第50話 空を駆ける魔物
「さて、いよいよ山越えだな。モンスターはヒポグリフしかでないのか?」
「私が通ってきた時はそうだな。だが日に日に数が増えているという話も聞く。例え他のモンスターがいなくとも、そうやすやすと踏破できるとは思えん。」
「逆に早めに抜けてしまった方が良いかもしれないにゃ。増えすぎて麓まで降りてくるようなことににゃると街に被害が出る可能性があるにゃ。ここいらでいったん間引きするとするにゃ。」
「ワタシもそろそろ第四節をお見せしたいところですね。」
気合いも十分という所でハルトたちはデルッポを発つ。先日試しに登ってみたところよりも速いところでヒポグリフに遭遇することとなった。
「3体か。まずは肩慣らしだな。撃ち落としは任せたぞ!」
レーヴェルは前回と同様に空を飛ぶヒポグリフに向かって突撃する。ソーシエラも前回同様、火の魔法第二節でヒポグリフの動きを誘導し、ハルトとミーアの魔法で撃ち落とす。とどめはレーヴェルが刺していく。上る距離に比例してヒポグリフとの遭遇も増えていくが、変異種が現れるでもなく、討伐パターンが出来てしまってからは、半ば作業のようにヒポグリフを狩っていくハルト一行であった。
「よし、ここまで来ればモンスターは寄ってこない。休憩小屋で一晩過ごして、明日は北側へ向かって下っていこう。」
「ふぅ。本当に増えてんだな。やっぱ魔王が復活してモンスターを生み出してんのかね。そもそも魔王は何の目的があってモンスターを増やしてるんだ?人類を滅ぼそうとしてるんだっけ?」
「そうですわ。魔王は全ての人類を滅ぼさんとする人類の敵、そして神への反逆者ですわ。」
「ふーん。」
(その理由はわからんって感じだなこれは。まぁファンタジー世界の魔王なんてそんなもんか。)
翌日、休憩小屋を後にし北に向かって山を下りるハルトたち。だが、途中で今までとは比較にならない数のヒポグリフが空を飛び回っている場所に遭遇する。
「オイオイ、何だあの数は。上ってくる時に戦った数と同じくらいかそれ以上が一か所に集まってるじゃねーか。」
「私が来た時はあのような集団はいなかったぞ・・・。」
「ここは迂回路もにゃいし、突破するしかないにゃ・・・。」
「ハルト様・・・あれはできませんか?」
「あれって・・・いや、そうだな。やってみるか。」
「ワタシも火の魔法第四節を使います。ハルト様の魔法であれば恐らく同じかそれ以上の威力が出るはず。この二つを叩き込めばあの数もどうにかなりましょう。」
「残敵は任せろ。」
ソーシエラとハルトの会話にレーヴェルも気合の乗った言葉を返す。しかしミーアが何かに気付いた。
「ちょっと待つにゃ。あれ・・・にゃんだ・・・?ひときわ大きいヒポグリフにゃ?」
「ヒポグリフの集団と共に近づいてきますわ!」
ミーアが気付いた何か・・・ヒポグリフの集団の中に1体だけ体が2周りは大きい個体がおり、その個体が動くと同時に他のヒポグリフもハルトたちに向かってくる。
「先制で撃ち込みましょう!」
「おう!やってやらぁ!」
ハルトは気合いと共に精神を集中する。ソーシエラに教わってきたプラーナのコントロールを行い今までとは違う形で魔法を放つ。
「ケラウノス・ブロヒ・プトーシー!!」
「見事ですわ。ワタシも負けていられません。フォティア・メネティ・ミア・カテギダ!!」
突き出されたハルトの腕の前に集束したプラーナが黄金の魔法陣を形成する。そして魔法陣からはいつもとは異なり、幾条もの雷が大きな落雷音を響かせて放たれる。荒れ狂う雷の嵐がヒポグリフの集団を蹂躙し、更にはソーシエラが放った火の魔法第四節の炎の嵐がわずかに残った命を刈り取っていく。
「な、なんという・・・天を割くほどの威力ですわ・・・」
エヴァンシアのつぶやきはバラバラと降り注ぐヒポグリフの魔石の雨に打ち消されていく。だが、勝利の高揚も束の間、何者かの声が響く。
『ほう・・・大層な魔法だな。あの数を一瞬とは。人間にも面白いやつがいる。』
「誰だ!」
ハルトが叫び、声の主を探す。ふと見上げた空には、ヒポグリフと共に接近してきていた巨大なモンスターが何事もなかったように浮いていた。その姿は大鷲の上半身にライオンの下半身を持つ大型の獣であり、下半身が馬のようなヒポグリフとは異なっていた。前足の鋭い鉤爪は馬を何頭も同時につかめるほどに大きい。
「なっ!ワタシ達の魔法を受けて無傷ですって!?」
「それもそうだが喋っている?そんなモンスターは聞いたことがないぞ。」
ソーシエラがヒポグリフをせん滅した魔法の中で何事もなかったかのように空にいることに驚き、レーヴェルはモンスターが喋りかけてきたことに驚愕する。
「ミーア、あれは何だ?変異種か!?」
『ふん。モンスターなどと一緒にされるのは面白くないな。だがまぁ良かろう。人間の命は短い。我らのことを忘れてしまっていたも無理はあるまい。よく聞け。我が名はグリフォン。空の支配者なり。』
「グ、グリフォン・・・まさか魔物・・・。500年間一度も人類が遭遇した記録は・・・」
ソーシエラが驚きを隠せずにいる。
『先ほどの魔法。あれは雷の魔法であろう。小雨程度とは言えケラウノスの名を持つ魔法であったな。なれば貴様はズワースの定めた勇者と言うこと。ここで刈り取っておいた方が我ら魔族のためになろう。』
グリフォンはそう言うと、くちばしを開き竜巻を吐き出した。ハルトはとっさにエヴァンシアを抱えて竜巻の範囲から逃れる。他の者たちも辛うじて躱すことに成功する。しかし、竜巻が通り過ぎた地面は大きく削られ、直撃すればただではすまない事が容易に見て取れた。
『くくく、躱すか。では次はこれだ。』
大空に留まったままのグリフォンはその翼を大きく羽ばたかせる。するとグリフォンの周りに渦巻く風の玉が数多く現れ、そしてそれがハルトたちに降り注いだ。
「くっ!みなさん集まってください!エダフォス・ティフォ・スターシー!」
ソーシエラが叫び、土の魔法第三節を唱える。すると地面から土の壁がせり上がり皆を守る。しかしグリフォンが放った風の玉は土壁をガリガリと削っていき、あっという間に壁は崩れ去ってしまった。
「くっそ!ケラウノス・ラフティオ!」
ハルトが攻撃の終わりを狙って魔法を放つ。しかしグリフォンはひらりと雷を躱してしまう。
『今代の勇者はずいぶんプラーナの扱いが拙いものだな。ではこれで終わりにしよう・・・ん?・・・ふむ・・・そうか。いや、終わっている。・・・わかった。』
突然独り言のように何かを喋り始めたグリフォンは、ハルトたちに一瞥もくれずに突然踵を返し北に向かって飛び去ってしまった。
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