第31話 ニコルス vs リュコス
予選とは打って変わって舞台が大きな一つになっており、周囲の観客席にも多くの観客が詰めている。正面の広い席には王族と思しき豪華な恰好をした者たちが座っている。
アナウンサーのようなものが選手を紹介していく。最初に紹介された貴族は有名人なのか、名前を呼ばれた際に手を上げて観客にアピールする。観客からも大きな声援が返ってきていた。特に女性の声が多かったように感じられる。
次の少し年配の傭兵らしき選手も有名人なのか歓声があがる。こちらは男性の声が多かったようだ。
(マイクみたいな道具はあるのか。あれも魔石を使った魔道具なのか?妙なものが発達しているな。大規模戦闘の時はあれを使って陣形を変える合図をしたりするのか?)
ハルトは視界と解説が使っている拡声の魔道具が気になっていた。そして観客席にミーアの姿を見つけると少しだけ嬉しくなって、名前を呼ばれた時はらしくなく片手をあげてみたりした。
(しかし黒い剣士とやらがいないな。あの兵士が予選で最後に負けたって言う奴か?黒い剣士は辞退したのか?まぁ強い奴が減った方が楽に勝てるか。)
ハルトがぼんやり考えているうちに開会式が終わり、1回戦は貴族のニコルスと兵士のリュコスが戦う。ハルトとスタヴロスはそれぞれ別の控室に通され、戦いが終わるのを待つことになった。
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ハルトとスタヴロスが舞台から降り、控室に向かった。舞台の上には煌閃の貴公子ニコルス=グラームスと兵士リュコスが残る。ハルトたちが完全に見えなくなってから、審判をに担う騎士が舞台上に上がった。
「さぁ!ついに決勝トーナメント第1試合が始まります!刺突剣の天才 煌閃の貴公子と若き才能。どちらが勝利を掴み取るのか!」
司会のアウサーが場を盛り上げはじめる。ほどなくして審判が開始の合図を出した。
最初に攻撃を仕掛けたのはニコルス。一気に間合いを詰めて連続の突きを繰り出す。リュコスはニコルスの動きをよく見ながら盾を上手く使って攻撃を防ぐ。
「ふふっ、様子見程度は防ぐか。悪くない盾捌きだ。」
ニコルスは自身の攻撃が防がれても余裕を崩さずにリュコスに話しかける。しかしリュコスは何も答えずに構えを取るのみである。そんなリュコスの態度に、つまらない男だとつぶやいたニコルスは更なる攻撃を開始する。
「おおっとー!ニコルス選手、絶え間なく攻撃を繰り出していきます!リュコス選手は盾と剣を使って上手く防いでいますが、全く反撃できず防戦一方だー!」
「どうもリュコス選手の動きが鈍いように見えますね。ニコルス選手の攻撃はかなり早いですが、予選で見たリュコス選手の動きなら盾で攻撃を防ぎつつ相手の態勢を崩すくらいのことはやりそうですが・・・。」
司会のアウサーと解説のアレクシオスが二人の攻防にコメントを挟む。観客席からは兵士の同僚たちなのか、屈強の男たちからリュコスにもっと攻撃しろーと怒声に近い声援が飛んでいる。
それでも攻撃の手が出ないリュコスに対し、ニコルスは本日最高の速度で三段突きを放つ。それを何とか盾て受けたリュコスだったが、想像以上の威力だったのかわずかに体制が崩れる。そして、その隙を狙ってニコルスが追撃を放つ。
「あーーっとーーー!リュコス選手、ニコルス選手の渾身の突きで態勢を崩したー!しかし速すぎて何度突いたのか分からなかったぞー!」
「今のは三段突きでしたね。リュコス選手から見るとほぼ同時に3発の突きが飛んできたように見えたのではないでしょうか?それほどの速度でした。」
これで決着かと思われたニコルスの追撃だったが、リュコスはニコルスの突きに自らの剣を添わせるようにして受け流し、そのままの勢いで前に出る。今度はニコルスが態勢を崩し致命的な隙を見せた。
「な、なんと!リュコス選手崩れた態勢のまま攻撃を捌いて前に出たー!」
司会のアウサーが驚きの声を上げると同時に振るわれるリュコスの剣。致命打になると観客の誰もが思ったその時。
「それも釣りなんだ。」
ニコルスがそっとつぶやいたかと思うと、一瞬でリュコスの剣が跳ね飛ばされた。前に出た勢いのまま倒れ込んだリュコスに対してニコルスが剣を突き付ける。
「降参するかね?」
剣もなく倒れ込んだところに剣を突き付けられてはリュコスに反撃の余力はなく。敗北を認めるのだった。
「おおおっとぉぉ!リュコス選手降参です!勝者はニコルス選手。煌閃の貴公子が圧倒的な強さで勝利を掴んだーーーー!」
司会のアウサーの宣言で観客も一気に歓声を上げる。舞台上のニコルスは剣をおさめ、片手をあげて歓声にこたえていた。
「解説のアレクシオス様。最後の攻防はいったい何が起きたのでしょうか。あまりにも速く二人の攻防が入れ替わったので、正直何が起きたのか分かりませんでした。」
「はい、最後は二人とも見事な動きでしたね。まず最初に三段突きを起点として、ニコルス選手がリュコス選手の態勢を崩しました。その隙を狙ってニコルス選手が追撃を行ったのですが、実は態勢を崩したのはリュコス選手の罠だったのでしょう。」
「ほうほう、なるほど。あえてよろけて見せたということですね。」
「はい、相手が隙を見せると隙をつきたくなるのが人の性です。」
「しかしニコルス選手はそれを読んでいた・・・と?」
「そうですね。最後の動きを見るに最初から罠だと看破していた節があります。リュコス選手が突きに剣を添わせて弾こうとするのが分かっていたのでしょう。」
「なるほど。しかし、わかっていたとして、最後にリュコス選手の剣を弾いたのは、どんな技だったのでしょうか。突然剣がリュコス選手の手から離れていったように見えました。」
「恐らく、驚異的な速度の回転でしょうね。突きを行う際、通常でも腕や体を使って剣をひねりながら突くものです。その方が突きがのブレなくなりますから。ニコルス選手は通常の何倍もの速度と力で回転と呼べるほどのひねりを加えたのだと思います。そしてその回転に弾かれた剣がリュコス選手の手から離れていったということですね。剣士の握りを上回るほどの力がかかったとすると、恐ろしい剣技ですよ。」
「な、なるほど。あの一瞬でそんなことが起こっていたのですね。解説ありがとうございます。
では、最後の攻防についても分かったところで、第2試合の選手たちが舞台に上がったようです。」
(確かにニコルスの突きは素晴らしかったが、リュコスの動きが想像以上に悪かった。なにがあった?予選でケガをしたようには見えなかったが・・・。やはりあの黒い剣士か?)
アレクシオスはリュコスが本来の力を発揮できていなかったことを不審に思っていた。
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