第46話 街のトラブルに要注意
ようやく登場です。
ハルトたちは村長から報酬をもらい翌日には行商隊とともに村を立つ。ハルトは報酬に文句も言わず、逃げ出すように村長の家を出た。村娘のハニートラップがよほど恐怖だったようである。
その後はいくつかの村に立ち寄り宿をとったり、数回だけ定められた野営地点で野宿もしたが、特段イベントも起こらずに目的地である山麓の都市デルッポに到着する。行商隊から護衛料を受け取り別れる。ミーアは傭兵組合に到着の報告に向かった。
「組合への報告と宿の確保はミーアに任せるとして、オレ達はどうする?」
「パルナソス山を越えるために、ここで準備を行う必要があります。道具類はミーアの意見も欲しいので後で買うとして、ハルト様は防具のメンテナンスをされてはいかがですか?ワタシは杖やローブなどを魔導店でチェックして来ようと思います。エヴァ様はハルト様とご一緒されてはいかがでしょう?」
ソーシエラの言葉にエヴァンシアはハルトに対し期待と不安が籠められた視線を向ける。ハルトはそんなエヴァンシアの視線には気付かずにこたえた。
「わかった。じゃあ行こうぜエヴァ。」
「はい!ハルト様!ご一緒させていただきますわ!」
ハルトとエヴァンシアは連れ立って防具店に向かう。防具店でハルトは革鎧やガントレットなどを預け修繕を依頼。待ち合わせ場所に向かおうと店を後にした。
街並みを見ながら二人歩いていると、エヴァンシアは王都とは少しだけ異なる街並みを珍しそうに眺めている。
「エヴァは王都の外には出たことが無いのか?」
「はい、他の街には・・・わたくしには王族としての公務などもありませんでしたから。」
「まだ子供だから?」
「わたくしはもう12ですのよ。子ども扱いしないでくださいまし。子供だからではなく・・・神託の巫女だからですわ・・・」
(12歳って子供じゃねーか。小学生だろ?女の子はマセてるから子ども扱いしたら怒るもんなのかね。)
少し暗い顔をしているエヴァンシアに気付かずハルトは日本の価値観でエヴァンシアを見ていた。そんな会話をしながら歩いていると、青い髪の女性が二人の前に立ちふさがる。青を基調としたドレスアーマーを着て、腰には剣を下げている。恐らく傭兵であろうことが見て取れた。
ハルトは一瞬怪訝に思うものの、知らない人物なのでエヴァンシアの手を引いて横を通り抜けようとする。しかし女性は強い口調でハルトに話しかけてきた。
「貴様が勇者か?」
ハルトは面倒ごとに関わりたくないと無視して通り過ぎようとするが、エヴァンシアが嬉しそうに答えてしまう。
「はい!ハルト様はアイトリア王国公認の勇者第一席であると同時に神に選ばれた神託の勇者様ですわ!」
「ちょ!エヴァ・・・」
「フン、やはりそうか。貴様、私と立ち会ってもらおう。」
そう言うなり剣を抜いて構える女性。
「なんだこいつ!街中で剣を抜きやがった。エヴァ下がっていろ!ヤバいやつだ!」
ハルトは突然剣を抜いた女剣士を警戒し、エヴァンシアを自らの背にかくまう。そして、自身も神剣を抜いて構えた。
「いくぞ!」
女剣士はそう言うなり斬りかかってくる。その動きは勇者選抜で戦った猛者たちにも劣らず速いもので、ハルトは躱すことを諦め神剣で受ける。押し込む力はスタヴロス程でないが女性とは思えない力だった。ハルトは剣を押し返し、牽制の横薙ぎで女剣士を後ろに引かせる。
(こいつ、かなりの腕だぞ。四の五の言ってられないな!)
ハルトは神剣にプラーナを込め勝負を決めることにする。一瞬隙を見せたハルトに対し女剣士は踏み込もうかと逡巡したが、何かをしようとしていることを感じ様子を見る。
プラーナを込めたハルトは「こちらの番だ」と斬りかかる。初撃は躱されたが、フェイントとして振った剣は続いて女剣士に迫る。ハルトの身体能力の高さから振るわれる剣はかなりの速度があり、女剣士も躱しきれずに剣を受ける。剣を受けた瞬間、女剣士は体をビクンと振るわせてその場に倒れた。
動かなくなった女剣士を、ハルトは少しの間だけ警戒したが麻痺が効いたことを確信し剣を下ろす。
「これで気がすんだか?いきなり襲い掛かって来るとか暴漢かお前は。もう突っかかって来るなよ。」
(漢って男のことだから女なら何て言うんだ?まぁいいか。)
くだらないことを考えながらエヴァンシアの手を引いてその場を去るハルト。エヴァンシアも何が起きたのかと混乱しながらもハルトの強さに改めて尊敬の念を深めた。
二人が待ち合わせ場所に着いた時、すでにミーアとソーシエラが待っていた。
「遅れてすまん。なんか変な奴に絡まれてな。」
「にゃ。この街はそんなに治安は悪くなかったはずだけどにゃ。見た感じ二人とも何ともなさそうにゃ。」
「ハルト様が撃退してくださいましたの!あっという間でしたわ!」
「ま、ハルトがそうそう負けるはずがないにゃ。それはそうと、宿を取ってきたので荷物を置きに行くにゃ。」
4人は連れ立ってミーアが確保してくれた宿に向かう。
「山越えはどうです?必要なものはミーアに相談してから買おうと思っていますが。モンスターの様子など傭兵組合で情報は集まりましたか?」
「確認して来たにゃ。道中もそうだったから気ににゃってたけど、この辺もモンスターが増えているみたいにゃ。山道はヒポグリフがかなりいるみたいで、商人たちも苦労しているみたいにゃ。」
「やはり魔王復活とモンスターの増加、狂暴化は関係していそうですね。」
「なぁモンスターって魔王が生み出しているみたいなことがモンスター図鑑に書いてあったが、本当なのか?」
「正直、正確なことは分かっていません。ですが、500年前に勇者が魔王を討伐した後、しばらくの間モンスターの数が大きく減少したという言い伝えがあります。今は反対に魔王が復活するという神託が下る何年か前からモンスターが増加傾向にありますね。」
「ふーん。正確なことはわからんが何かしら関係はありそうってことなんだな。」
「そう言えば、話は変わるけど組合で前衛に良さそうな人の話を聞いたにゃ。若い女の子らしいからハルトも気に入るんじゃないかにゃ。」
「あら、ハルト様は女性しかパーティに入れる気はないのですか?」
少しだけいたずら気な声色を乗せたソーシエラの言葉にハルトはぶっきらぼうに答える。
「お前たちだってオッサンと組むよりそっちの方が良いだろ。」
ハルトの言葉にミーアはやれやれと肩をすくめるのだった。
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その夜、エヴァンシアは宿でいつものように両手を胸の前で組んで目をつぶった。
(遥か天の柱にて我らを見守りし御使い様。今日、ハルト様は突然襲い掛かってきた剣士をあっという間に撃退されました。わたくしをかばいながらも あのお強さ・・・。やはりハルト様は世界を救う勇者様ですわ。神がわたくしたち人間をお助けくださいますことに、改めて感謝申し上げますわ・・・。)
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