第63話 道は開かれ
ハルトたちはオウルコス村の村長に広間に通される。奥方と思しき女性が5人に不思議な味のお茶を淹れてくれた。
「このお茶・・・初めて飲みますね。」
「はい、わたくしも初めてですわ。不思議と心が休まるような・・・。」
「旅の疲れも癒えるような気がするな。」
女性陣がお茶の温かさに感嘆の言葉を漏らす。その言葉を受け村長が教えてくれる。
「これはオウルコスでしか栽培されていない茶葉ですじゃ。行商人が言うには、外に運び出そうとすると急激に劣化するらしく、この村の中でしか飲めないとか。」
「そう言えば、この村は不思議なところですね。モンスターに襲われたような痕跡もありませんし、不思議な安らぎがあるような気がします。」
ソーシエラが村について感じた違和感を問う。
「この村は神の力で守られているのでしょうな。害をなそうとする者は近づけないようなのですじゃ。モンスターも、人も、ですじゃ。」
「なるほどな。村は簡易な柵のみ、門も誰も守らず。おかしなものだと思ったが、神の力か。害せるものなどおらんということだな。」
「そうか。ってことは魔王城への道ってのも信ぴょう性が増してくるわけだ。」
「でも村人たちは知らない感じだったにゃ。村長しか知らないにゃ?」
「そうですじゃ。村長にのみ代々口伝されてきておりますじゃ。500年前の勇者様に道を示したのも、当時の村長だったそうですじゃ。そして勇者様は見事に大命を果たされた・・・。」
「500年前のことまで伝わっているのですね。歴史学者が聞いたら調査に飛んできそうです。」
「でもこの平穏を乱すものは近づけないかもしれませんわね。」
ソーシエラの言葉にエヴァンシアが微笑みながら相槌を打つ。
(エヴァは王族の割には平民の気持ちが分かってるな。アイトリア王の教育が良いのか、この子自身の資質なのか。例の劣等感のせいかな?)
「で、だ。オレ達の目的である魔王城への道に案内してもらおうか。」
「わかりました。案内しますじゃ。ただ、儂どもも道については見たことがないですじゃ。勇者の証を見せる場所に案内しますじゃ。」
村長の後について村のかなり奥にあった祭壇のような場所にたどり着くハルトたち。村長の言う通り、道はなく、村の柵の奥には森が見えている。
「この祭壇・・・不思議な・・・いえ、強いプラーナが込められていますね。」
「ん?確かに強い力を感じるな。」
「勇者の証とはなんでしょうか?ハルト様が祭壇に立てばよろしいのでしょうか?」
「んー、とりあえず祭壇に立ってみるか。」
ハルトが祭壇に上がって待ってみる。
「何も起きないにゃ。」
「村長は何か知らないのか?」
レーヴェルの言葉に村長は首を振る。
「残念ですが、儂らに伝わっているのはこの祭壇に勇者様を案内することだけですじゃ。」
「祭壇には何かありませんか?ハルト様。」
ソーシエラの問いにハルトは祭壇を調べ始める。そして何かを見つけた。
「この台みたいなやつに、これはなんだ?穴って言うか溝みたいなものがあるな。あーこれはアレだな。」
ハルトが何かに気付いたようで、神剣をさっと抜きはらう。そして溝に剣を突き刺した。
「何も起きないにゃ。ドヤ顔が切ないにゃ。」
(げ!マジかよ。いや待て・・・)
「見てろって。」
ハルトは内心冷や汗を流しながらも神剣にプラーナを込める。すると神剣から祭壇にプラーナが流れ始め、魔法陣が浮かび上がり光を放つ。
「眩しいですわ!」
強い光が一面に放たれ、その場にいた全員が目をつぶる。そして目を開けたときには、祭壇の奥に緑の淡い光を放つ門が現れていた。
「こ、これが魔王城につながる道ですの・・・?」
「明らかに奥の森が見えません。どこか別の場所に繋がっているのは間違いなさそうです。」
「じゃぁまぁ行くとするか!」
「村長様、ありがとうございましたわ。わたくしたちは使命を果たしてまいりますわ。」
「お気をつけて行かれてください。皆さまご無事で・・・。」
村長に見送られ、光の門をくぐるハルトたち。ハルトたちが門をくぐると光は立ち消え、門も消え去っていった。
一方、ハルトたちが門をくぐると不思議な空間に出ていた。門から洩れていた緑色の光に包まれた道が真っすぐに繋がっている。後ろを見ると門がそこにあったが、その先は見えなかった。
「これ、また門をくぐったら村に戻るのかにゃ?」
「正直分かりませんね。神の作ったものである以上、人にどうこうできる物ではないでしょうし。」
「魔王を倒した後にもう一度来ればわかるさ。さぁ行こうぜ!」
ハルトの言葉は何ら根拠のない勢いだけのものであったが、魔王と言う脅威に立ち向かう恐怖からか、彼女たちには頼もしく思えた。
歩くこと20分ほど、光の先に何かが見えてくる。そこは堅牢な城壁に囲まれた城の中庭のような場所だった。
「ここが魔王城・・・。」
「魔王の城と言う割には、人類の城と同じような作りですね・・・。空も、何と言うか代わり映えのない青空ですし・・・。」
ソーシエラが言った通り、着いた場所は邪悪な存在が虚を構える禍禍しい場所という雰囲気ではなく、それこそアイトリア王国の城と変わらぬ人が住めるような場所であった。
「装飾などはアイトリアのお城とは違いますけれど、人が住んでていても不思議ではない雰囲気ですわね。」
「もっと禍禍しい感じを想像していたぜ。黒っぽい感じの建材とか、紫色の空とかな。」
ハルトたちが不思議な感覚を受けつつ会話していると、何者かの声がそれを遮った。
「無知なる下郎の感想と言ったところだな。しかしここは紛れもなく魔王様の居城。貴様ら程度が足を踏み入れてよい場所ではない。今なら見逃してやっても良いから、とっとと逃げ出すが良い。」
声のする方を向いたハルトたちが見たのは、巨大な黒い狼とその前に立つ黒い鎧を着た一人男だった。
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