第60話 光の抜け道
「今がチャンスです。急いで移動しましょう。そうしましょう。さぁさぁすぐに。今すぐです!」
ブランジの剣幕に押され困惑するリュコス。そこに騎士が割り込んで口論が始まる。
「何をそんなに急ぐ。大群討伐が完了して1日しか経っていないだろう。少しは休んだって文句は言われんぞ。」
「分かってない!分かってないですよ!エヴァンシア様が臥せっておいでの今なら勇者ハルトのパーティは動けません。我々は今のうちに彼らの今後のルートとは別の方面に向かって、二度と彼らと会わないようにすべきです!でないといつ巻き込まれるかわからないじゃないですか!」
「あー、ブランジ・・・ソーシエラさんの魔法の手伝いのことをだいぶ根に持っているみたいだね・・・。」
「そうです!二度とあんな目に合わないためにも、宮廷魔導士の上位席になんて関わっちゃいけないんです!さあ、リュコスの助けを待っている民は沢山いますよ!勇者として人助けにむかいましょう!今すぐに!!」
ブランジの執念にも似たもうプッシュによって、リュコスたちは西部地域、ハルトが勇者選抜決勝戦で戦ったニコルスの実家であるブラームス公爵領へ旅立っていった。
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「エヴァ。大丈夫か?」
「ハルト様・・・申し訳ございませんわ。わたくしのせいで足止めしてしまって・・・。」
「エヴァ様のせいではありません。ワタクシの魔法のせいでエヴァ様のプラーナが枯渇してしまったことが原因で熱が出てしまったのです。申し訳ございません。」
「ソーシエラ・・・謝らないでくださいまし。わたくしは皆さまのお役に立てたことが何より嬉しかったですわ。」
ハルトは弱弱しく話すエヴァンシアの額に手を当てる。
「ひゃ!ハルト様!?」
「熱はまだありそうだな・・・。まぁ今はゆっくり休んで熱を下げることを考えようぜ。」
ハルトはそう言い残して病室を出る。
「解熱薬になる薬草とか無いのか?それか体力がつく食べ物とか。」
ハルトの言葉に微笑みながらソーシエラが返す。
「ハルト様はエヴァ様のことになると過保護になりますね。」
「ガキの世話は大人の仕事だろ。」
「そうですね。では軍医に聞いてまいりましょう。」
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『エヴァ・・・エヴァンシア・・・』
「わたくしを呼ぶのは誰ですの?・・・」
『エヴァンシア。よくぞここまでたどり着いた。魔王討伐の旅は間もなく終わりを迎えるだろう。東に迎え。東に向かうのだエヴァンシア。オウルコスの村にある真の勇者にのみ開かれる光の抜け道を通って魔王城に向かうのだ。エヴァンシア・・・世界を救え・・・』
「旅の終わり・・・世界を救う・・・光の抜け道・・・御使い様・・・ハルト様・・・」
(ああ・・・ここは・・・)
エヴァンシアはぼんやりした思考の中、少しだけ開いた目に映るものが病室の天井であることを認識する。周囲は薄暗く、ベッドの横に備え付けられたナイトテーブルに置かれた ろうそくはすでに消えている。どうやら明け方のようだった。
(今のは・・・神託・・・。次に向かうべき道を示してくださったのですね・・・。)
エヴァンシアはベッドの中でそっと手を組み神に祈りをささげる。
「む?起きたのか?」
エヴァンシアが動いた気配を察知したのか、病室で休んでいたレーヴェルが声をかける。
「レーヴェルですか?はい。皆様はどちらに?」
「う・・・む・・・くわぁ・・・。」
気配を感じて目は覚ましたものの、まだ少し眠そうな声でレーヴェルは答える。
「ハルトたちは別の部屋だ。交代でエヴァを見ていたのでな。今日は私が当番だった。まだ夜が明けていない。具合はどうだ?もう少し眠った方が良いのではないか?」
「そうでしたか。ご心配をおかけしましたわ。熱は下がったみたいです。できれば皆さんにお伝えしたいことがあるのですが・・・夜が明けるまで待ちますわ。」
そうしてもう一度目をつぶるエヴァンシア。それを見てもう一度眠りにつくレーヴェル。しかしエヴァンシアは神託を忘れないために、その内容を反芻し続けていた。
そしてしばらくして日が昇り、窓から日の光が差し込んでくる。エヴァンシアはベッドから出ようかと思ったが、自分が動けばレーヴェルがまた起きてしまうことに気付きじっとしていることにした。
それから少しして病室のドアがノックされる。
「エヴァの具合はどうだ?はいるぞ?」
ハルトの声だった。
「ハルト様。おはようございます。」
「あぁエヴァ。起きていたのか。ん?ずいぶん元気そうな顔だな。熱は下がったのか?」
ハルトはエヴァンシアの顔を見て昨日までと様子が違うことに気付く。そしてそっとエヴァンシアの額に手を乗せた。
「あぁ大丈夫そうだな。一応医者には見てもらった方がいいな。ちょっと待ってろ。呼んでくるからな。」
「あっ。ハルト様。その・・・傍にいてくださいまし・・・。」
「おいおい、どうした?まぁいいか。」
(子供の頃、熱を出すと妙に不安になったよな。子供の頃は母さんが傍にいてくれたっけ?いやそうでもなかったか?)
ハルトは自分が子供の頃のことを想いだそうとしたが記憶は随分あいまいになっていた。前世の記憶はかなり薄くなってきていたことに気付いたハルトだったが、ハルトを見て安心したような、少し不安を含んだようなエヴァンシアの表情を見て、すぐに彼女のベッドの横に置かれた椅子に腰かける。そしてエヴァンシアの手をそっと握った。
「ひゃっ!」
エヴァンシアはハルトの行動に少しだけ驚き、頬を染めたが、それでも嬉しそうに柔らかく微笑んだ。そして意を決したように話始める。
「ハルト様・・・神託が降りましたわ。次に進むべき道をお示しになられましたの。」
「ん?急にどうした?」
ハルトはエヴァンシアの唐突な言葉に一瞬混乱したが、全員で聞いた方が良い話だと判断し、目を覚ましたレーヴェルに頼んでミーアとソーシエラを呼んできてもらうことにした。
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