第37話 神託の勇者
ハルトの率直な答えに謁見に同席していた者たちがざわつく。それを王が手で押さえるように示す。場が静まり返った後、宰相が老魔導士に尋ねる。
「今のお話、どう判断されますか?」
「偽りではないと判断してよいでしょうな。御使いライラ様のことを知っているのは教会と王家、宮廷魔導士たちの極一部です。神託の巫女の言葉を間近で聞いたものしか知らぬ名なのだから。」
(ライラのやつ、マイナーなんだな。意外に苦労してんのか?)
ハルトが場の空気を無視して余計なことに施行を巡らせている間に話が進む。
「そして先ほど見せていただいた雷の魔法・・・。あれは500年前の勇者が操ったとされる魔法と考えざるを得ない。この世界に存在するのは四大元素魔法と癒しの魔法のみ。モンスターの脅威に苦しめられる人を救わんと神が与えたもうたのは5つの魔法。それ以外の魔法は存在しない。先代勇者のことはすでにほとんどの情報が失われてしまっておるが、人には扱えぬ魔法を操りモンスターの大群すら打ち滅ぼしたとされておるのです。」
(えっ、先代勇者って魔法でモンスターの大群を倒したのか?ケラウノス・ラフティオだと1体しか倒せないような気がするが・・・ギガデ〇ン的な上位魔法があるのかもしれない。)
「おお」と同席者たちが声を上げる。王や宰相も深く頷いていた。
「ありがとうございます。クレオン卿のお墨付きとなれば間違いないでしょう。」
「宰相殿、すまないが私からも一つ確認させて欲しい。」
宰相が魔導士長クレオンの言葉を持ってハルトを神託の勇者と認めようとした時、騎士の中で最も王に近い場所にいた男性が発言する。
「騎士団長、いかがされました?」
「魔法のことはよくわかった。だが剣についても確認しておきたいのだ。彼は間違いなくプラーナブレードを操っていた。だが、プラーナブレードは宝剣を用いねば実用に耐えうる力を発揮しない。しかし彼の剣は何の変哲もない鉄剣に見える。しかし勇者が持つ剣ならばそれ相応のものと考えるのが自然。それとも彼の能力が武器を選ばぬものなのか、確認させていただきたい。」
「ハルト殿、いかがでしょうか?」
「騎士団長の仰る通り、オレの持つ剣はライラ・・・様?に与えられた神剣です。プラーナを込めるとすさまじい切れ味となり特殊な力を発揮します。決勝で相手の宝剣にも負けなかったのは神剣の力です。」
「おお」と同席者たちから声が上がる。
「ハルト殿、失礼を承知だが、その剣見せてもらえぬだろうか。」
ハルトは頷き、腰から鞘ごと剣を外す。すると騎士団長が近づいてきてハルトから剣を受け取った。
「抜いても?」
「構いません。」
騎士団長はハルトから了承をもらうと、王に目配せをし王が頷いたのを確認した後、剣を鞘から抜く。剣身をよく見る騎士団長だが、その目は不思議そうな感情をあらわしたまま。そして何か力を込めるような仕草をする。
「ふぅ。これは私にもまったく判断できない代物だ。」
「騎士団長、どういうことでしょう?」
「この剣はどうみても普通の鉄剣なのです。そして私がプラーナを込めようとしても何も反応せぬのです。そして何も反応せぬのがおかしい。普通の鉄剣であってもわずかにプラーナは流れます。この剣はプラーナを拒絶しているかの如く何も反応しない。」
「もしかすると、神によって勇者のみしか扱えぬようになっているやもしれませぬな。」
騎士団長の言葉を聞いて、宮廷魔導士長が言葉を挟む。
「なるほど」とつぶやいて騎士団長はお礼と共にハルトに神剣を返した。そして元居た場所に戻ると、宰相は頷いて言葉を発する。
「王よ、このハルト殿こそ神託にあった神より遣わされし勇者だと判断いたします。」
宰相の言葉を聞き王は立ち上がって宣言する。
「アイトリア王国認定勇者第一席 ハルトを神託の勇者として認め、我が国は魔王討伐の旅を支援するものとする。」
その言葉を聞いてハルトとミーアは頭を下げた。
これで終わりかとハルトとミーアが思った時、視界の端で若い女性、女性と言うよりは女の子と言った年齢と思われる者がそわそわし始めた。なにやらハルトの方を熱いまなざしで見つめている様子。
(なんだあの女の子は。すっげーこっちを見ているな。と言うか、話の間もずっとこっちを見ていたような気がするが。服装からして王族っぽいから王女か?)
その様子を察した王が、小さなため息を吐き人払いをする。残ったのは王と宰相、騎士団長と女の子、そしてハルトとミーアのみである。
「はぁ。良いぞエヴァ。」
王からその言葉を聞いた女の子はパァと花が開いたような笑顔を見せてハルトの前まで来てひざまづく。
ハルトとミーアはその行動にぎょっとして一瞬身を固まらせる。
「ハルト、そしてミーアよ。ここからは堅苦しい態度は不要だ。少しだけ我が娘に付き合ってくれ。」
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