第30話 決勝トーナメント
カンパーイと、ハルトとミーアはコップを打ち合わせる。しかし木製の杯に入っているのはうっすら果実の味がする水である。予選突破者4人で実施される本戦は翌日であるため前祝いとは言えアルコールは控えることになっていた。
「はぁ、言わんこっちゃにゃい。なんで最初から神剣の技を使わないにゃ。」
「なんつーか、あれって説明がつかなくないか?それに剣が強いから勝ったって思われるのもなぁ。」
「変なプライドで負けたら意味ないにゃ。それに最後の試合は効きが悪かったにゃ。」
「いや、あれは・・・」
ミーアは予選最後の試合、旅の剣士と戦った際、剣を受け止められたときに麻痺がかかったはずだがすぐに相手が回復したことを指摘する。
「多分、込めるプラーナが弱かったというか甘かったというか。モンスターと戦う時と違って戦いの最中でダメージも受けていたから集中しきれていなかったんだと思う。」
「にゃら、尚更最初から使うべきにゃ。」
反論のしようがないハルト。うー、と唸りながら果実水を飲み夕食を食べてごまかす。
「まぁ過ぎたことは良いにゃ。本戦出場者は貴族のお坊ちゃんと有名な傭兵、あとは黒い服を着た凄腕の剣士にゃ。」
予選は一般公開されておらず、観客は出場者の仲間や騎士団、魔術師や運営を担う行政府の役人などだけである。ミーアはハルトのパーティーメンバーと言うことで会場に入り、他のブロックの勝者も確認していた。
「誰が一番強そうだった?」
「黒い剣士かにゃぁ。最後の相手も最近名前が売れ始めた若い兵士さんにゃ。普通に優勝候補だったはずにゃ。でも一瞬で黒い剣士が勝ったにゃ。あしちでも見切れなかったにゃ。」
「ヤバそうなのがいるんだな・・・。でもまぁどんなに強くても神剣を使えば何とかなるだろ。」
「楽観的だにゃぁ。しつこいけど油断して負けにゃいでよ。そしてあちしもパーティーメンバーとして王様に紹介するにゃ。」
「わかったわかった。任せておけ。」
ハルトはいつもの調子でミーアに応えるのみであった。
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「さぁ!昨日の予選を見事通過し勇者の称号を手にすることが決まった4名の中で一番を決めるための戦いが始まります!司会は私、行政府催事課のアウサーが担当させていただきます!そして、本日の解説は王国騎士団副団長であり、若き天才アレクシオス=ドゥーカス様にお願いしております。アレクシオス様は前線までの宿場町全てに彼を待つ女性がいると言われるほどのプレイボーイとしても有名です。」
「あー、ご紹介にあずかりましたアレクシオス=ドゥーカスです。女性関係は解説と関係ないですよね?」
拡声の魔道具で会場全体に声を響かせる司会の声に観客たちは大きく盛り上がる。本戦は予選と違い一般観客の入場が可能となっており、アイトリア王国が勇者を決めるということで王都民はもとより、周辺の都市からも多くの人が集まっていた。
司会のアウサーにる唐突な暴露で冷や汗をかきながら言葉を返すアレクシオス。彼は26歳の若さでアイトリア王国騎士団の副団長に上り詰め、現団長が引退した際には団長になることが確定とまで言われる天才剣士である。家柄も侯爵家の次男という上級貴族の一員である。金髪に碧眼、顔立ちも整っており、非の打ち所がないイケメンで、家も太いとなれば彼に落とせない女性はいないとすら言われ、未婚男性の怨念を一身に受ける身でもある。
そんなアレクシオスの焦燥など何も感じていないばかりにアウサーは入場してきた選手の紹介を始める。
「さぁ予選勝ち抜いた4名の選手たちが入場してきました。まず一人目は、最有力優勝候補のニコルス=グラームス様。何と公爵家の三男で、煌閃の貴公子の異名で知られる天才剣士でもあります。更には2つの属性の魔法を自在に操ることもでき、剣と魔法両方に才能が有ります。」
「彼の武器は刺突剣で、その突きはまさに煌めきの如く鋭く速いことで有名ですね。貴族らしく高いプラーナも持っています。」
「なるほど、騎士団でも名が知れるほどの剣士と言うことですね。これは期待できそうです。
続いて二人目は、北部最前線の英雄傭兵スタヴロス様。彼は魔王軍と人類が戦う最前線で、傭兵団をまとめる隊長でもあります。10年前に彼が着任してから押され気味だった戦線の維持が可能となり、更には彼が率いる部隊が魔族を撃退したこともあるとか。」
「スタヴロスさんは王国騎士団と非常に良い連携を取ってくださっている傭兵隊長ですね。軍の扱いもよくわかってらっしゃいますし、それなりの身分の方なのではないでしょうか。勇者の称号を得て全然の士気を上げたいと考えておられるのでしょう。」
「なるほどなるほど、確かに勇者が共に戦ってくれるとなれば前線の傭兵や兵士の士気も上がりそうです。続いて三人目。王国軍の兵士リュコス選手。彼は最近名を上げ始めた兵士ですね。なんでも平民ながら2つの属性魔法と回復魔法を使えるという天才剣士と噂になっています。」
「リュコスは素晴らしい才能を持った兵士ですね。剣の腕もかなりのものです。実は騎士団でもその実力には目を付けているくらいです。」
「おっとー、まさかの評価。もしや騎士団にスカウトなんて話もでていたり?」
「ははっ、さすがに騎士団の人事のことをしゃべる訳にはいきませんが、騎士団の耳に届いているのは事実ですね。」
「さあ、最後はハルト選手。彼は無名の傭兵とのことで、辺境都市コリンからやってきたという情報しか入っておりません。しかし、予選で見せた身体能力の高さ、剣技の冴え、まさに本選のダークホースといったところでしょう。」
「彼もかなり注目の選手です。実は、事前選考で騎士団の隊長たちが選手の実力を見極めるために手合わせをしているのですが、彼は即時合格をもらうほどの腕前です。また予選でも不思議な剣技を見せており、他の選手に全く引けを取らないでしょう。」
「なるほど、まさかアレクシオス様がそこまで言われる選手とは。これは誰が優勝するか分からない、非常に楽しみな戦いになりそうです。それでは第一試合はこの後すぐ!」
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