第61話 襲撃の報
「オウルコスの村にゃ・・・。」
「分かるかミーア?」
「聞いたことないにゃ。東は未開の土地も多いにゃ。人が住んでいても王国の管理が行き届ていないところも結構あるにゃ。」
「私も聞いたことがないな。」
「ワタシもです。ですが、500年前の勇者が神託に導かれ、秘境を渡って魔王城にたどり着いたという伝説はあります。」
「王都まで戻った方がいいのか?」
「さすがにそれは遠回り過ぎませんか?」
「ソーシエラの言う通りにゃ。王都まで戻って調べてから戻ってきたら1年はかかると思うにゃ。」
「さすがにそれは長いな。」
(オレがこの世界に転生してからすでに1年近いんだよな。さらに1年か・・・メンドくせえ。)
「神託では東としか言われませんでしたわ。それだけで村を探すのは難しいのでしょうか?」
「うーん。とりあえずアンフィクリアに戻るにゃ。傭兵組合なら何か情報があるかもしれないにゃ。」
「わたくしも御使い様にもっと詳しい情報をいただけないかお祈りいたしますわ。」
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翌日、ハルトたちは来た時の道を戻りアンフィクリアに戻る。道中は来た時と同様にモンスターが出現することは無かった。
「とりあえず組合に向かうにゃ。」
ミーアを筆頭に傭兵組合に向かう。北の砦に援軍として向かっていた傭兵たちも戻ってきており、組合はいつもと変わらない賑わいを見せている。
「ミーアにゃ。あちしたちも北の砦から戻ったにゃ。報酬の受け取りついでに何か変わったことが無かったか情報が欲しいにゃ。」
ミーアが受付嬢に声をかけると思わぬ情報が入る。
「南の辺境都市コルンがモンスターの襲撃を受けました。城門が破られてかなりの被害が出たようです。」
「にゃ!?戦力が北に集中しているところを狙われたにゃ!?それでコリンは?死者もでたにゃ!?」
受付嬢の話によると、北の砦襲撃とほとんど時を同じくしてモンスターの大群が押し寄せたコルンだったが、襲撃の報を受け各都市からから王国軍が向かい到着した時にはすでにモンスターは全て去っていた。一番被害をうけたのは教会で、建物は全壊。建物内に籠城していた聖職者たちは全員亡くなってしまったらしい。他にも教会周辺の商会や住宅も破壊された部分があるが、それ以外の地区での被害はほとんどなく、人的被害もほとんどない。
ただし、傭兵組合は傭兵たちが集まっていたため、モンスターに集中的に狙われたようで、防衛に出た傭兵は数名を残して戦死、ハルトがゴブリンの間引きを教わったアンドレイア団の3名も帰らぬ人となっていた。そして受付嬢のエレナも重傷を負ったという。
「エレナが重傷にゃ!?」
「一命はとりとめたようですが、傷は残るんじゃないかって・・・。まだ嫁入り前なのにかわいそうに。」
「そもそも何で襲撃なんて許したにゃ!?」
「まだ詳しい調査結果は上がってきていません。ただ、スタンピードが起きる場合は必ず兆候があるはずですが、今回は魔領域の森の討伐任務にあたっている傭兵たちから報告もなかったようなんです。」
「兆候なんてあるのか?」
「だいたいは浅い層のゴブリンが異常に増えていたり、本来出ない層に強いモンスターが出たりにゃ。例えばハーピーの領域にゴブリンファイターが出てきたり、とかにゃ。」
(ゴブリンファイター!あの時俺がゴブリンファイターをやり合ったのはハーピーの層だったんじゃなかったか?)
ハルトはまだミーアに出会う前、魔領域の森でゴブリンファイターに痛い目にあったことを思いだす。あの時ハルトはゴブリンたちにしてやられたことを報告しなかった。
プライドが邪魔をして報告すべきことを報告しなかった。
(いや、あの時からかなり時間が経っている。オレが報告しなかったことは関係ない。関係ないはずだ。)
「ハルトどうした?顔色が悪いぞ?」
レーヴェルがハルトの様子を見て声をかける。
「い、いや何でもない。何でもなくはないか。オレもコリンに居たことがあってな。知り合いもいるから・・・。」
「ハルト様・・・」
エヴァンシアがそっとハルトの手を握る。だがハルトはエヴァンシアの純粋さが鋭い刃のように感じ、手を放してしまう。だが、エヴァンシアの悲しそうな顔を見てすぐに取り繕う。
「だ、大丈夫だエヴァ。心配しないでくれ。それよりミーアの方が知り合いは多いだろ。大丈夫かミーア。」
「心配だけど今から行ったところで できることは無いにゃ・・・。大丈夫・・・にゃ。」
ミーアも傭兵の世界に死に分かれは日常だと割り切ってはいるが、知人が多いコリンの襲撃には少なからずショックを受けていた。そのため、少し休む時間を作りながら調べようということになり、ハルトたちはしばらくアンフィクリアに滞在することになった。
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