第19話 ガールズトーク
ミーアさん視点回です
時は遡り商隊が辺境都市コリンに到着した時・・・。ハルトがミーアに王都への同行を誘われる2週間程前。
「おひさーにゃ。変わりないかにゃ?エレナー。」
猫人傭兵のミーアは傭兵組合でエレナと会っていた。
「商隊の護衛、お疲れさま。ミーアは元気そうね。」
「さっき、初めて見る男の人がいたけど新人かにゃ?革鎧を着てたから傭兵だと思うにゃ。」
「んー、あー、ハルトさんかな。ミーアが知らない傭兵って言えばハルトさんくらいしかいないかも。」
うーんと天井を見ながら考えながら答えるエレナ。普段のしっかり者の印象とは違い、気の置けない友人と会った年相応の女性と言った雰囲気である。
「ハルトっていうのにゃ。黒髪は珍しいのにゃ。どこの生まれなのにゃ?」
「西の田舎村って言ってたけど、魔領域の森より西側って人が住んでいる集落があったかなーって。もしかしたら本当のことは言っていないかも。」
「ほーん、そうなのにゃ。腕の方はどうにゃ?」
「うーん、ソロで狩りに出ているから完全には把握できていないけど、かなり高いと思う。剣でギガースゴブリンの首を落としたって話だし。」
「に“ゃっ!それは相当にゃ。ギガースゴブリンをやれるだけでもかなりのものなのに、剣で首を落とすにゃんて・・・。宝剣か何かを持ってるのかにゃ?」
「アンドレイア団がゴブリンの間引きに同行してくれたんだけど、ディミトリさんが言うには見た目は普通の鉄剣だったらしいのよね。」
「それは大したものなのにゃ。ちょっと面白そうにゃ。」
「でもねぇ。」
言い淀むエレナに、ミーアは?を浮かべて続きを待つ。
「素行というか、人付き合いに問題があるのよ。」
「問題でも起こしているにゃ?」
「目立って問題は無いんだけど、先輩に対して敬意がないというか、傍若無人って感じ。誰に対してもね。マイアさんにすらタメ口だし・・・。」
「あにゃにゃ、それは相当にゃ。年は?」
「16だったかな。」
「にゃはは、若さゆえだにゃ。」
「いや、若いじゃすまされないわよ。あの子、お礼も言えないし。私、ハルトさんがありがとうって言ったの、一度も聞いたことがないわ。」
「あー、それでエレナはハルトが嫌いなのにゃ。」
「いや、嫌いとかじゃないけど・・・人として駄目じゃない?それに商人のコスタスさんが娘さんの怪我の薬の材料を仕入れて西から戻ってくる時にモンスターに襲われたんだって。それを助けた若者がハルトさんっぽいのよね。本人には聞いてないんだけど。」
「それだけ聞けば美談にゃ。」
「でね、モンスターは倒してくれたけど、散らばった荷物を拾ってくれたり、街まで護衛がてら同行してくれたりせずに、そのままそっけなく行っちゃったって。馬が戻ってきたからコスタスさんは薬の材料を持って戻ってこれたみたいだけどね。」
「なかなかに薄情にゃ。パーティは組んでにゃいんだにゃ。」
「あの態度じゃねぇ・・・。あとなんて言うか女の子のことばっかり聞いてくるから、ちょっと・・・。」
「にゃはははは!欲望に忠実だにゃあ!」
「笑い事じゃないでしょ!」
「ごめんごめんにゃ。でも態度はデカいのにコミュニケーション下手でパーティも組めてないにゃんて、案外自信がないタイプかもにゃ。」
「ふむ、そんな風に考えたことは無かったわね。肯定的に見ればそうなのかな?」
「まぁ良いにゃ。少し様子を見てみるにゃ。そうそう面白い噂を仕入れてきたにゃ。」
話変わってといったかたちで、ミーアは王都でなじみの貴族から聞いた神託のことをエレナに話す。
「え!そんな情報、組合にもまだ入っていないわよ!」
「ミーアさまの情報網をなめちゃダメにゃ。まぁ数日もしたら組合にも情報が入ると思うにゃ。国もお触れを出さない訳にはいかないにゃ。」
「まぁそうでしょうけど・・・えっ?まさかあなた・・・」
ミーアはニヒヒといたずらっぽい笑みを浮かべるだけだった。
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
「お兄さん。ぼーっとしちゃってどうしたにゃ?」
ミーアは噴水に腰かけてぼーっとパンを齧っているハルトに声をかける。
「え?あ?オレ?」
「ふふ・・・ここにはお兄さんしかいないにゃ。」
「あ、ああ。あ。うん・・・。あれ?商隊と一緒にいた・・・」
(なんかあからさまに落ち込んでるにゃ。ソロだとそろそろキツくなってくる頃だしにゃあ。)
話をしてみるとハルトはそれほど傍若無人という感じは受けなかった。それどころか瞳を見ているとなぜだがハルトが可愛い弟のような感覚を受けた。それに女性慣れしていないのか、ミーアと話すハルトは落ち着かない様子である。隣に座って近づいてみれば、これ見よがしに慌てふためいている。
(それにしても警戒心がない子だにゃ。王都に行ったらちょっと危ないにゃ。それにしてもハルトは臭くないにゃ。傭兵とは思えないほど清潔にしているにゃ?)
傭兵は相応にしてあまり清潔でない者が多い。というよりこの時代では風呂は高級品であり、よほど高い位の者でない限り、毎日洗濯したり風呂に入るような物はいない。ミーアは交渉を行うことも多いため、可能な限り清潔にしており、狩りに行く時以外は不快にならない程度の香水をつけている。
傭兵にしては珍しい清潔感があるハルトにミーアは少しだけ好感を持った。
その後、予定通り一緒に狩りをする約束を取り付けたミーアは、エレナにしばらくハルトとパーティを組むことを報告した。
◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
まずは腕試しと一緒にゴブリンを狩ってみてミーアは驚いた。草むらに石を投げて意識を逸らせたとは言え、一瞬でゴブリン1体を葬り、さらに2体目も一太刀で行動不能にした。ミーアのことに気を配り3体目にも目を向けたほどだ。
(あの剣、切れすぎなのにゃ。いや腕が良いのかにゃ?剣を詳しく見ないと判断できないけど、新人の傭兵でここまで出来る子なんて見たことないにゃ。)
その後も獣層でオロスやアルミラージを狩るが、ハルトはミーアが隙を作るだけで、全てのモンスターを一撃で斬り伏せてしまう。
休憩ついでに剣を見せてもらうが、手入れが行き届いているのか刃こぼれや傷はなく、特に目立った装飾もない普通の剣だった。しいて言えば、モンスターを斬っても刀身にゆがみも全くないことから、少し丈夫な金属が含まれているかもしれない程度。
「よく手入れされているけど、普通の両手剣なのにゃ。ちょっとだけ丈夫な金属っぽいけど、あれだけ鋭くモンスターを斬れるのはハルトの腕前にゃんだね。」
ミーアは素直に思ったことを伝え剣を返す。嬉しそうなハルトの姿を見て、チョロイにゃあとほくそ笑むのだった。
その後もハーピー狩りを試したりしながらハルトのことを観察したミーアだったが、ハルトといれば、そこそこお金を稼げると確信していった。そして王都へ共に行こうと誘う。ハルトが勇者だとは思っていたわけでないが、王族の前で実力を示すだけでもかなり人生に優位に働く。ハルトは女性慣れしていない様子なので、その後もミーアを頼りにするはず。そうすれはミーアも王家とのつながりなどの恩恵にあずかれる可能性がある。
ミーアは想像以上にうまくことが進むのを感じ、大好きなお金がたくさん得られる未来を予感し嬉しくなった。それに説明はできないが、ハルトの瞳を見ていると何故だが彼に不快な印象を持たなくなる。ミーアは不可思議な感触を未来のお金の陰に隠し、ニヒヒと笑うのだった。
ぜひともブックマーク・★評価・いいね・感想をお願いします!励みになりますm(_ _)m




