第32話 ハルト vs スタヴロス
「さぁ!白熱の第一戦に続き、第二戦も始まろうとしています!アレクシオス副団長、この試合をどう見ますか?」
「はい、単純な実績であればスタヴロス選手が圧倒的でしょう。しかしハルト選手にはまだまだ未知の力があるように思えます。その底次第では・・・。」
「大番狂わせもあると?」
「はい、可能性はあると思っています。」
アレクシオスの言葉にごくりと息をのむアウサー。そして第二試合が開始された。
ハルトはスタヴロスから目を離さずに神剣にプラーナを込めながら鞘から引き抜く。
(込めるプラーナを少しにすれば麻痺の効果を弱くできるはず・・・。それでも一瞬動き止められれば有利に戦える。)
ハルトは予選最終試合で集中しきれずに込めるプラーナが弱くなった時を思い出しプラーナをコントロールする。
その動きを油断なく見据えるスタヴロス。スタヴロスの武器は自身の身長と同じくらいもある大剣。リーチでは大きく有利なスタヴロスだが懐に入られると不利になるかもしれない。スタヴロスはハルトの動きの速さを警戒している。
(攻めてこないな。ならこっちから行くか。オレの速さに付いてこられるか?)
攻めてこないスタヴロスを見て、ハルトは自分から攻めることにする。神剣が触れさえすれば隙が作れるはずだと、手数で勝負することにした。
「さぁ試合開始ですが、両者動かない。隙を伺っているのか?・・・っと!ハルト選手が突っ込んだ!」
(正面から来るのか?何か策があるのか。だが儂の剣は受け止められまい。)
正面から突っ込んでくるハルトに対し、スタヴロスは牽制のために剣を振るう。だが牽制とは言え、その剣速は目を見張るものがあり、ハルトは剣域の端で立ち止まる。
(さすがにあの剣は受け止められないな。だが踏み込まないと剣が届かないな。覚悟を決めるか!)
「しかしスタヴロス選手の牽制にハルト選手の足が止まる!そう簡単には懐に入らせないぞと言う気迫が見えます!」
「スタヴロス選手の膂力は決勝トーナメントの4名の中で最も強いでしょう。彼の剣を受け止められそうなのは、リュコス選手の盾くらいですね。さて、ハルト選手はどうやって懐に入ろうとするか。」
ハルトはスタヴロスの射程外から一気に踏み込み、突きを放った。速度を重視した結果、斬撃ではなく突きを選択したのだ。その速さはスタヴロスをして驚きを隠せないほどであり、スタヴロスは大剣を盾にして辛うじて防ぐ。しかし剣と剣がぶつかった時、スタヴロスに一瞬しびれるような感覚が走る。目を見開きながら一瞬動きが止まるスタヴロス。
「もらった!」
ハルトが気合と共にスタヴロスの腕を狙う。しかし一瞬で麻痺から復帰したスタヴロスは腕を大きく引くことでハルトの斬撃を回避する。体制が崩れることを利用し、自らゴロゴロと転がりハルトから大きく距離を取る。
(今のはなんだ!?奴の剣が儂の大剣に触れたときしびれが走った。速度も威力も大したものだったが、体を芯から痺れさせるような威力ではなかったはず。)
「おっとぉ!ハルト選手の連続攻撃を何とかかわしたスタヴロス選手!ハルト選手の突きが予想以上に強力だったのか、一瞬動きが止まったように見えました!」
(あれは予選でも見せていた不思議な剣技・・・やはりプラーナが動いている気配がある。まさか・・・)
(さすがに一瞬だけの麻痺だと追撃が間に合わないか?ならば!)
ハルトはスタヴロスが完全に構えを取る前に追撃を開始する。スタヴロスはハルトの攻撃を受け止めずに大きく回避することで攻撃を避ける。だが、ハルトの剣撃の速さに防戦一方となってしまう。
「ハルト選手のラッシュだー!スタヴロス選手は躱すので精一杯!これは一気に勝負が決まるかー!?」
「いや、あれはスタヴロス選手のペースにハルト選手が知らずに取り込まれているかもしれません。」
アレクシオスが想像した通り、スタヴロスはハルトが攻撃に疲れるのを待っていた。受けられないなら躱すまでと覚悟を決めたスタヴロスに対し、ハルトは当てさえすればと躍起に剣を振るった結果、スタミナの消耗はハルトの方が早かった。
「ここです!」
アレクシオスが声を発した瞬間、わずかに剣速が落ちたハルトに対し、スタヴロスは大剣を振るうのではなく、コンパクトな動きをもって柄頭でハルトの頬を殴った。柄頭とは言え金属の塊である。ハルトは一瞬気を失いかけた。
そこへ襲い掛かるスタヴロスの斬撃。上段から振り下ろされた大剣が踏みとどまったハルトに襲い掛かる。ハルトは半ば無意識的に神剣でスタヴロスの大剣を迎え撃つ。スタヴロスの剣を受けたときハルトは一瞬押し込まれそうになるが、すぐさま拮抗する。
「ばかなっ!」
スタヴロスが驚愕の表情を浮かべたとき、スタヴロスの大剣がわずかに欠ける。ハルトの神剣がスタヴロスの大剣にわずかながら食い込んだのだ。そして続けてスタヴロスの体を走り抜ける大きな痺れ。動きが止まったスタヴロスの剣を弾き、横胴を斬り裂くハルト。スタヴロスの纏う鎧を斬り裂いて鮮血が舞う。そしてスタヴロスは倒れ込んだ。
審判が急いで試合を止め、ハルトの勝利を宣言。そして魔導士に治癒を依頼する。魔導士たちの回復魔法で止血されたスタヴロスは担架に乗せられて会場を去った。
「うおおおおおお!ハルト選手の大逆てーーーん!まさかまさかの大番狂わせだーーー!」
ハルトは剣を持った手を空に向かって突き上げた。そして会場が一気に盛り上がり熱狂の声援が駆け巡った。
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