第38話 第四王女
「勇者様・・・いえ、勇者ハルト様・・・お会いしとうございました!」
ハルトの手を両手で握り、あわや抱き着いてきそうな勢いの少女に対し王が注意する。
「エヴァ・・・名前くらい名乗りなさい。気持ちはわかるがはしたないぞ。」
「あ!ああ!し、失礼いたしました。わたくしとしたことが・・・」
少女は王の言葉に慌ててハルトの手を放し、立ち上がって居ずまいを正す。そして見事なカーテシーを見せる。
「アイトリア王国第四王女エヴァンシア=アイトリアでございます。人はわたくしのことを神託の巫女と呼びます。御使い様より神託をいただいてから、あなた様が現れるのを一日千秋の想いでお待ちしておりました。」
(マジで王女様かよ・・・)
「あーえーと、こちらこそ光栄です?あーちなみに神託の巫女と言うのは?」
「ハルト殿はご存じありませんか。別の世界から来られたというなら止む無しか。神託の巫女とは御使い様のお言葉を聞くことが出来る能力を持つ方々のことです。世界に一人だけ明確なお言葉を聞くことが出来る方がおり、代替わりを続けております。先代は先代王の姉君・・・エヴァ様の大伯母様にあたる方でした。わずかに御使い様のお言葉を聞くことが出来るものが教会には数名居りますが、明確なお言葉として聞くことが出来るのは神託の巫女様のみなのです。」
宰相の説明に「なるほど」と頷くハルト。
その姿を見てエヴァンシアはさらに言葉を重ねる。
「御使い様からハルト様のご容姿は伺っておりました。黒い髪に端正な顔つき。神剣を振るう無敵の勇者様だと・・・。だから わたくしは昨日の試合を見てハルト様こそ神託の勇者様だとお父様に何度もお伝えしましたのに・・・聞き入れてくださらなくて!本当に、本当にお会いできてうれしいですわ!」
「人前では王と呼べとあれほど・・・」
ハイテンションのまま まくしたてるエヴァンシアの後ろで王が頭を抱えている。
(どこでも親父は大変なんだな。しかし元気な姫さんだこと。そんなに勇者が嬉しいのかね?)
「ハルト様は魔王討伐の旅に出られるのですよね!?わたくしもお供する準備はできております!さぁいつ参りますか!?今からですか!?すぐですか!?」
「エヴァ!いい加減にしなさい!お前がどうしてもというからこの場を設けたが、話はまだあるのだ。後ほど委細伝える故、今は下がっていなさい!」
流石に空回りし始めた娘を止めねばと思ったのか、王は強めの口調でエヴァンシアの言葉を遮り、下がらせる。
エヴァンシアはぷーっと膨れた顔をして下がろうとしたが、最後にハルトを見てまた瞳を潤ませながら笑顔で一礼し下がっていった。
「嵐みたいな姫様だったにゃ・・・」
ミーアがボソッとこぼした声にハルトも「同感だ」と返すのみである。
「さて勇者ハルト。気を取り直して今後のことを話そう。宰相。」
「はっ。ハルト殿には近く王都を旅立ち、北の果てにあるという魔王城を目指していただきたい。」
「わかりました。」
「ありがとうございます。そして先ほどご本人からもあった通り、第四王女であらせられるエヴァンシア様も共に連れて行っていただきます。」
「は!?それはさすがに無理が・・・」
「お気持ちはわかります。しかし、先代勇者も神託の巫女と共に旅をし魔王を討伐なさいました。魔王を倒すためには神託の巫女が傍にいる必要があるというのが歴史研究家を始めとする有識者たちの意見であり、王はそれを承認されました。」
ハルトとミーアはその言葉に唖然とする。
「もちろん、ただ連れて行けとは言いません。騎士団から優秀な騎士を一人、宮廷魔導士から上位者を一人付けます。そちらのミーア殿はスカウトと伺っておりますので、前衛と後衛が一人ずついれば旅は大丈夫でしょう。当然支度金も用意させていただきます。」
「発言してもよろしいでしょうかにゃ。」
「ミーア殿、どうぞ。」
「魔王討伐の旅は多くの試練があると思いますにゃ。王女の安全を必ずしも確保できない状況もあるかもしれないですにゃ。」
「それは承知の上だ。勇者の共をするからには最悪の事態の覚悟はできておる。そして万一のことがあってもそなたらを責めるようなことも罪を問うようなこともせぬ。なにより、旅に出た時点でエヴァンシアは王家から除籍する。本人も了承済みのことだ。」
王がミーアの言葉に答える。それは父親ではなく王としての言葉であることはその目に込められた力から容易に察することが出来た。
「差し出がましいことを申しましたにゃ。」
「かまわん。むしろそれを指摘できるとは、そなたの優秀さの表れであろう。さすがは神託の勇者のパーティーメンバーだ。」
その言葉を聞いてハルトはミーアをこいつ何か凄そうなこと言ってやがるといった目で見ていた。
(はぁ、ハルトは甘ちゃんだから困るにゃ。王女なんて連れて行って万一のことがあったら あちし達の首なんて簡単に飛ぶにゃ。アホそうな目で見てきて・・・まぁその辺も可愛いと言えばそうなのかにゃ?)
「では同行する者たちを紹介しましょう。」
宰相が謁見の間の扉の前に立つ兵士に合図する。兵士の一人は扉の横にある小窓から外にいる兵士に何かを伝えた。するとすぐに兵士が扉をあけ、二人の男女が謁見の間に入ってくる。
(おぉ待たせないように控えてたのか?オレの偉くなったもんだな。)
ハルトは勘違いしていたが、ハルトを待たせないようにしていたのではなく、王を待たせないように宰相が差配していたのである。
ハルトとミーアの横まで来た男女は跪いて王に頭を下げる。男性は30代に届かないくらいかそこらの、まだイケメンと言っていいくらいの年頃の騎士。もう一人は魔導士のローブを纏った美しい女性。ハルトが何度か見かけた美貌の魔導士だった。
王は改めてハルトたちを含めた4人に立つよう促す。そして宰相が紹介を始める。
「まず、前衛を担当する騎士から。彼は王国騎士団第3隊副隊長のレオン殿。そして後衛の魔導士として宮廷魔導士団第三席ソーシエラ=アリュール殿です。お二人ともまだ若いながらも王国きっての腕前を持っています。レオン殿は騎士団長の推薦、ソーシエラ殿はご自身から申し出をいただきました。」
(うーん、女魔導士は良いとしてイケメン騎士はいらんな。何を好き好んで騎士団とか言うエリートでイケメンの男を連れて行かんとならんのだ。どうやって断ろうかな。)
ミーアはハルトの表情を見て思った。コイツ、騎士はいらないとか考えているな と。
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