第21話 クノス・ラビリス
クノス・ラビリス・・・アイトリア王国王都より北東に1日ほど行ったところに存在する世界最大級のダンジョン。地下30層以上にも及ぶとされ、発見から600年経った今も踏破されていない。下層に行くほど強力になるモンスター、致死性が高くなる罠の数々。500年前に魔王を倒した勇者すら20層ほどで探索を諦めたという逸話がある。
勇者選抜の登録を行政府の仮設窓口で行ったハルトは、選抜実施までの約1か月を子のダンジョン攻略に充てることにする。主に生活費を稼ぐために。
「勇者を目指そうってやつがダンジョンで生活費稼ぎか・・・。オレはこんなことをしてていいのか?ホント・・・」
自身の置かれた状況に、トホホと肩を下げるハルトにミーアは軽快に応える。
「勇者だって人間にゃ。ご飯を食べてゆっくり眠らないといけないにゃ。ハルトはまだ勇者じゃにゃいし、人間なんだから生活するためのお金は必要にゃ。それにあちしもお金は大好きにゃ。」
ハイハイと肩をすくめるハルト。これ以上は無駄だと判断し、ダンジョンに向かう。クノス・ラビリスの周辺はダンジョン攻略を行う者やダンジョンで得た魔石や鉱石を買い取るための商人、宿泊施設や生活用品を販売する商店などが集まり、小さな町になっていた。ダンジョンに入る場合は、スタンピート対策で儲けられた門の前で入場許可を得る必要がある。
「まぁ5層までは初心者が日銭を稼ぐ場所にゃ。ハルトには物足りないだろうから、戦闘は避けて一気に6層までいくにゃ。6層からは罠があるから、あちしの指示に従うにゃ。今日は10層のボス部屋の手前まで行って帰って来るにゃ。」
「ボスを倒しちまえば良いじゃねぇか。」
「まぁまぁ慌てなさんにゃ。まずはダンジョンがどんなところか知ってからでも遅くないにゃ。それにボスは5層ごとにいるから、5層で一回戦えるにゃ。安心するにゃ。」
(別にボスと戦いたいわけじゃないんだがな。)
たわいない話をしながら、ダンジョンに設けられた門で入場許可をもらいハルトとミーアはダンジョンに入っていく。ミーアが言っていた通り、洞窟型のダンジョン上層部はゴブリンやネズミ型のモンスターであるヘルラット、蛇型のモンスターであるスネークアイと言ったハルトだけでなく、ミーアでも一撃で倒せる低レベルのモンスターのみであった。
二人はモンスターを避けつつ早々に駆け抜け、5層の最奥にあるボス部屋の前に到達する。
「ここがボス部屋か。誰か先に入っているってことはないのか?」
「不思議にゃことに、入るたびに新しい部屋になるにゃ。扉が閉まる前に入った人だけで戦うことになるにゃ。」
「そりゃ随分都合がいい作りだな。誰が作ったんだ?」
「わからにゃいにゃ。ズワース様に敵対する邪神が作ったにゃんて学説もあるにゃ。」
「邪神・・・そんなのまでいるのか。神はズワースだけじゃねぇんだな。」
「神様はズワース様だけにゃ。にゃにを言っているにゃ。子供でも知ってるにゃ。ハルトの生まれた村には教会もにゃかったのにゃ?」
(日本には・・・まぁ教会はあったか。だがズワースなんて神のことは知らんしな。)
無言のハルトにミーアは言葉を続ける。
「あと、ズワース様のことを呼び捨てにしたら駄目にゃ。教会の人に知られたら火あぶりにされるにゃ。」
ハイハイと適当な返事をするハルトに困った顔のミーア。
「まぁそれは良いとしてボスはどんなモンスターなんだ?」
「はぁ。まぁ良いにゃ。ボスはカトレスっていう巨人にゃ。動きはあまり早くにゃいからスピードで翻弄して、足に攻撃を集中するにゃ。動けなくしてからとどめを刺すにゃ。」
ハルトはOKと応えボス部屋の扉を開く。ボス部屋は小学校の体育館ほどの広さがあり、天井もこれまで通ってきたダンジョンの通路とは異なり、7~8mはあるだろう高さがある。
ボス部屋の中央には左手に丸型の金属盾、右手に両刃の剣を持つ、軽装の鎧と金属兜をかぶった古代の戦士と言った装いの3mほどの巨人が立っている。
「作戦通りにいくにゃ!」
ミーアがハルトに声をかけるも、ハルトは「なんかやれる気がするな」と一言つぶやいて一人、カトレスに真正面から突撃した。
「にゃ!」
ミーアがハルトの行動に驚いている間にハルトはカトレスの剣の間合いに到達。カトレスはハルトに向かって剣を振り下ろすが、ハルトはわずかに進路をずらし剣を躱したと同時に飛び上がり、カトレスの首に向かって剣を振りぬいた。
カトレスの肩を飛び越える形でカトレスの背後にハルトが着地する。カトレスはそのままぐらりと倒れ込み光になって霧散し、魔石がカランと落ちる音だけがボス部屋内にこだまする。
ミーアは驚きの表情のまましばらく固まっていたが、ふと我に返り歩き出す。ボスの魔石を拾い、プンスカと怒った表情でハルトに文句を言う。
「勝手な行動は困るにゃ。パーティは連携が重要にゃ!次からは事前に言うにゃ。」
「ボスを見たらやれる気がしたんだ。まぁ倒せたんだしそう怒るなよ。」
悪びれない様子のハルトにミーアはため息をつきながらボス部屋の奥にある階段へ足を進めるのだった。
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