第43話 正当な対価
宿に戻ったハルトはエヴァンシアに「さすがですわ!」「さすが勇者様ですわ!」「わたくしもハルト様の勇士を見たかったですわ!」といつものように迎えられ、テンション高めのエヴァンシアをなだめ朝を迎えた。
ミーアとハルトは村長の元へと向かう。すでに傭兵チームが報告を終えているはずなので、詳しく説明する必要はないものの、報酬の受け取りやボスモンスターについても情報を渡しておく必要がある。
「皆様、昨夜は本当にありがとうございました。」
村長が心底安心したという表情でハルトたちにお礼を言う。
「傭兵たちから話は聞いていると思うけど、変異種がいたにゃ。昔話にしか出てこないような強力なモンスターだったにゃ。組合を通して国に報告が必要にゃ。」
「そ、それほどのモンスターがいたのですか・・・。必ず報告させていただきます。」
村長は想像以上に危険な状況であったことを知り怯えつつも、それらを撃退したハルトたちの強さに賞賛を送る。そしてミーアに報酬を支払う。
「ミーア、それ少なくないか?」
「契約通りにゃ。」
報酬は銀貨10枚。夜間の防衛と未確認のモンスター討伐としては決して高いわけではないものの、村レベルで支払うには十分な額である。
だがハルトはディアボアの強さ。特に魔法を弾く牙、それにより麻痺の効果も効きが悪かったことを考えると、牧場で雇われている傭兵では到底倒せない強さだったと考えている。
その報酬が銀貨10枚というのは正当な対価とは思えなかった。
「なぁ村長よ。俺達は一歩間違えれば死ぬかもしれなかった。それくらい強力なモンスターだったんだ。はっきり言って、ここの傭兵たちでは絶対に倒せなかった。それを銀貨10枚だと?」
「そ、それは・・・皆さんがお強かったため討伐いただけたこと感謝しておりますが・・・」
部屋に不穏な空気が流れる。村長はハルトの怒気に気圧され わずかに震えながらも契約通りに支払ったことを伝える。しかしハルトが納得する様子はない。
ハルトがさらに言葉を足そうとしたが、ミーアがそれを遮る。
「ハルト、気持ちはわかるにゃ。でもこれは正当な契約にゃ。確かに敵の確証がない状態で戦ったのは良くなかったにゃ。だから昨日は最悪撤退して、対策を練ってから討伐に臨んでもよかったにゃ。ハルトが強いから初見でも倒せたから、ハルトにはみんな感謝してるにゃ。」
「俺の実力が正当に評価されないのは我慢ならねぇんだ!」
ハルトのここの中には村長と上司の姿がダブって見えていた。自分がどれだけ頑張っても認めなかった上司。それどころか取り入るのが上手いというだけで評価されていた同僚や後輩。ハルトの中で抑圧されていた感情が、勇者と言う称号を支えとして爆発していた。
怒りが収まらないハルトを何とか連れ出したミーアは村長の家の前でため息をついてハルトを見る。
「どうしたにゃ。確かに報酬自体は安かったかもしれにゃいけど、ディアボアの魔石もあるし稼ぎとしては悪くないにゃ。人助けにもなったし、勇者の名を高めるチャンスでもあったにゃ。」
怒りを言葉に出したことと、外に出て澄んだ風を受けたこともあってか、ある程度落ち着きを取り戻したハルト。
「あぁ、ミーアには迷惑かけたか。ちょっと昔を思い出して感情的になった。」
歯切れの悪いハルトの言葉を聞いて、ミーアはフーっと息をはいた後、彼を優しく抱きしめる。
「あちしは何も迷惑かけられてないにゃ。でもそんな怖い顔をしてたらエヴァ様が心配するにゃ。今回のことはもう良いから、二人のところに戻って旅を再開するにゃ。」
ミーアの体温を感じて心を落ち着かせたハルトは、「ありがとう」とミーアに応え前を向いて歩き出した。
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次の目的地は北の都市バーテイ。ここからは徒歩になるため、おおよそ1か月程度の旅程である。途中に宿を取れる村がいくつかあるため、野宿はほとんどしなくて済むとは言え、長い旅になる予定である。
「そう言えばハルトの魔法でディアボアを倒したのに魔石が落ちたのはなんでにゃ?」
「ミーア、それはどういうことなの?ハルト様の魔法でモンスターを倒すと魔石が落ちないということ?」
ソーシエラがミーアの疑問に対し、質問で返す。ハルトは自身が放つ雷の魔法でモンスターを倒しても魔石が落ちないことを説明する。シャドウウルフにゴブリン、ダンジョンボス デウリオンの護衛など魔法で倒したことがあるモンスターを挙げる。
「なるほど・・・。ワタシはモンスター研究の専門ではないので正確なことは言えませんが、モンスターの強さ・・・正確には魔法に対する耐性を含めた強さが関係しているかもしれないですね。」
ハルトとミーアはうーんと唸る。あまりピンと来ていないような仕草である。
「それは魔法の威力が強すぎるということですか?ハルト様のお話では雷の魔法を受けると灰を散らして消滅するということでしたから、魔石ごとモンスターを砕いてしまってるような印象を受けましたわ。」
「エヴァ様の仰る通りだと思います。ディアボアは魔法に対する耐性がある珍しいモンスターです。そのため魔石ごと消滅しなかったのではないかと考えました。あくまで推測ですが。」
「ってーことは、魔法の威力を押さえることが出来れば魔石が落ちる可能性もあるのか?ソーシエラは弾数の調整が出来るって言ってただろ?威力の調整もできたりするのか?」
「あら、鋭いですねハルト様。仰る通りプラーナ操作がある程度できるようになると威力も変化させられます。もちろん上限はありますけどね。どんなにプラーナを込めても第一節の魔法の威力は第三節の魔法の威力を超えることはありませんし。」
「マジか・・・。なあソーシエラ。オレにプラーナ操作を教えてくれ!」
「あちしも!あちしも!もしかしたら第二節以上も使えるようになったりするかにゃ!?」
ソーシエラは二人のテンションに若干押されつつも、魔王討伐には皆がより強くなる必要があると言って二人に魔法について教えることを約束する。そんな3人の姿をさみしそうに眺める少女が一人・・・。
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夜、就寝の前にエヴァンシアは少しだけ寂しそうな表情を浮かべながら両手を胸の前で組んで目をつぶった。
(遥か天の柱にて我らを見守りし御使い様。ハルト様は魔法をよりうまく使えるよう修練をされると宣言されました。その身に宿す魔法はすでに最強と言っても過言ではないと愚考いたしますが、更にそれを超えようと努力されるお姿。まさに勇気を与える者、勇者の名にふさわしいと感じております。わたくしにも何かできることは無いのでしょうか。神託の巫女としてこうしてご報告申し上げることが大切な役目であることは理解しておりますが、それでももっとハルト様のお役に立ちたいのです・・・。)
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