討伐報告もあるのか。クラウノスなら一撃だろうが、神剣だけで戦うとなると、連携が少し怖いか?)
ゴブリンファイターに率いられたゴブリンは石を投げて牽制してくることもあるらしく、魔導士もしくは弓使いを含めたパーティで戦うことが望ましいと書かれている。
(もし出会っちまったら魔法で速攻した方がいいか。でも魔石がなぁ。)
夢中になって図鑑を読んでいたハルトだったが、お腹がくぅ~となり空腹を訴え始めたため、今日のところは終わりにしようと図鑑を戻して宿に帰るのだった。
エンカウント:マイア(妙齢受付嬢)・司書
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