第3話 薄情者
クズだってはっきりわかんだね
三匹の黒い大型犬に囲まれているのは荷馬車のようだった。馬は逃げてしまったのか、馬車のみが残され、荷物らしきものが少し散らばっている。馬車を背にして、少し腹の出た中年の男が鉈のようなものを突き出し、牽制している。
しかし、男の腰は完全に引けており、犬型モンスターが襲い掛かれば、あっという間にかみ殺されそうに見える。
(ライラのところで試し打ちした感じだと、そろそろ雷魔法が届きそうだな。)
ハルトは雷魔法を試しがてら、先制攻撃を仕掛けることにする。
「確か、手を前に突き出して、、、『ケラウノス・ラフティオ!』」
ハルトは馬車に向かって駆けながら呪文を唱えると手のひらの前に魔法陣が浮かび上がり、黄金の雷がモンスターを襲う。
ギャン!!
雷魔法が直撃したモンスターは一瞬で黒焦げになり、消滅する。わずかに灰が舞い上がったのみであった。
「うおっ!一撃かよ!すげー威力じゃねーか!・・・じゃあもういっちょ!『ケラウノス・ラフティオ!』」
もう一度呪文を唱えるハルト。一度目同様に突き出した手のひらの前に魔法陣が発生し、雷が放たれる。一匹目同様にかわす暇もなくモンスターが消滅する。
瞬く間に二匹の仲間を失った犬型モンスターは、ようやくハルトを脅威として認識し、うなり声を上げる。
モンスターのうなり声を歯牙にもかけず、ハルトは魔法の次に神剣の威力を試すことにした。
「へへっ。チート能力があればデカイ犬なんて怖くねーんだよ!次はこの剣を喰らいやがれ!」
剣など、中学・高校時代に何となく入っていた剣道部で竹刀を振るって以来だったが、勇者としての肉体の性能のおかげか、それなりに様になった剣撃がモンスターを襲った。
しかし、攻撃が来ることが分かっていたためか、モンスターは辛うじて後ろに飛び退くことでハルトの剣を躱す。
「へっ、やるじゃねぇか。おっと、そう言えばライラに言われていたことを忘れてたぜ。」
ハルトは初撃を躱されたことで少し冷静になったのか、神剣を渡された際にライラに言われていたことを思い出す。
「こう、だったかな。」
ハルトは両手で握る神剣に力を流し込む。この世界にある魔力のような力、プラーナがハルトの体から剣に伝わっていくことを感じた。
「そうそう、これこれ!」
ライラに教わりながら何度か練習したことがすんなりでき、更に調子に乗ったハルトは、モンスターに向けて神剣を払う。恐れを感じないハルトは、十分な踏み込みで、その剣撃はモンスターをとらえた。
モンスターはさらに飛び退こうとするが、神剣がその身をかする。斬れたのは黒い毛と皮一枚と言ったところだったが、モンスターは斬られた直後に身体を硬直させて、その場に倒れた。
「おおー!これが麻痺の追加効果か!」
神剣にプラーナを流すことで発動する麻痺の力を確認したハルトは、動けず倒れているモンスターの首に剣を突き刺しとどめを刺した。
絶命したモンスターは光の粒になって霧散し、小さな赤い石のようなものだけが残された。
「あん?こいつらは死ぬと死体は残らずに消えるのか?魔法が当たったやつは石が残らなかったようだが・・・よくわからんな。」
剣で倒した時と魔法で倒した時の違いは石が残るか否かであったが、消え方も少々違う。魔法で倒すとそうなのか、チート魔法のせいなのか、それとも神剣で倒すとドロップ品が出るのか。そんな疑問がハルトの心によぎった。だが、荷馬車の主と思しき男性の声で意識を引き戻される。
「あ、あの~。あ、ありがとうございます。た、助かりました・・・」
中年男性は、圧倒的な力でモンスターを討伐したハルトに少しおびえながらも、助けてもらったお礼を伝える。
ハルトは声を掛けてきた男と荷馬車の様子を交互に見て、ため息をついた。
「はぁ。こういう時は貴族のお嬢様とかを助けて、そのまま屋敷で歓迎されるってパターンが王道だろうが。ライラの奴、何もわかってねぇな。せっかくのチート異世界転生で最初に会うのが腹の出たオッサンって。」
ヤレヤレといった様子でため息をつくハルト。しかし気を取り直したのか、男性に声を掛ける。
「今のはモンスターか?」
「え?は、はい。シャドウウルフという恐ろしいモンスターです。こんなところには出てこないはずなんですが・・・」
「ふーん。恐ろしいね。まぁいい。町はこの先か?」
ハルトは街道を指さす。
「はい。ここから一刻も歩けばコリンという街があります。」
「そうか。じゃあな。」
「え?え?」
戸惑う男性をよそに、ハルトは剣を鞘に納め、シャドウウルフが残した赤い石を拾って、そのまま街道をコリンの街向かって歩き出した。
エンカウント:シャドウウルフ・商人コスタス
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