第29話 旅の剣士
「彼がヘリオスさんが即時合格を出した青年ですか?」
「アレクシオス殿・・・あなたが予選を見に来られるとは・・・。」
「ははっ、本戦の解説を頼まれていまして・・・。で、どうなんです?」
「はい、彼・・・ハルトという名であったはずです。」
「最後のは?ご存知ですか?」
「いえ、事前選考は木剣での立ち合いでしたし・・・」
「剣自体はただの鉄剣に見えますね。宝剣の特殊効果のような感じではありますが・・・。プラーナがわずかに動いた気がしたので剣技でしょうか。」
「仰る通り剣自体はそこらにある鉄剣のように見えますな。だが剣技にしては妙な気も・・・」
「まぁ本戦では何かわかるでしょう。そう言えばクセノスさんが即時合格を出した者を見ましたか?」
「いえ、そんな話は聞きましたが、まだ確認はしていません。」
「彼・・・あぁその者もハルトと同じくらいの年かさの青年なんですがね。凄いですよ。剣技の底が全く見えない。あれは・・・私や団長より強いかも。」
「まさか!?王国最強の騎士団長・副団長より強いものなど・・・。まさか本物の勇者?」
「まぁそこまでは分かりませんがね。本戦出場は確実なので、ヘリオスさんも注目していてください。」
トーナメント予選を観戦していた騎士団もそれぞれの感想を持って勇者選抜に注目していた。
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「ハルトさん、次の試合はすぐ始められますか?10分ほど休憩を取っても構いませんが?」
ハルトが控室に戻ると兵士から声を掛けられる。
「あー、いや怪我もないし疲れていないから、すぐに始めて構わない。」
「ほう、余裕だな。」
ハルトが兵士に答えると、控室で待っていた旅の剣士風の男がハルトに声をかける。
「私は相手が疲れていようと手加減はせぬよ?」
「疲れてねーっつただろ。手加減されようがされまいが勝つのはオレなんだから関係ないんだよ。」
「ふふっ、威勢がいい。楽しめそうだ。ではお言葉に甘えて試合を始めよう。少々待ちくたびれたのでな。」
ハルトと対戦相手両方の同意を得たので兵士は試合場に二人を連れて歩き始めた。
試合場に付き、ハルトは相手をよく見る。ハルトが使うと同じような剣を持ち、盾はない。剣は基本的に両手で振るうようだ。マントのような外套を羽織っているため、鎧などの装備はよくわからないが、金属が擦れ合う音はしないので来ていても革鎧だろう。眼光は非常に鋭く歴戦の強者を思わせた。
審判の始めの声で、ハルトは一気に距離を詰め剣を振るう。相手は素早い動きでハルトの剣を避け、反撃とばかりに横なぎに剣を振るう。ハルトは慌てて後ろに飛び退き、何とか躱すことに成功。
だが、その動きを読んでいたのか、即座に追撃を行ってくる。ハルトは神剣で相手の剣を受け止める。かなりの重量を感じるが力負けするほどではない。ハルトは力を込めて相手の剣を押し返した。
(今まで戦った相手とは強さが違う・・・まさかオレの剣を躱すして反撃までしてくるとは。)
「動きは悪くないな。だが・・・」
旅の剣士は一言つぶやいた後、ハルトに向かって剣を振るう上段からの斬り下ろしだ。ハルトはとっさに神剣で受け止めようとするが、剣がぶつかる前に相手の剣はピタリと止まり、一瞬で剣を引き寄せたと思うと突きを放ってくる。ハルトはよけきれずに頬に傷を負う。傷の痛みに一瞬動きが鈍ったところで、わき腹に回し蹴りを受けハルトは吹き飛ばされた。
「ぐ・・・」
ハルトはわき腹を押さえながら剣を構えて追撃に備える。想像以上に早くハルトが構えたため旅の剣士は追撃をやめ、ハルトから一定距離を保ったまま隙を伺う様子を見せる。
(くそっフェイントか・・・モンスターはフェイントなんか使ってこないから忘れてたぜ。)
「ふっ、何か奥の手があるなら出してみろ。待ってやっても良いぞ。」
「くそっ、余裕こきやがって。言われなくても出してやらあ!」
ハルトは神剣にプラーナを込める。完全な隙になっていたが旅の剣士はあえてそれを待つようだ。
「その余裕が命取りだぜ!」
ハルトは横腹の痛みに耐えながら鋭く剣を振るう。旅の剣士は一撃、二撃とハルトの剣を躱すが、ハルトは最初の攻撃とは違い、剣を振った後の隙を減らすため大振りをやめて細かく剣を振るう。旅の剣士はついに躱しきれなくなりハルトの一撃を剣で受け止めた。
「がっ!」
ハルトの剣を受け止めた瞬間、旅の剣士は体を震わせ膝をつく。ハルトはとどめとばかりに剣を突き付けるが、旅の剣士は左に転がってハルトの突きつけを回避する。
「なにっ!?」
ハルトは麻痺が効かなったことに焦りを見せるが、転がった先で旅の剣士はすぐに起き上がれずにいる。麻痺が完全に聞かなかった訳ではないことに気付いたハルトはすぐさま追撃を行うために駆け寄る。
ハルトが近づいてきたことを察知した旅の剣士はしびれる体で何とか立ち上がり その身をひるがえす。羽織っていた外套がはためきハルトの視界を覆った。
「なっ!」
一瞬、視界が外套で埋め尽くされたと同時に、外套から剣が伸びてくる。その剣先がハルトの右腕をかすったが、ハルトは痛みを無視して視界にとらえた旅の剣士に向けて剣を振るった。
「がっ!!」
力を振り絞って出した突きを躱された旅の剣士はハルトの剣をまともに受け倒れる。ハルトは念のため距離を取って構えるが、旅の剣士が起き上がることは無かった。
審判が旅の剣士に駆け寄り状態を確かめる。ふぅと一息はいた後にハルトの勝利を告げた。
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「おや、危なかったですね。しかし最後のあの場面で峰打ちとは・・・余裕があるのか何なのか。殺したら失格ですけど。」
「それもあるでしょうが、どちらかと言うと人を斬ることに慣れていないような雰囲気ですな。」
「そうですね。まぁあの若さで殺しまくってても嫌ですけど。」
「いずれにせよ本戦出場は決まりました。解説、楽しみしておりますぞ。」
「いやだなぁ・・・騎士団は観覧禁止にしましょう。」
「それは陛下が許さないでしょうな。」
はっはっはとヘリオスは笑いながら、二人は試合場を後にした。
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