第5話 傭兵組合
冒険者ギルドと呼ばないことに強い意思を感じる
ハルトは活気のある通りを街の中心に向かって歩いていった。まだ時間は昼前のようで、午前中の買い出しや取引にと、通り沿いにある露店は活気にあふれている。日本ではほとんど見られない異国情緒あふれる風景に、ハルトは圧倒されつつも、異世界に来たのだと実感を深めていた。
見たことが無いような果物や、何に使うか分からないような小物まで、さまざまな品物が並んでおり、ついつい冷やかしにのぞきたくなったが、まずは目的地である傭兵組合を目指して進む。
門番に教えられたとおり街の中央らしきところは大きな広場になっていて中心に噴水が設置されている。
(噴水か・・・電気や蒸気機関なんかの動力は無いよな?馬車で荷物を運んでいたし。あれか?ヘロンの噴水とかいうのと同じ原理を考え付いた人がいたのか?)
この世界は技術レベルが決して高いようには見えず、街並みもいわゆる中世ヨーロッパと言った雰囲気である。そのため、ポンプで水を噴き上げるような動力はないだろうと想像したハルトは、地球でも2,000年前くらいに発明されたという水圧と空気圧を組み合わせた仕組みを思い出した。
人が30人は手をつないだくらいの大きさがある円形の噴水は街の名所になっているようだった。
少しだけ噴水に目を向けていたハルトだったが、視界の端に2本の剣が交差した看板を見つけ、目的地を思い出した。
(ライラからもらった金がどれくらいの価値があるのかも分からないし、まずは最低限の収入を得られるようにしないとな。)
傭兵組合の建物は3階建ての建物で、それなりに大きかったが、ラノベ世界に出てくるような冒険者ギルドのようなスイングドアの酒場付きといった様子ではなく、レンガ造りで入口ドアの左右に窓があるような、レトロなオフィスビルのようだった。
ドアに窓や隙間が無いので中が見えず、一瞬躊躇したハルトだったが、神に選ばれた勇者が物怖じしてどうすると気持ちを切り替え、ドアを開けた。
中は明り取りの窓が複数あるためか、十分な明るさがあり、エントランスホールは広めに出来ていた。入口の正面には受付のような場所もあり、女性が1人座っている。
エントランスホールには他にもテーブルやイスなどが複数あり、傭兵たちが談話や休憩が出来るようなスペースがあった。しかし、この時間は皆 出払っているのかエントランスホールには受付嬢1人いるだけ。
ドアを開けたことでこちらに気付いた受付嬢がハルトを見ている。ハルトは受付に向かって歩き出した。
「いらっしゃいませ。傭兵組合です。どのようなご用件ですか?」
受付カウンターの向こうから受付嬢が声を掛けてくる。
暗めのブラウンの髪を肩辺りで切りそろえ、白いブラウスに濃い赤、というより暗めのえんじ色のような落ち着いた色合いのベストを着用しており、愛想の良い笑顔を浮かべている。
(プロの接客って感じだな。傭兵なんて物騒な名前だが、結構しっかりしたところか?それなら安心ではあるけど・・・)
ハルトは心の中の不安を顔に出さないよう気を張りながら、受付の前まで進む。
「ここで仕事を斡旋してくれると門番に聞いたんだ。旅の路銀を稼ぎたくて・・・。」
「はい、お仕事のご相談ですね。承知しました。傭兵組合を利用するのは初めてですか?」
「あ、ああ。実はすごい田舎から出てきたものだから、街に来たのも初めてなんだ。」
「あらあらまぁまぁ。そうでしたか。それでは簡単にご説明しますので、イスにおかけください。」
受付嬢に促され、ハルトはカウンターに設置されているイスに腰をかける。受付嬢がカウンターに何枚かの用紙を並べる。
「文字の読み書きはできますか?」
(そう言えば、言葉は通じるけど、文字ってどうなってるんだ?ライラはその辺の説明が全然なかったな。)
一瞬不安になったハルトだったが、紙に書かれた文字を見て難なく読めることに驚いた。
(あれ、読めるぞ。しかも書ける気がする。よくある転生特典で言語関連は問題なくなっているのかな。まぁ一から文字を覚えるのは厳しかったから ありがたい。)
「ああ、文字の読み書きはできる。ここの紙に書いてある内容も理解できるよ。」
「あら、それは素晴らしい。しっかり教育を受けてらっしゃるんですね。」
受付嬢は感心したような声をあげ、ハルトをまじまじと見た。
あまり詳しく詮索されるとボロがでそうだと感じたハルトは、とにかく話を進めることにする。
「書いてある内容を見る限り、とりあえず登録が必要なんだな。」
受付嬢も仕事を思い出したのか、ハルトから用紙に視線を戻して説明を始めた。
「はい、まずは組合員として簡単な登録をしていただいて、ご要望に合わせてお仕事を紹介させていただきます。お持ちの能力・・・技術などですね。それに合わせて人材の募集を行っている店舗などをご紹介することもありますし、旅の途中の方などはモンスター退治をされることが多いですね。」
「なるほど、ではまず登録をお願いする。」
「では、こちらの用紙にお名前などお答えいただける範囲でお書きください。当然ですが、できるだけ書いていただいた方がご紹介できる仕事は増えますよ。」
ハルトは記入用紙にざっと目を通し、とりあえず名前と年齢を書き込む。技能欄には帳簿管理や園芸などの例があったが、どのレベルで技能と呼べるのか分からなかったため、一旦書くのをやめた。
戦闘技能として剣を書いたが、魔法は火・水・風・土・回復の5つにチェックを付ける形になっており、雷はなかった。その他欄もないので、魔法にはチェックと付けずにおく。
モンスター討伐経験は「あり」としておいた。
(さっき倒したばかりだが、まぁ経験には違いないな。嘘はついてないぞ。)
「ありがとうございます。ハルトさん。モンスター討伐経験ありですか。ちなみにどのようなモンスターと戦ったことがありますか?」
「あー、シャドウウルフとか・・・」
(というかシャドウウルフとしか戦ったことがないけど・・・あまりナメられると仕事が減りそうかな?)
「シャ、シャドウウルフですか!?お若いのに強いんですね!」
受付嬢はかなり驚いた反応を示す。ハルトは知らないが、シャドウウルフはモンスターが多数生息する森にいるモンスターで、街の周辺に現れることは無い。薄暗い森の中では、その漆黒の体は探しにくく、奇襲によって犠牲が出ることも多い。またその素早さから剣で戦うのは難しいモンスターとされている。
「あ、あぁ、まぁそれなりに?狼くらいなら一人で問題ないくらい?かな?」
魔法が使えないと勘違いしている受付嬢は、剣一本でシャドウウルフを討伐できると思い、有望な若手が現れたと、少し嬉しくなった。
「この後はどうされますか?さっそくモンスター討伐を受けられますか?」
「あー、まだ宿も決まっていないんだ。どこか路銀を稼ぎながら安心して泊れる宿はある?」
「そうでしたか。それでは組合と提携している宿をご案内しますよ。一人部屋が多くありますので、プライベートも確保できますし、長く泊まっていただくこともできます。もちろん、グレードを考えると、かなりお値段もお安いですし、高級宿に泊まりたいといった要望が無ければオススメです。」
ハルトは宿の紹介状と傭兵組合の仕組みや規則などが書かれた小冊子を貰って宿に向かうことにした。
エンカウント:受付嬢エレナ(美人)
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