第51話 魔物と言う存在
「はぁはぁ・・・あいつは・・・なんだったんだ・・・。」
ハルトは膝をついて荒い息をはきながらつぶやいたが、そのまま地面に伏してしまう。
「ハルト様!」
エヴァンシアがハルトのそばに駆け寄る。
「これは・・・プラーナ欠乏ですね。レーヴェル、ハルト様を運べますか?休憩小屋に戻りましょう。もう一泊するべきです。」
「わかった。人一人ぐらいどうとでもない。」
レーヴェルが気を失ったハルトを背負い、元来た道を急ぎ戻る。
「ハルト様は大丈夫ですの?」
「魔法を使いすぎてプラーナが切れただけですよ。そんなに心配なさらないでエヴァ様。1時間も寝れば起きられます。」
ソーシエラの言葉にほっと息を吐くエヴァンシア。「ハルト様が起きるまでお側に居りますわ。」と言うのでミーア、ソーシエラ、レーヴェルはリビングのような場所で一息入れることにする。
「グリフォンのことを知っている人はいるにゃ?」
「私は聞いたことも無いな。グリフォンと言う名も、喋るモンスターも、だ。」
「恐らくあれが“魔物”なんでしょうね。500年前の記録はあまり残っていないので正確なことは分かりませんが、勇者が倒したという魔物カプロスと一致する点がいくつかあります。」
「一致点にゃ?」
「はい、喋る。という点と多くのモンスターを従えていたという点ですね。カプロスは小さな山のほどもあるイノシシだったと記録されています。数多くのホーンベアを従えていたのだろうと考えられていますね。」
「傭兵組合にはそんな情報はないにゃ。」
「これは未だに謎が多いのですが、500年前の勇者の記録はほとんど残されていないのです。魔王討伐に同行した王国騎士が魔王討伐から帰還した後に語ったとされる内容がいくつか残されているだけでして。その内容も王城の書物室にのみ残っているだけでしょう。」
「500年前の勇者って銅像とかも残ってにゃいもんね。神様が遣わせてくれた存在で魔王を倒したってことはみんな知ってるのに、詳しいことはよくわかってないにゃ。」
「まぁ勇者のことはともかく魔物だ。理由は不明だが勝手に居なくなってくれたおかげで助かったが、あれは魔王より弱いのだろう?」
「恐らくは・・・」
「魔物って魔王の手下にゃ?」
「うーん、どうでしょうね・・・。そう考えるのが自然な気がしますが・・・。魔物は同系統のモンスターを生み出す存在ではないかというのが宮廷魔導士団の見解ではあります。とはいえ500年まともに見つかったことも無いので、魔王がモンスターを生み出す、ならばその手下であろう魔物もモンスターを生み出しているだろうという何の事実的な根拠はない推論ですけれど。」
「とりあえずグリフォンが去ったということは、ヒポグリフも減るだろうということか?」
「全く分かりません、と言うのがワタシの本音ですけれど、先ほどの推論を正とするならば、ヒポグリフは減るということになるでしょう。」
「何ともあいまいなことにゃ。」
「ワタシはモンスター研究は専門外です!もう、魔導士なら何でも知っていると思って・・・。」
「む、それはすまなかった。ソーシエラは博識だからな。ついつい頼ってしまっていたらしい。」
「そう言われると、悪い気はしませんが・・・。」
「でも、また遭遇しても勝てそうにないにゃ。」
「どうでしょう。ヒポグリフをせん滅するために大きな魔法を放ったからハルト様はプラーナ切れになったはずなので、全快した状態で戦い始めればやりようはありますよ。」
「私は空に居られると役に立てないからなぁ。」
「ハルトの魔法も躱されたにゃ。あの速度の魔法を回避する相手を落とせるにゃ?」
「ミーアも含めて面で攻撃すれば何とかなるのではと思います。」
「レーヴェルも少しは魔法を鍛えたらどうにゃ?」
「私は剣に生きる者だ。魔法は使わん。」
頑固なレーヴェルを見て、これ以上は言っても無駄とミーアは肩をすくめる。そんな話をしているうちにハルトが気が付いたようで、エヴァンシアと共にリビングにやってくる。
「とんでもない奴がいたもんだな。」
ハルトとエヴァンシアに先ほどの話を簡単に伝えるソーシエラ。
「あれに勝てるようにならねばならんぞ。」
「魔王の手下ってんなら、そーなるな。まぁソーシエラの言う通り、撃ち落とせさえすれば何とでもなるだろう。」
「さすがはハルト様ですわ。あのような恐ろしい存在を目にしても全く臆すことがないなんて・・・。」
「まぁな。勇者が簡単に負けるかよ。」
「ならばさっそく修行だ!今日はどうせ下山は無理だろう。ハルトは私と立ち合い稽古だ!」
レーヴェルはそう言うとハルトの腕をつかんで小屋の外に引っ張っていってしまった。
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夜、休憩小屋の寝室でエヴァンシアはいつものように両手を胸の前で組んで祈りをささげる。
(遥か天の柱にて我らを見守りし御使い様。今日は魔物と言う恐ろしい存在に遭遇しました。しかしハルト様の魔法に恐れをなしたのか逃げて行ってしまったのです。モンスターをはるかに超える脅威であってもハルト様であれば容易に打ち倒せるのでしょう。)
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