第47話 剣士
翌日、朝食を食べながらハルトはミーアに尋ねる。
「で、前衛に良さそうなやつってのは誰なんだ?」
「名前はレーヴェルっていったにゃ。なんでも剣の腕を磨くためにそこらじゅう旅していて、1週間くらい前にデルッポに来たらしいにゃ。勇者選抜に間に合わなかったみたいで勇者に認められた4人と戦いたいって言ってるらしいにゃ。話はしておいてくれるって言ってたから、10時に組合に行けば待っててくれるはずにゃ。」
「それ・・・青い髪の剣士だったりするか?」
ハルトの言葉にエヴァンシアがはっと何かに気付いたような顔をする。
「んー、髪の毛の色は聞いてないにゃ。なんでにゃ?」
ハルトはまぁいいやとと答えて朝食にかぶりつく。話す気がなさそうなハルトを尻目にミーアはエヴァンシアとソーシエラの顔を見る。ソーシエラは肩をすくめるのみだったがエヴァンシアが話し始める。
「昨日、暴漢に襲われた話を覚えてらっしゃいますか?その暴漢が青い髪の女性の剣士でしたの。ハルト様が勇者だと答えると襲い掛かってきましたのよ。」
(勇者だって言ったのはエヴァなんだけどな)
「なるほどにゃぁ・・・」
「鎧をお召しになられていたので傭兵だと思いますわ。」
「条件は合致するという訳ですね。」
(にゃー、さすがにいきなり襲い掛かってくるようなヤツはダメかもにゃ・・・)
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朝食を摂り終えた一行は、少しだけ嫌な予感を感じつつも傭兵組合に向かう。
「まぁそんな顔しないにゃ。組合の中での荒事はご法度にゃ。守らない傭兵はいないにゃ。
でも念のためエヴァ様はあちしとソーシエラで守るにゃ。」
「オレが矢面に立つのかよ。」
「仲間に入れるかどうかはリーダーの判断にゃ。そうでしょ?勇者様!」
「そうですわ!ハルト様はリーダーですわ!みな、ハルト様についていくのですわ!」
エヴァンシアのキラキラした目を直視できないハルトは、わかったよとぶっきらぼうに答えて組合の入口の扉を開く。
(はー、やっぱりあの変な女剣士かよ・・・)
ハルトはそっと扉を閉じた。
が、ミーアに押さえられ閉められなかった。
ミーアに睨まれたハルトはフーっと大きくため息をついた後、もう一度扉を開いて組合の中に入っていく。
受付の横に胸の前で腕を組んで仁王立ちしている女剣士を視界に入れないようにしながら、受付嬢に話しかける。
「ハルトだ。前衛を紹介してくれると聞いて来た。よろしく頼む。」
女剣士の方を決して見ないようにしているハルトと無表情で仁王立ちしている剣士を見て、受付嬢は怪訝な顔をしながらもお待ちしていましたと談話席に誘う。
「こちらが前衛職のレーヴェルさんです。レーヴェルさんは一人でパルナソス山を越えてこられるほどの腕前で、他の地域でも多くのモンスターを狩ってこられた実績がある優秀な剣士です。お若いのに実績のある貴重な傭兵です。」
受付嬢はハルトにレーヴェルのことを紹介する。反応が微妙なハルトだが、それを無視して話を続ける。
「レーヴェルさん、こちらの方々がアイトリア王国公認の勇者ハルトさんとそのパーティの皆さんです。ハルトさんは選抜で優勝し第一席を与えられている王国最強の勇者様です。猫人の女性はミーアさんと言って、レーヴェルさんと同じくらいの年ですが、スカウトとしての能力は随一と言われています。交渉も得意なのでパーティの要と言っても良いでしょう。残りのお二人は傭兵ではありませんので、詳しくは皆さんから聞いてください。」
微妙な空気の中、私の仕事は果たしたと言わんばかりに一気に説明を終えた受付嬢は、あとは皆さんで話し合われてくださいと営業スマイルを浮かべて受付へ戻っていった。
さっさと戻っていってしまった受付嬢を視線で追いながらエヴァンシアがハラハラしていると、諦めたようにため息をついてミーアが話し始める。
「レーヴェル、何があったのかは詳しく聞いてにゃいけど、どーゆーつもりだったのか説明して欲しいにゃ。黙ってても何も進まないにゃ。そもそもレーヴェルはあちしたちとパーティを組む気はあるにゃ?」
「むぅ。そうだな。まず、昨日はすまなかった。勇者が来ていると聞いていてもたってもいられなくなったのだ。まさかあれほどの強さとは・・・。あの後動けるようになるまで道の真ん中で放置されたのは納得いかんが、軽率な行動だったと反省している。
そして、君の強さがわかったので、私も旅に同道させて欲しい。魔王を倒すのだろう?」
(あれ?意外に普通の奴なのか?いきなり襲ってきたから相当ヤバイ奴だと思っていたが・・・)
「まぁ謝罪があるならいいさ。ただ、子供がいるのに剣を向けるのだけはダメだ。大人は子供を守る義務がある。」
「なるほど、さすがは勇者。そこの女子。すまなかったな。巻き添えを食わす気は全くなかったが、確かに危険はあった。謝罪する。」
「わ、わたくしは大丈夫ですわ!ハルト様が守ってくださいましたもの!私はエヴァンシアですわ。エヴァと呼んでくださいまし。」
「わかったエヴァ。よろしく頼む。」
(この子・・・エヴァンシア様が王女だって気付いていないわね・・・まぁいいか。変に気づかいされるのはエヴァ様もお望みでないでしょうし・・・。)
「ワタシはソーシエラです。見ての通り魔導士です。一通りの魔法は使えますので、支援も回復もお任せください。」
「ほう・・・一通りの魔法とな・・・」
(それほど魔法に長けたものなど宮廷魔導士くらいだ。どう考えても場違いな貴族のお嬢様といい、かなりの身分の者が同行しているということか。さすがは第一席という訳だな。まぁ身分など私には関係のないこと。強いものと戦い剣を極められさえすれば。)
「ミーアのことは噂で聞いている。不名誉な二つ名はともかく、斥候としての腕は指折りだとな。索敵能力の高いものがいれば無用な怪我はせずにすむ。みなと一緒に戦えることを光栄に思う。よろしく頼む。」
(えらく言葉遣いは固いが、外見はかなりいいし、鎧を脱いだらスタイルもよさそうだ。これは3人目の・・・ウヒヒ)
(ハルトはやましいことを考えているにゃ。まぁどうでも良いにゃ。)
(ハルト様・・・ハーレムに入れたいみたいなことを考えている顔ですね・・・パーティメンバーなら別にかまいませんが。)
ハルトの心情はミーアとソーシエラにはバレていたが、エヴァンシアだけは新しい仲間に胸を高鳴らせていた。
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