第40話 魔導士
「旅立ちだ!なんて言っておきながらさっそく馬車に乗ってるな・・・」
「全部歩いては行けないにゃ。行商の護衛があるときは受けながら行くにゃ。お金も稼げるし、歩かずに済むし一石二鳥じゃにゃいか。」
「ミーア様がこうしてお手配くださるのは本当に助かりますわ。」
「ほらエヴァンシア様はわかってるにゃ。ハルトも少しは交渉役の苦労を知った方が良いにゃ。もてないにゃ。」
ハルトがミーアに言い負かされ不機嫌になっていると、エヴァンシアがおずおずと言葉を発する。
「あの・・・エヴァンシア様と言うのをやめていただくことはできませんか?」
「どういうことですかにゃ?」
「あの・・・わたくし達は旅のパーティなのですから・・・その・・・エヴァと呼んで欲しいのです。」
「あーん。良いんじゃねぇか?様付けってのも他人行儀だしな。」
(いやいや、そのような訳にはいかないでしょう。ハルト様・・・)
ソーシエラが表情に出さずにそんなことを思っていると、ミーアは少し考える様子を見せる。
「うーん、さすがに王族の方を呼び捨てには出来ないにゃ。親愛の情を込めてエヴァ様と呼ばせていただいてもよろしいですかにゃ?」
「そ、そうですか・・・いえ!そうですわね。ミーア様ありがとうございます。ソーシエラもそうしてね!」
「は、はぁ・・・姫様がそうおっしゃるなら・・・。」
「でも、あちしには様はいらないにゃ。」
ミーアの言葉に一瞬思考が停止し、ぽかんと口を開けたままになるエヴァンシア。
「いや、お前が一番ひでーじゃねぇかよ。」
ハルトのつぶやきが青空に消えていく。
「そう言えばエヴァ様とソーシエラは知り合いにゃ?」
「ソーシエラは宮廷魔導士第三席ですもの。王城にもよく来られていましたわ。女性で上位席なんて宮廷魔導士初の快挙ですからソーシエラはとても有名人なんですよ。」
「一番偉そうなのは爺さんだったし、やっぱり女の出世は難しい社会なのか?」
「そうですね・・・女性はどうしても子を産み家庭を守る役割がありますから、なかなか魔導を極めるというのは難しいですね。ワタシは魔法の才能が高かったので、父がやれるところまでやりなさいと言ってくださったので。」
「ソーシエラってアリュール伯爵家のお嬢様にゃ?よく許してもらえたにゃ。」
「ソーシエラは全属性の魔法が使える天才なんですのよ!宮廷魔導士の中でも全属性に適性がある人は数えるくらいしかいませんもの。伯爵さまと言えど、無視はできませんわ。」
ソーシエラはエヴァンシアの直球の誉め言葉に若干気おされたようにしながらも、微笑みながら「父には感謝しております。」と答えていた。
そんな話をしながら進む馬車。街道が森の近くを通りかかろうとした時にミーアが警告を発する。
「ここいらはモンスターと遭遇することが高いポイントにゃ。最近は遭遇報告が入っていにゃかったから、そろそろ出てくる頃にゃ。」
「おいおい、それフラグだぜ?まぁイベントが起こらない移動なんてつまらんから良いけどな。」
「フラグ?ハルト様は難しい言葉をご存じなのですね。それにモンスターを恐れぬそのお言葉。さすがですわ!」
「お、おう・・・」
(あー、これはエヴァ様はハルト全肯定王女様かにゃ?ちょっと心配にゃ。)
「出たようですね。」
ハルトとエヴァンシアのやり取りにミーアが内心突っ込みを入れているところで、ソーシエラが森から出てくるモンスターを見つける。
「おっちゃん、ここで止まって このお嬢様と一緒に待ってるにゃ。」
「お、おう。頼んだぞ!」
ハルトとミーア、ソーシエラが馬車を降りモンスターを迎え撃つ。敵は森の定番グレイドッグが15体。
「んー、一体デカいやつがいるにゃ。あれはデプスドッグにゃ。変異種だから結構強いにゃ。」
「それではワタシの力をお見せしておいた方が良さそうですね。先手はお任せを。」
ソーシエラは二人にそう伝えた後、杖を前に突き出し魔法を唱える。
「エダフォス・スフェーラ!」
杖の先に暗めの黄色・・・というよりは茶色がかった魔法陣が現れ、無数の弾丸が発射される。土の弾丸を撃ち出す土属性魔法第二節である。
20発以上の弾丸が次々に発射され迫りくるグレイドッグの群れを襲う。必死に回避しながら突撃を続けたグレイドッグたちであったが、魔法がやむ頃にはボス核のデプスドッグとグレイドッグが1体残るのみだった。
「にゃー、さすがは宮廷魔導士にゃ。半端ない魔法にゃ。」
「おらミーア。残りはオレ達でとどめを刺すぞ!」
「はいはい、デプスドッグはハルトに任せるにゃ。」
ハルトとミーアが残敵に向かって走っていき、ミーアがあっさりとグレイドッグにとどめを刺す。ハルトは神剣にプラーナを込めて、確実にデプスドッグの動きを止めた後、とどめを刺した。
魔石を拾って戻る二人を迎えるエヴァンシア。
「3人とも凄いですわ!あっという間にたくさんのモンスターを倒してしまうなんて!」
「ソーシエラがほとんど倒したにゃ。魔導士はやっぱりすごいにゃ。王国が囲い込むのも無理ないにゃ。」
「あれって土魔法か?すっげー量の弾が出てたけど、そう言う魔法なのか?」
「土の魔法第二節エダフォス・スフェーラです。実力のある魔導士なら弾数は調整できますの。限度はありますけどね。」
ソーシエラの言葉にハルトは自分の手を見つめ何かを考えていた。
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夜、就寝の前にエヴァンシアは窓から空を見上げ、そして両手を胸の前で組んで目をつぶった。
(遥か天の柱にて我らを見守りし御使い様。わたしくしはついに神が遣わしてくださいました勇者様と魔王を倒す旅にでました。ハルト様は勇猛でお強い方なのでしょうか。わたくしはハルト様のお姿に見入るしかございませんでした。わたくしにはこうしてハルト様のご活躍を報告差し上げるしかできませんが、この世界のためにわたくしに与えられた使命を果たしてまいりますわ。)
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