第36話 魔法お披露目
宮廷魔導士たちの訓練場で的が燃え崩れた。木でできた的は高熱により一気に燃焼したようで炭化している。
「さすがは煌閃の貴公子という訳か。」
「この程度、造作もない。本当は風の第四節をお見せしたかったのですが、ここで使うと他の建物にまで被害が出そうでしたから。」
勇者選抜本戦の翌日。4名の勇者たちはそれぞれ順番に王城に呼ばれていた。すでにリュコスとスタヴロスの謁見は終了しており、今はニコルスが魔法の力を披露しているところである。リュコスは水と風と回復魔法を、スタヴロスは土の魔法を第三節まで使いこなす。ニコルスに至っては火の魔法を第三節、そして風の魔法を最高位の第四節まで修めていた。
高位貴族の三男でもある彼は宮廷魔導士や騎士団にも広く認知されており、王族との謁見経験もある。そのため魔法の力についても儀礼的に確認しただけといった様子である。
今回、勇者認定されたハルト以外の3名の中で、魔王討伐の旅に出るのはリュコスのみである。リュコスは王国軍を一時休隊という形を取り、選抜された騎士や宮廷魔導士と共に北の果てにあるという魔王城に向かって旅に出ることになっていた。
スタヴロスは最前線で魔王軍と戦うために北部に戻り、ニコルスは引き続き公爵領の安定に努める。万一、王国に危機が訪れた際には王の名のもとに召集される可能性はある。
そんな彼らの謁見が終わり、ハルトが王城に呼ばれる時間となった。他の者たちの事情など知らぬハルトはミーアが用意してくれた品はあるが傭兵らしい動きやすい服を着て、ミーアと共に城門をくぐる。
城門をくぐった先には騎士らしき者が待っていてハルトたちを魔導士訓練場に案内する。
「案内が兵じゃにゃくて騎士だなんて扱いが違うにゃ。」
ミーアがそんなことをぼやいている。若干声が弾んでいることから、この先に見える利益の皮算用でもしているかのようだった。
王城外延部の通路を少し歩き、魔導士訓練場に到着。そこには複数の騎士と魔導士たちが待っており、ハルトは想像以上の物々しさに少しだけ物怖じする。魔導士の中には以前トーナメント会場を設営している際に見た美しい女性魔導士もいる。
(ギャラリーが多くねぇか?まだオレが神託の勇者だって知られてないはずなのに・・・)
「ほらハルト、ビビッてんじゃないにゃ。ガツンと見せてやるにゃ。」
ミーアに促され、オレは神に認められた勇者なのだと自己暗示をかけるような形で前に出るハルト。
「ハルト殿。お待ちしておりました。本日は国王謁見の前にハルト様の魔法の素養をお見せいただければと思います。失礼とは存じますが、傭兵組合に照会したところ魔法は使えないとのご申告をされているとのことですが、ハルト様は魔法は使えないのでしょうか?」
「いえ、4属性と回復の魔法は使えないのですが、別の魔法が使えます。」
「別の魔法・・・」
「雷の魔法です。」
ハルトの言葉を聞いて場がざわめく。老年の魔導士らしき者たちは「まさか」「やはり」「いやしかし」など何かを話している声が聞こえる。そして進行役を務めていた魔導士に対して老年の魔導士が何かを伝える。進行役は意を決したようにハルトに伝える。
「雷の魔法を見せていただくことはできますか?あちらの的に向かって魔法を放って欲しいのです。」
ざっと50mほど先に設置されている木人といった形の的を指さす進行役魔導士。ハルトは「分かりました」と答え的の正面に立ち、ふぅと一息。
「大きな音が出ますでの驚かないでください。」
ハルトはギャラリーに振り返り一言だけ注意を促す。そして腕を前に突き出し唱えた。
「ケラウノス・ラフティオ!」
突き出したハルトの手の前に黄金の魔法陣が形成され、落雷音を轟かせ雷が放たれる。一瞬で的まで到達した雷は着弾と同時に大きな光を放つ。ギャラリーがとっさにつぶった目を開けた時には的はすでになく、わずかな灰が散り、地面に大きく焦げたような跡が残るのみであった。
「こ、これがズワース様に与えられた勇者の魔法・・・」
老魔導士がポツリとつぶやく声がやけに大きく響いたような気がした。
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ハルトに魔法のことを聞きたそうにしている魔導士たちを尻目に王城の中に通されるハルトとミーア。謁見の間に通された二人は10mはあろうかと言うレッドカーペットの中央あたりで膝をついて下を向く。わずかな待ち時間の後に「アイトリア王御成りでございます。」との声の後、わずかな足音と共に王が入場し王座に座る。
「面をあげよ。」
王の声を聞き、ハルトとミーアは顔を上げた。
(ふーん、あれがこの国の王様か。思ったより年寄りじゃないな。というか横にいるのは王子か?こっちもすげーイケメンだし遺伝子強すぎだろ。)
ハルトが不敬なことを考えている中、王様がハルトに声をかける。
「我が現アイトリア国王 テオクラティス=アイトリアである。よくぞ参った勇者ハルト。さっそくで悪いが、色々と聞かせてもらいたいことが増えたようだ。」
王は近くに控える中年の貴族らしき男に視線を向ける。貴族は頷きハルトに問いかける。
「私はアイトリア王国宰相のカストル=レーデンスです。ハルト殿にはいくつか確認をさせていただきます。
まず率直に。ハルト殿は神託の勇者なのでしょうか?」
ハルトは一瞬ミーアを見る。頷くミーアを見て覚悟を決め答える。
「はい。オレは神によって別の世界からこの世界に転生してきた勇者です。御使いライラより世界を救って欲しいと頼まれました。」
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